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母では埋められない、つぶらな悲しみ。

アンちゃんは、嫌なことがあったら、悲しくなっちゃうタイプだからかわいそう…私ならすぐムカついて、言い返しちゃうよ。

中学生の時に、友達からそう言われて気付いた。

受けたダメージを、その人に多少なりとも投げ返すことが苦手で、自分の内側に原因を探してしまう。それすらでままならず、とにかく、えーん悲しいよぉ、と心を下に下に追いやってしまう時もある。

先日、菜の花(長女9歳)の小学校の夏祭りにいった。
菜の花は友達と回る約束をしていたので、私はスズメ(次女4歳)を連れて、かき氷だのあてものだの、楽しんでいた。

でも、いつまでたっても、待ち合わせ場所でまつ菜の花の元へ、その友達が来ないのだ。

これから始まる楽しい夜店回りに心を踊らせながら、その大きな瞳が見つめるのはただ一点。正門の入り口。

もう、30分は経っている。
履きなれない下駄を踏み続ける足の裏の感覚が妙に自分の足にも伝わってきた。

たまりかねて、

あてものしに行こう。またすぐに戻ればいいよ。

こう諭したが、答えはNO。

友達と一緒に並びたいから。という理由だった。

じゃあ、かき氷、行こう?

そう提案して、一旦その場から離れた。
すると、その友達がようやく姿を見せた。しかし、菜の花の元へ駆け寄ってくるでもなく、叔母さん風の女の人とともに、手を振りながら行ってしまったのだ。

あれ?約束したじゃん、って言っておいでよ!

菜の花にそう声をかけ、視線を落とすと、その顔は歪み、最後に一粒の涙をこぼした。

もう、いいよ。

そう言って、背中を向けつつ歩くのを止めなかった。

これで二回目だった。相手は違う。どうして?なんで二年連続同じ目にあうの?

自分を見ているよう。とても心臓が苦しくなった。

私は動揺し、母親としては失格かもしれない方法で、菜の花の心を慰めようとした。

約束を破るなんて、最低な子だね。もう、友達だなんて思わなくていいよ。

悔しくてたまらなかった。菜の花の、2度と来ない9歳の夏祭りの記憶に、こんな悲しいことを刻まなければならないなんて。

と同時に、間違いなく私の娘だなぁ、受け継いでほしくない、内気な性格そのまんまだなぁ、と思い知らされた。

それ以降、菜の花は自分からその話題に触れることはなかった。逆に私が

もしかしたら、断れなかったのかもよ?
だの、
忘れてしまってたのかも。

なんて、しつこくぶり返すばかり。

菜の花よ。どうしたらあなたの心の傷を治せる?母はそればかり探求してしまう。あなたは私の娘。だからどんなに悲しかったかだってわかる。きっと大人になっても覚えてる出来事だって、わかる。

この先、こんな出来事忘れるくらい、友達との素敵な関係を築いてくれますように。

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