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相模原の居酒屋で久々に絶句した話

今日は私の33回目の誕生日なんですが、こんなnoteを書くことになるとは・・・

まずはタイトルだけで「わかるー!!」」となってしまったこちらの記事。

66歳である筆者の父親が妻に先立たれ失意の底にあったが、だんだんと元気を取り戻し次の相手を探そうとしていることを次のように書いている。

彼が理想の相手として妄想するのは、もっぱら若い女である。少なくとも父より20歳年下の40代、できれば30歳くらいの女で、曰く「さすがに50代は抱けない」

本当に男性は(全員ではないが多い)自分の加齢をいとも簡単に棚上げして、そのくせ女の年にはものすごく敏感なのはどういうつもりなのだろうか。

という出来事が私にもつい3日前に起きたので書いている。

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新潟から出て最初に一人暮らしをしたのが神奈川県相模原市だった。
当時青学のキャンパスが横浜線の淵野辺駅にあり、私はキャンパスから徒歩10分くらいの場所に住んでいた。
3日前のその日は同じく青学に通っていた友達と神奈川方面に遊びに行っていたので、ついでに淵野辺まで足を伸ばしてみたのだ。卒業してから全く用事がなかったのでおよそ10年以上ぶりである。

私たちがそれぞれ住んでいた場所を訪ね、懐かしさと街の若干の変化に興奮しつつさらに電車に乗って私が当時バイトをしていた居酒屋を見てみることにした。2年弱の間何度も通っていたので迷うことなく場所にたどりついた。

店の看板は変わっていたが、外から覗くと何と、当時の店長が働いていた。時が止まったのかと少しゾッとする思いがした。店長に対して特別な思い入れは何もなかったが他にも状況を知りたい人がいたので店に立ち寄ることにした。店には2組の客がいる程度に落ちいていたので店長に挨拶するべく入り口からまっすぐ厨房の前まで進んだ。

「こんばんは」

と笑顔と作り込んで挨拶しても「え、誰?」といかにも目が悪い人がするしかめ面というか、目を細めてこちらを見てきた。正直言うと接客業でするような表情じゃない。

「おお!びっくりした!OOちゃんか」

もう私をそう呼ぶ人などもう周りにいない分少しだけ新鮮に聞こえた。カウンターに通され上着を脱ぎながら椅子に座る間もなく店長は私に言った。

「OOちゃんもすっかり普通のおばさんになっちゃったね」

え?当時から変わらず腹も出ていて、顔もパンパン、白髪ボーボーでボサボサのお前が言うの?という言葉の代わりに眼を見開いて固まってしまった。そして隣で座ろうとしている親友の顔を見る。

「え?  何て言ったの?」
「普通のおばさんになったねって」
「は?店出る?」

出てもよかったが、もう一生会わないし、そもそも店長よりも近況を知りたい人の情報は何も聞けていない。

「普通のおばさんってさ、ここ来る時に沢山見たような、自分の見た目に一切気を使わなくなった女の人のことを言うんじゃなくて?」

親友が怒りを通り越して落胆しながら私に言った。代わりに私は鉄のような笑顔を顔に張り付けた。その後は若いバイトの女の子が手際よく接客してくれた。

「この子ね、18歳なんだよ」

また店長が口を挟んでくる。まぁ、私がここでバイトを始めたのも19歳だったからそれくらいだろう。で、だから何なんだ?

「いやぁでも、OOちゃん変わらないね」

私たちの雰囲気に気づいたのかとってつけたように言ってきた。

「今いくつだっけ?」
「32です」

仕方ないから興味もないが私も聞くことにした。

「店長はいくつになったんでしたっけ?」
「俺は別にいいんだよ」

なんだよ、それ。人のことおばさん呼ばわりしてそれは。興味もないのでそれ以上突っ込まないでいたら「47だよ、もう。初老だよ」と吐き捨てるように言った。「でも俺とOOちゃん15しか変わらないのか」と何か希望を見出している店長に絶句していると隣に座る親友が「ホント、歳の話ばっかりだな」とつぶやいた。

OOちゃんは大学生の頃ここでバイトをしていたんだよ、とバイトの女の子に言うと「えーそうなんですね、美人さんですね」とお世辞まで言ってくれてありがたいと思っていたらまた店長が「え?美人?これが?」と水を差した。

もう何か、何もかもかわいそうだった。実はもう一人厨房に当時から働く男の店員がいたが、太りすぎていてしばらくの間気付くことができなかった。店長は別にそこまで変わらないが若々しいという意味ではなく当時から太ったオッサンであっただけだ。

「俺は死ぬまで相模原にいると思うよ」
そうだろうよ。そして私たち二人はもう二度と来ない。

「相模原でこれか。もっと田舎のオッサンならともかく」

下を見ながら親友は言う。お通しと1杯ずつ飲んで、店を出た。1,440円。安い。安いけど、無駄な金を払ってしまった。欲しかった情報も半分くらいしか得られなかった。

店を出ると怒りにエンジンがかかり2人で声を荒げた。
「そもそもあの18歳のバイトの子だってすごい老け顔じゃなかった!?」
と親友も怒りが収まらないようだ。
「あの子に罪はないよ。でもそういうことはともかく、とにかく若いということに価値があると思っているんだろうね」

普段は既婚だろうが未婚だろうがいくつになっても素敵な男性が周りには多くて、こういう感覚は実家に帰った時に味わうものだと油断していた。
しかも矛先は未婚のアラサー女だけだと思っていたのに、今回は結婚しているどうかも聞かれなった。

誓おう。結婚しても子供ができてもこういうオッサンは絶対に許さないことを。でも今回は、怒る気にもなれなかった。

では、またね。

※ 相模原という場所には何も恨みはない。

お読み頂きありがとうございます。最近またポツポツとnoteを上げています。みなさまのサポートが私のモチベーションとなり、コーヒー代になり、またnoteが増えるかもしれません。