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いつだって軽く飛び立てる準備を

夫と毎年元日に駒沢公園横のスターバックスに行き、
一年の目標を各々立てている。
2020年の始まりは大きなお腹をかかえて、
真新しい手帳にいそいそといくつかの目標を書き込んだ。

書き込んでいる最中からもう気付いてた。
あれ、わたし、今年仕事でやりたいことが・・・そんなに・・・ない?


一昨年は「カレーを研究するための自分だけの場所をつくりたい」、
去年は「レシピ本を出版したい」、と、
大きな目標を鼻息荒く、筆圧強く、書いていた。


なのに、今年はひとつも心からわくわくするようなものが思い浮かばなかった。
あれれ、これでいいんだろうか?
突如わたしは不安になった。
出産という人生でも何度あるかわからないほどの大仕事があるのだから、
仕方ないだろうと、一度は目を背けたものの納得がいかない。
現状維持なんて言葉はわたしの辞書にないし、
いつだってどこかに向かって全速力で走っていたい。


りさちゃん(同い年のフリー編集者、and CURRYの本はこの人がいないと始まらない)にこの状況を打ち明けたところ、
彼女も似た状態であることを話してくれた。
だからこそ、この一年をインプットの年にして、
来年大きく羽ばたける準備をするのだと笑顔で意気揚々と語る彼女を見て、
そうだよね、そんな一年がないとだめだよね、
わたしは安心した。
今年はわたしも準備の一年にしよう。
最愛の娘をこの世に迎え、子育てをしながら自分も育ち、
どんなふうに仕事をしていくべきか、
見極める一年にしようと、そう思った。


そんなこんなでスタートを切った2020年は、
みなさんもご存知の通り100年に一度あるかないかのパンデミックで、
世の中は変化を余儀なくされたのである。



マスクを手放せず、オンラインでの打ち合わせが増え、
果たしてこれでいいんだろうかと思いながらお店を営業する日々。
補償も今後はないだろうと思った時、
自分の働き方を本気で見直した。
キッチンのキャパと仕込みの状況を考えると、これ以上ランチ営業を増やすことができない。
娘との時間を確保し、無駄をなくし、効率よく、
心地よく働いていくためにはどうすればいいのだろう。



考えた結果、夜の営業をやめ、モーニング営業をすることに決めた。
朝方にシフトし、and CURRYの想いを新しく体現するために。


目指したのはインドの朝食だ。
イドゥリと呼ばれる米粉の蒸しパンのようなものに、
サンバルという野菜のカレーが添えられる、
南インドで食べたあれがずっと頭の片隅にあったのだ。
軽くて、おいしくて、その日1日が元気になるようなそんな朝食。


さすがにイドゥリは難しく、
米粉のパンケーキを焼くことにした。
ふわふわでもちもち。そしてふんわりとココナツが香るように作った。
メインの野菜カレーはand CURRYの得意技。
新鮮な野菜の組み合わせのカレーはいくらだってつくれる。
グルテンフリー&ヴィーガンだけど、その事実を伝えたらみんな「え、まじー?」って言っちゃうような満足感を目指している。


モーニング営業を始めてから間もないが、
ご近所の人がよく来てくださる。
出勤前、おやすみの日のスタート、お子様を保育園に預けた後の一人時間に。
いろんな朝のシーンをご一緒できることが嬉しい。
来てくださった方がキッチンを出る時、
軽く飛び立っていけるような、そんな心持ちでいてくださることを祈って「行ってらっしゃい」と声をかけお見送りする。


自分が準備をしようと思った一年は、
不思議なことに、
誰かが1日の始まりを、軽く飛び立つ準備の朝を、つくることになった。


▲プレートのおともにはLIGHT UP COFFEEの川野さんに選んでもらった、コーヒーを。


いつだって軽く飛び立てる準備を。
and CURRYの朝ごはんにはそんな想いを込めた。



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kitchen and CURRY
モーニングは水曜・金曜の7:30~10:30です。
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