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合わせることができなかった料理達へ

日本酒のレベルを一段上げた作品
「みむろ杉 木桶菩提酛」

酒は嗜好品であるからこそ文化を内在する必要がある。醸造技術が進化して全体の平均値が高くなった今「美味しい」だけでは長く飲まれる理由には繋がらない。

奈良県桜井市三輪に位置する今西酒造から年4回リリースされている木桶菩提酛は東・西・南・北を冠した木桶毎に味わいの個性がある。

蔵の木桶

今西酒造が求める木桶菩提酛の個性とは、清い酒質の中に木桶&菩提酛由来の凝縮感、複雑さ、余韻の長さが存在すること。

一般的な癖の強い菩提酛とは一線を画す味わいに仕上がっている。

凝縮感&圧倒的クリア、太い旨味&軽快、低アルコール&複雑

素晴らしいワイン、コニャック、ウイスキー等、共通するのは対極にある味わいが同居している事、この木桶菩提酛にはそれがある

菩提酛は歴史があるお酒で、日本酒の母である。詳しくは上記リンクを

この木桶菩提酛、最初から文化を内在した液体であったがその価値を伝えるのがとても難しかった。用途がわからなかったからだ。

しかし様々な実験を繰り返した結果、今まで日本酒が合わせることが難しかった食材・料理に合うことが判明した。

全ての歯車はここで嚙み合った。

みむろ杉菩提酛に合う食材

食材

  • 鮪、生牡蠣、白子、蛤、山菜、赤酢、海苔、醤油(発酵系)、牛肉、バター、鶏肉、チーズ

ここに書いた食材はどれも通常の日本酒では成しえない素晴らしい相性だった。これこそペアリング・マリアージュと呼べるレベルの高相性

合わせた料理達

【マグロの炙り、塩】
脂がある方(赤身より中トロ、大トロ)がより同調する

【真鱈の白子、自家製ポン酢】
今回最も良い相性をみせた素材クリーミーな質感、濃厚なコクや滑らかなテクスチャー、白子はねっとり滑らかでコクのある味わい液体が白子の風味と混ざり合う。

【生牡蠣】
生牡蠣の持つ香りやミネラル感、クリーミーな味わいを際立たせる。
レモンは必要無く、菩提酛がソースとなり、余韻を伸ばす。

【はまぐり、野菜の天婦羅】
蛤のコハク酸に菩提酛の旨味が掛け算となりとんでもなく旨い。
また山菜の苦味へのアプローチも可能。ただ料理にある程度の「旨味」を求める性格なので、軽すぎる素材だと負ける。

【焼きハマグリ、塩】
木桶菩提酛と全く同じトーン、同郷?
白子に次いで素晴らしい相性
咀嚼時間も長く、まさに噛み締めて味わうにふさわしいペアリング
貝の旨味に深く共鳴する、まさに龍吟雲起 
繊細さと力強さを持つ木桶菩提酛だからこそ生み出せる強烈な相乗効果

【赤酢のシャリの手巻き寿司】
優しい赤酢だったので、まだまだ強く個性を出しても全然OK。強い赤酢のパワーにも負けない。様々食材を合わせた中、鮪が群を抜いて良い相性だった

【ウルグアイビーフのバター焼き】
菩提酛由来の乳酸の風味とバター、牛肉の旨味、咀嚼時間と液体の余韻の長さも◎肉料理へのアプローチも可能。

【クリ豚の酢豚】
豚肉が非常に柔らかく甘味のある肉質、この相性は並行だった。
味わいの要素が近すぎて互いに打ち消しあった。

【牛100%の肉団子甘酢がけ】
合わせる際に外側のソースの味ではなく、素材自体の旨さにフォーカスして内側に入って行くような組み合わせを狙うのが良い。今まで日本酒は肉料理に合わせようとすると、味わいの濃さ、強い酸、はたまた熟成感に頼らないといけなかった。それが木桶菩提酛で解決した。

【軍鶏、塩とタレ】
シャモのような筋肉質な鶏肉は、咀嚼時間が長く旨味が強い為、合わせる酒にも同じ長さを求める。

●タレ
塩の方がお互いの味わいの輪郭がはっきり見える。


【チーズ】
●カマンベール
問答無用に合う。チーズにはワインではなく日本酒の時代。
●ロックフォール(ブルーチーズ)
若い菩提酛も悪くないがやや負ける。これに対抗するには熟成した菩提酛を合わせたい。将来に期待。

各店のスペシャリテへ

今回の実験の結果、特に良かった組合せは、
鮪、白子、生牡蠣、蛤、牛肉、バター、鶏肉

鮨、日本料理で困った時は木桶菩提酛
様々な食材へのアプローチも可能、通しで使える液体の軽さもある。うに、鮪、白子、蛤と通常の日本酒だと合わせるのがちょっと難しい素材も難なくクリアする。サーヴィスとしても初めは冷やして、段々と温度を上げて握りの流れに合わせて行くのが良い。疲れずに通しで使えるアイテムはなかなか無いので汎用性のある液体。

●迷わず行けよ、肉料理
そやし水由来の風味が肉に負けないパワーを与えている。
肉には生酛、山廃、熟成、という風潮が強かったが、今からの時代はいかに食後感を軽やかに終わらせることができるかがキー。
今西酒造が手掛ける木桶菩提酛はその一つの答えだと思った。

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今西社長

酒屋は1本の酒に向き合い、味わいを紐解きながら料理との相性を追求し、世に問うていく仕事。

知識はあったほうが良いし、テイスティング能力も必要、だけど1番大切なのは「この酒を知ってほしい」という衝動。

俺はこの木桶菩提酛が日本酒の一つの頂点になると確信している。

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