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Jが死んだ日

飼い猫のJが死にました。

夜中の3時半頃。

私は妹に起こされて、Jを寝かしている部屋に行きました。
妹が「もうダメかも」というのです。
起きた直後でよく分からない気持ちで部屋まで行くと、Jの、それまでほとんど閉じられていた目が今まで見たことがないくらいに大きく開き、横たわっていました。
Jはもともとあまりまん丸な目の猫ではなかったので、Jの目ってこんなに開くのだな、と奇妙な感じがしました。知らない猫みたいなのです。
大きく開いているのに、何も映していないようでした。瞳孔は丸く大きくて、こんな場面でもなければ、皆が思う理想の、可愛い猫の目でした。
何も映していない以外は。

そうして、一際目を大きく見開いて動かなくなり、そのまま死にました。
猫の死に立ち会ったことのない私たちは、本当に死んだのか分からず、脈を確かめました。動いていませんでした。

Jは死んだようです。

と思ったら目が開き、口を3回くらい動かしました。まだ生きているんだ、そう思ったけど、それきり目を閉じて、二度と開くことはありませんでした。

そうこうしているうちに死後硬直が始まり、柔らかな毛に硬い体で眠る、上等な置物のようになってしまいました。猫の死体を触ったのは初めてでした。

私はなんとなくぬいぐるみのことと、キョンシーのことを考えました(キョンシーが手を前に突き出してジャンプするのは、死後硬直で関節が曲がらないから)。

「ついさっき激しく暴れていたけど、お姉ちゃんとお父さんが来たら大人しくなった。安心したのかなぁ」と妹は言いました。



夜が明けて、かかりつけの病院に行きました。
『エンジェルケア』という、死体のケアをしてもらいました。
綺麗なブルーの箱に入れられて帰ってきました。
もともとそこまで酷い遺体ではなかったけど、帰ってきたJは柔らかくて、眠っているように綺麗で可愛かったです。

家に着いて、庭でピンクと薄紫の花を少し切り、箱に入れました。チュールと保冷剤も入れました。

Jがチュールを食べているので、私たちもお昼ご飯にしました。

生と死の境目はどこだったんだろうかと思います。
病気だった肉体を脱出して、今は案外楽しくやってるかもしれないとも思います。

人懐っこかったので、忙しい家の飼い猫でいるより向こうの世界のほうが他の犬や猫と遊べて楽しいかもしれません。

私はJが肉体の呪縛から解放されて、どこか暖かいところで新しい友達に後ろから飛びついているところを思い浮かべます。

そこはもう、シリンジも、腎臓病のご飯も関係ない世界です。

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