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30年の11人 第3のリベロ Vol.29

特別な月にちなんで、自らに課した禁を解くことにした。趣味を超越した存在について書くのは別マガジン「Footballはライフワーク」に譲り、この「第3のリベロ」には、一部の記述にとどめよう。そんな私的なルールから、今月くらいは自由でありたい。Jリーグの30周年は、私がフットボールに魅せられた30周年でもあるのだから。

先般、5月15日の生誕記念日にJリーグが発表した「明治安田J30ベストアウォーズ」のベストイレブン。公式サイトによるファン・サポーターの投票をもとに決定したメンバーには、いささかの違和感を覚えた。DFが5人も並んでいるのに、サイドバックは内田篤人だけ。突然の死を遂げた松田直樹を追悼する気持ちは分かるし、非現実の世界に現実性を求めるのが的外れかもしれないが、ベストイレブンとは単なる表彰ではなく、ある程度は実際のゲームを想定した陣容であってほしい。さらには、外国籍選手が皆無。ジーコやアンドレス・イニエスタをはじめ、いまも昔も多彩な顔ぶれが数々の名場面でリーグを盛り上げてくれたというのに、一人として選ばれないなどこのグローバルなスポーツには相応しくない。そんな不満も相まって、この場を借りて自選のベストイレブンを発表させてもらうことにした。

しかしながら、30年の観戦歴から11人を選び抜くには、何かしらの工夫が要る。そこで、三通りのベストイレブンを考案して最後に組み合わせる方法を採ってみた。一つは、最高栄誉たる年間MVPの受賞歴やベストイレブン選出回数に基づく「実績ベスト」。一つは、世界中から集まり各クラブの助っ人として活躍してくれた「外国人ベスト」。もう一つは、実力のみならず私的な好感度を重視した「マイベスト」。これらを総合した結果が、下記のとおりとなった。

GK:楢崎正剛(実績ベスト枠)
DF:田中マルクス闘莉王(実績ベスト枠)
   井原正巳(マイベスト枠)
      ギド・ブッフバルト(外国人ベスト枠)
MF:遠藤保仁(実績ベスト枠)
       小笠原満男(実績ベスト枠)
       小野伸二(マイベスト枠)
       中村俊輔(実績ベスト枠)
      ドラガン・ストイコビッチ(外国人ベスト枠)
FW:エメルソン(外国人ベスト枠)
       三浦知良(実績ベスト枠)

内訳は、「実績」が最多の6人。Jリーグのベストイレブンであるからには、日本代表や海外での実績よりJリーグでの活躍を優先した。ベストイレブン選出回数が歴代最多(12回)の遠藤保仁と、第2位(9回)の田中マルクス闘莉王は順当に選出。GKでただ一人MVPを受賞した楢崎正剛は、前所属クラブとして「横浜フリューゲルス」の名前を残すため名古屋に所属し続けた逸話も胸を打つ。欧州でも足跡を残した中村俊輔は、唯一MVPを2回受賞した功績を重視した。中盤で二者択一を迫られたのが小笠原満男と中村憲剛だったが、最多の年間優勝8回と唯一の3連覇を果たした鹿島の選手は外せないと考え、その主軸であり続けた前者を選んだ。

「外国人」は開幕当初の規定に則り3人までとし、後に監督としても成功したギド・ブッフバルトとドラガン・ストイコビッチに加え、2000年代前半に札幌と浦和で個人タイトルを総なめにしたエメルソンを選出した。「マイベスト」は2人にとどめたが、井原正巳と小野伸二は、個人的にそれぞれのポジションで最高の日本人だったと思っている。

錚々たる顔ぶれのなかからMVPを選ぶなら、やはり三浦知良だろう。誕生から30年が経過したいまでもJリーグを古く感じないのは、創設時の栄光を象徴するキング・カズが、ずっと現役であり続けているからに違いない。

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