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MNMが来た夏 Footballがライフワーク Vol.20

フットボールフリークにとって、8月の愉しみはヨーロッパで新たなシーズンが幕を開けることだ。開幕に先駆け、昨シーズンのリーグ戦とカップ戦の王者同士が対戦するのは各国共通の慣わしで、イングランドのコミュニティシールドはリバプール、ドイツのスーパーカップはバイエルンが制した。前者は今季もシティとの高次元の優勝争いを予感させ、後者は激しい点の取り合い。ともに開幕前としては上々のゲームだったが、DAZNでは肝心のプレミアリーグが視聴できなくなった。

代わってプレミアリーグを放送するのは、カタールワールドカップの全試合放送権も獲得したAbemaTV。3節に予定されるユナイテッド対リバプールなど一部のカードは有料だが、多くのカードを無料で視聴できるようになった。この変化は前進なのか否か、ネット方面に疎い私には測りかねるが、毎年のように放送権の動向に注意せねばならない時代になったようだ。かつてはヨーロッパのトップシーンを網羅的に放送してくれたスカパーも、かろうじてブンデスリーガの放送権を守るのみとなり、視聴可能なメディアが流動的で分散化している現在の傾向には、地に足がつかないような印象を抱いてしまう。

このオフシーズンは、パリSGが日本でツアーを敢行した。主力の何人かは地上波のスポーツ系バラエティ番組にも出演し、同時期にE1選手権を戦った日本代表の観客数との残酷なまでの格差が話題となった。Jリーグ勢のみで構成された日本代表の公式戦より、ビッグクラブの親善試合が選ばれるのが、商品としてのフットボールの実態なのだろう。DAZNが放送権を獲得したのはそのパリSGを擁するリーグ・アンだが、単体で集める観客ならいまや最上級のスター軍団を観られるとはいえ、リーグ全体の質では放送権を手放したプレミアリーグには遠く及ばない。

MNMが来日してくれたら、ワールドカップともなれば。娯楽の多様化が言われる時代、フットボールといえば楕円球のほうを連想する人びとでも飛びつくほどのキラーコンテンツはごく限られるが、今年は一つが実現し、もう一つが3ヶ月後に控える。当分の間、DAZNにAbemaTVにWowowと、時々の注目に応じてめまぐるしくポジションチェンジを繰り返す日々が続きそうだ。明るく前向きな話題、パリのプロモーション活動に参加した人びとにも届くほどのそれを、一つでも多く目撃できることを願う。

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