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Riz Ahmed-Where You From 歌詞・和訳

1.アルバム・ショートフィルムについて

リズ・アーメッドはパキスタン系イギリス人の俳優・ラッパー。代表作に「ゴールデン・リバー」「スター・ウォーズ」など。「ザ・ナイト・オブ」で南アジア系・ムスリムの男性として初めてエミー賞を獲得しました。ラッパーとしては今までRiz MCの名義と三人組のグループSwet shop Boysで活動していましたが今回がRiz Ahmed名義での初めてのアルバム発表です。


2020年3/6発表のアルバム「The Long Goodbye」ではアルバム全体でイギリスを「ブリタニー」という女性に喩え、複雑で有害な関係からの別れを物語る構成になっています。アートワークはモロッコのアンディ・ウォーホルともいわれるアーティスト、ハサン・ハッジャージュが担当。Netflix「Top Boy」「恋愛後遺症」のAneil Karia監督による同名のショートフィルムも公開しました。

Where You FromはショートフィルムThe Long Goodbye最後のラップです。

テレビ番組で披露したバージョン

**2.Where You From 歌詞和訳 **

3/8誤訳修正 テスト・クリケット✖️→クリケット・テスト◎ 栢木清吾さんご指摘・丁寧な解説ありがとうございました。
They ever ask you where from?
You know - like where you really from
The question seems simple
but the answer’s kinda long
I could tell ‘em Wembley
But I don’t think that’s what they want
& I don’t wanna tell em more
Cos anything i say is wrong
奴らは君にいつも聞く 出身はどこ?
ほら、”本当の”出身はどこ
その質問は簡単に見える
でも答えはちょっと長い
奴らにウェンブリー*1出身だと答えることもできる
でもそれが奴らが欲しい答えだとは思わない
それにそれ以上教えたくない
俺の言うこと全ては間違いだから

Britain’s where I’m born
And I love a cuppa tea & that
But tea ain’t from Britain it’s from where my DNA is at
And where my genes are from
That’s where they make my jeans and that
Then send them over to NYC where I stack my ps and that
イギリスは俺が生まれたところ
そして俺は紅茶とあれが大好き
でも紅茶はイギリス産じゃない、俺のDNAがあり俺の遺伝子が来たところから来た
それから俺が金を貯めてるニューヨークに送った

Skinheads meant I never really liked the British flag
& I just got the shits when I went back to pak
My ancestors Indian but India was not for us
But my people built the West - we even gave the skinheads swastikas
スキンヘッドたち*2は俺はイギリス国旗を好いたことがないと言ってたな
そんでパキスタンに帰ったらクソみたいなことをされる
俺の先祖はインド人だった*3 でもインドは俺たちのためのものじゃなかった
でも俺の仲間たちが西洋を作った*4 俺たちはスキンヘッドたちにすら卍を与えた*5

Now everybody everywhere want their country back
If you want me back to where I’m from I need a map
Or if everyone just gets their stuff back that’s bless for us
You only made a piece of this place, leave the rest for us
今じゃ誰も彼もどこでも自分の国を取り戻したがってる
お前が俺の出身地に帰って欲しいなら地図がいるな
それか誰もが自分のものを取り戻すだけなら俺たちにとっては祝福だぜ
お前が作ったのはこの場所の一部だけ 残りは俺たちに任せな

maybe I’m from everywhere or nowhere
No man’s land, between trenches, no one goes there
But it’s Fertilised by the brown bodies who fought for Britain in the wars
So when I spit A poppy grows there
多分俺はあらゆるところの出身でどこの出身でもないんだろうな
無人地帯*6、塹壕の間、誰もそこには行かない
でもイギリスのために戦争で戦った茶色い体*7から受精された
だから俺はポピー*8が育つところに唾を吐く

I make my own space
In this business or Britishness
Your questions just limiting
It’s based on appearances
俺が自分の居場所を作る
このビジネスかイギリス人らしさの中で
お前の質問は限定的なんだよ
容姿に基づいてしてるだけだろ
Stop trying find a box for us
I’ll make my own and break
your whole poxy concept of us
俺たちを入れる箱を見つけようとするんじゃねえよ
俺が自分のものを作る
そんで俺たちに対するお前のつまんねえ観念を破る

Very few fit these labels
So I’m repping for the rest of us
Who know that there’s no place
like home and that stretches us
We code switch so don’t piss me off
With cricket tests for us
Or question us
about our loyalties
Our blood and sweats enough
このラベルに合うものなんかほとんどない
だからおれが俺たちをレペゼンしてる
「我が家に勝る場所なし」と言う言葉が俺たちを引っ張っていると誰が知っている 
俺たちはコード・スイッチング*9するんだから俺を苛つかせんなよ クリケット・テスト*10とか忠誠心に関する質問でな
俺たちの血と汗は十分足りてる

born under a sun
That you made too hot for us
Kidnapped by empire
And diaspora fostered us
太陽の下に生まれた お前が俺たちには暑すぎるようにしやがったヤツさ*11
帝国に誘拐されディアスポラに養育された
Raised by garage
And halal southern fried chicken shops
A junglist a jungli and I’m
mowgli from the jungle books
ガラージ音楽で育った*12 南のハラールフライドチキン屋*13
ジャングリスト*14 ジャングルの人間 俺はジャングルブックのモウグリ*15

I’m John Barnes in the box
I blaze hard after mosque
I bend words like Brown or West
Until they just spell what
俺は箱の中のジョン・バーンズ*16
モスクの後はバリバリ働く*17
ブラウンかウェスト*18みたいに言葉を曲げて
奴らが何かを綴るまで

My tribe is a quest
to a land that was lost to us
And it's name is dignity
So where I’m from is not your problem bruv

俺の部族とは失われた土地への探究
そしてその部族の名は「尊厳」だ

だから俺がどこから来たかはお前には関係ないんだよ、兄弟

3.注釈

*1ウェンブリー リズ・アーメッドの生まれたロンドン郊外北西にある町。サッカーイングランド代表の本拠地 大規模のスタジアム・アリーナがある。
*2スキンヘッドたち
1960年代ロンドンの労働者階級の若者の間で生まれた文化。丸坊主とドクターマーチンのブーツなどの服装に代表される。80年代以降過激な人種差別を支持する暴力的な要素に汚染された。ネオナチ、ファシストの象徴として見なされるようになった。一方、反差別の活動をするスキンヘッドのグループもある。
「よい移民」収録のリズ・アーメッドのエッセイ「空港とオーディション」では80年代子供だったリズ・アーメッドの兄と彼が家の近所で一人のスキンヘッドに呼び止められ彼の兄の喉元にナイフが突きつけられたという一文がある。
*3俺の先祖はインド人だった
1858年から1945年に渡る英領インドの統治が終わり、数ヶ月の膠着の末その土地はムスリムが多数派を占めるパキスタン、ヒンドゥー教徒が多数を占めるインドに分割された。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40946891
*4俺の仲間たちが西洋を作った
植民地から得た富でヨーロッパは発展したという事
*5俺たちはスキンヘッドたちにすら卍を与えた
卍の図案は古代よりヒンドゥー教や仏教、西洋でも幸運の印とされてきたが20世紀以降ドイツで民族運動のシンボルとされ20年にナチスが党のシンボル、35年のドイツ国旗に採用した影響によりナチズムやネオナチのシンボルとみなされる事が多い。

*6無人地帯
どの勢力からも占有されていない土地のこと。第一次世界大戦後は敵味方両軍が対峙して膠着状態にある塹壕の間をいうようになった。
*7イギリスのために戦った茶色い体
第一次・第二次世界大戦で大英帝国のために戦った当時のインド(他カリブ海地域・アフリカなど)の植民地の兵士たちのこと
*8ポピー
イギリスでは第一次世界大戦の戦没者を追悼し10月の最終週から終戦記念日の11/11まで紙で作られたポピー(ケシ)の花を胸元につける。
https://eikokugo.com/イギリス人とポピーの関係.html
*9コード・スイッチング
言語または話し方を切り替える事
*10クリケット・テスト
保守党議員のノーマン・テビットが1990年にラジオで、インド・パキスタン系の移民が増えてきたことに関して述べた以下の発言に由来する言葉。
「英国のアジア系住民の多くはクリケット・テストに合格しないだろう。彼らはどちらのサイドを応援するのか? 興味深いテストだ。君たちはまだ、何処から来たか(where you came from)を思い出しているのか?それとも、何処にいるか(where you are)、か?」
クリケットの国際試合でどこのチームを応援しているかを調べてみれば、移民(とその子孫たち)が、英国と「祖国」のどちらに忠誠心を抱いているかがわかる、というもの。
この発言は当時物議を醸し以降「移民」がいつまでも母国とのつながりを大事にしていて、イギリス化していないと非難・揶揄する質問(人種差別発言)のことが、クリケット・テストと呼ばれるようになった。
*11俺たちには暑すぎるようにしやがった奴さ
先進国の温室効果ガス排出により進んだ地球温暖化
*12ガラージ音楽で育った リズ・アーメッドはSwet shop boysのAajaの歌詞でもUKガラージの曲に触れているので、ここではUKガラージを指すと思われる。UKガラージ=90年代前期のイギリスで生まれたエレクトロ・ミュージック。
通常、ハイハット/シンバル/スネアドラム/キックドラムを構成に含みシンコペーションを導入して演奏される、4分の4拍子のパーカッシブなリズムに特徴づけられる。UKガラージトラックのテンポは通常130BPM前後。著名なUKガラージアーティストにAajaでもメンションされたSo solid CrewとCraig Davidなど


*13南のハラールフライドチキン屋
ハラール食品=イスラーム法に則り、清浄な水(鉱物以外の匂い、味、色の無い)で7回洗浄しそのうち1回は土を混ぜて洗浄した豚肉を含まない食品
南のフライドチキン屋=サウスロンドンはフライドチキンやがたくさんある事で有名。
https://jhalal.com/halal
*14ジャングリスト
ロンドンで90年代にカリブ系移民二世により生み出されたとされる、サンプラーを多用しドラムのフレーズを倍速のピッチで再生しルースなベースが特徴のエレクトロレゲエに分類される音楽”ジャングルミュージック”を愛聴する人。ジャングルミュージックはのちのUKhiphopに影響を与えた。
https://youtu.be/prFk3bLlLMU
*15ジャングルブックのモウグリ インド生まれの白人イギリスの作家ラドヤード・キップリングの短編小説「ジャングル・ブック」の主人公モウグリはジャングルで狼の一家に育てられた人間の子供。
*16ジョン・バーンズ ジャマイカ生まれの元イングランド代表サッカー選手・サッカー評論家。80年代人気チームリバプールで活躍した。現役時代、苛烈な人種差別に晒された。2005年にイングランドサッカー殿堂に選ばれた伝説的な選手。MBEを授与され、ジャマイカ代表などの監督も務めた。
https://www.jinken-net.com/close-up/1609-1.html
*17I blaze hard バリバリ仕事するとマリファナに火をつけて吸う 2つの意味がある。
*18ブラウンかウェスト 
2つの推測 1.アメリカの有名なラッパー、ダニー・ブラウンかカニエ・ウェストのように発音を変化させて韻を踏むとということ?
2.Brown=トーマス・ブラウン(1605−1682)イギリスの著作家。科学的機能法を促進すると同時に聖書や古典、様々な秘教の著作も引用した。そのため彼の著作は現代において誤読されることが多い。West=エドワード・ウィリアム・ウェスト(1824−1905)イギリスのオリエンタリスト、ゾロアスター教文書の翻訳者 彼らのように本文とは間違った言葉を伝えるということ?

間違いやこれはこうじゃないかな?ということがあったらコメント欄で教えてください。

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