傘をささない言い訳
鉛色の空から雫が落ち始める5月の昼下がり、
カラフルな、せわしなく動く水玉模様の波が街に溢れ出す。
その中で1人、雫と木々の奏でる音に耳をすませ、髪を濡らし、歩く私がいる。
「風邪ひくから傘をささないと」と人々は言う。
「こんなのは降ってる内に入らないよ」と私は応える。
「欧米人はこのくらいの雨は雨とみなさいのだよ」と少しアゴをあげてスカしても見せる。
でも全ては言い訳。
本当は雨に濡らされたいのだ。都会の塵やら排ガスやら、人々の鬱憤やら妬みやらを顔に浴びたいのだ。
それで今日も感じることができる。
「あー、やっぱり私もただのちっぽけな人間なんだ。だから自分らしい一歩を進もう」と。
雨が私の驕りを洗い流してくれた頃、太陽の温かみが新しい私を迎えてくれる。
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