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ライト級の活躍 第3のリベロ Vol.27

中学で止まってしまった身長は20代前半まで173センチあったのが、四苦八苦の社会人生活で委縮したせいか、昨年の計測では171センチになっていた。対照的に伸び続けたのが腹囲で、体重は一時70キロに迫ったものの、健康診断のたび産業医さんからお呼び出しを受けた結果、最近は64キロ前後で落ち着いている。若かりし頃はいまより食べていたのに50キロ代前半のフライ級だったのだから、ライト級まで3階級もアップすることなく、このままフェザー級にとどまりたい。社会人になってから積み重ねたものが年齢と内臓脂肪しか思い当たらない私は、体重を考えるときいつもUFCの階級に当てはめてきた。

ミドル級王者レオン・エドワーズが凱旋、ロンドンで開催されたUFC286の放送は日本時間の今朝早く。直前にはマンチェスター・シティとバーンリーによるFA杯準々決勝やラグビー・シックスネーションズの最終節もあり、今月2回目の放送に気を良くしていたが、冒頭で木村文乃の再婚発表に続くショックに見舞われてしまった。「本日の放送・配信をもって番組を終了させていただきます」ー卒業や改編の季節とはいえ、2018年の再開以来、ずっとWowowのマイリストに登録し続けてきたコンテンツと唐突にお別れすることになるとは。PRIDEの消滅以後、下がる一方だったMMAへの関心を回復させてくれた数年間。もっとも印象に残ったのは、この日もセミメインで判定勝ちを収めたジャスティン・ゲイジーをはじめ、無敗の王者のまま引退したハビブ・ヌルマゴメドフ、元2階級同時王者コナー・マクレガーに連勝したダスティン・ポワリエ、ベラトールから参入したマイケル・チャンドラーなど、多彩なファイターにより好勝負が繰り広げられたライト級戦線だった。

トップリーグ時代から数え、日本最高峰のラグビーリーグで3度のベストフィフティーンを受賞しているその人の体重は、90kgあまり。UFCではライトヘビー級に相当しても、ラグビー界でもとりわけ体格に優れた南アフリカ代表・スプリングボクスのバックローとしては、ライト級の部類だ。撫で肩の体型は日本人プレイヤーと並んでも華奢な印象を与えるが、ブレイクダウンの局面で腕を伸ばせば幾度もジャッカルに成功し、ボールをキャリーすれば次々とタックルをねじ伏せてインゴールまで運んで見せる。意表を突いたクイックリスタート、複数名の相手の懐に突き刺さるような前傾姿勢で決めた横浜キャノンイーグルス戦のトライなどは真骨頂。静岡ブルーレヴズのクワッガ・スミスのプレーは、リーグワンの宝だ。

スミスが静岡所属なら、こちらは静岡生まれ。照ノ富士に続き、綱取りを懸けた貴景勝まで途中休場。昭和以降で初めて横綱も大関もいなくなった春場所の幕内で唯一の全勝、中日で勝ち越しを決めたのが翠富士だ。117キロはUFCならヘビー級、ラグビーでもフロントローに適した体格だが、平均体重が160キロに迫る特異な世界では、まぎれもなくライト級だ。巨漢の碧山と対戦した今日の一番は、突き押しをいなし、左の上手を引くと頭をつけて一呼吸、相手に身を起こされそうになるや態勢を入れ替えて寄り切った。左へ右へめまぐるしく動き、軽快な足の運びは小学生のころに見ていた”お兄ちゃん”こと三代目若乃花を彷彿とさせるが、私と同じ171センチなのだから、さらに小兵だ。「小よく大を制す」を体現するライト級アスリートたち。その活躍で、UFCロスを癒してほしい。


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