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柔術家がレスリングを学ぶメリット

 今日も今日とて柔術は楽しい。今日も今日とて育児は大変で楽しい。

 今日はレスリングの話。


1.レスリングブーム

 MMA界隈、柔術界隈に空全のレスリングブームが来ていると思います。ここ1,2年でMMA選手向け、柔術家向けのレスリングのセミナーや教則動画が多くみられるようになりました。SNSでもレスリングの投稿を見かけることが増えました。柔術のトップ選手がレスリングにとりくんでいるという話もよく聞きます。

 レスリングプラットフォームの有元先生の指導やセミナー、教則動画、SNSやブログ等の発信、そして大会(all or nothing)の開催などの取り組みが実を結んでいるのだと思います。その他、オープンしたときからずっとレスリングのクラスを運営しているパラエストラ天満の赤尾代表やnow or neverの杉本代表をはじめとた各道場の代表の取り組みやサイトを運営しているBJJ LABの竹浦代表の影響も大きいと思います。

 自身もレスリングの教則を見て勉強しています。

 MMAでも柔術でもずっとその有効性が認められていて需要はあったが、学ぶ機会がなかっただけだったのでしょう。今までは、レスリング出身のMMA選手が道場でレスリングのテクニックを紹介するぐらいしかレスリングを学べなかったのが、各分野の方の取り組みのおかげで本物のレスリングを学べる機会が増えました。

2.レスリングはすげえんだ

 レスリングは世界最古の格闘技と言っても過言ではありません。歴史のある格闘技です。長年練られて進化し続けてきた取っ組み合いの技術は実戦的かつ芸術的です。

 自分の言語化が足りないのが悔しいですが、トップレスラーはバケモンです。本当に強い。マジでやばいんですよ。とにかくレスリングはすごい。身体能力もテクニックも根性もすごいんです。レスリング出身のMMA選手の強さがそれを証明していると思います。

 相手の背中(両肩)をマットにつけさせるフォール(抑え込み)は、格闘技の本質です。いかにフォールをするかを考え続けて進化してきたレスリングは格闘技として完成度が高いです。マジで強い。

3.柔術家にレスリングはいらないっしょ、という人

 MMA選手がレスリングを学ぶメリットは分かりやすいと思います。テイクダウンの技術はMMAの勝利に直結します。上を取ることは組技において重要です。下から攻める柔術家でも勝てる人はクレベルコイケ先生やホベルト・サトシ先生のようにテイクダウンがとれます。雑に引き込んだらやられるのが現代のMMAです。

 でも柔術家のなかにはこう考えている人もいるのではないでしょうか

「柔術には引き込みがあるからテイクダウンもテイクダウンディフェンスもしなくてもいいし、テイクダウンは取れて2ポイントだけ。そもそも背中をつけるガードから攻める柔術とレスリングは別物だよ、自分はタックルやらないしレスリングはいらないよ。そもそもレスリングの動きってフィジカルと瞬発力重視でしょ?俺には必要ないよ」

ここまでいう人はいなくとも、これに近い考えの人は多いのではないでしょうか。

 ブームが来たとはいえ、レスリングの教則を見たりセミナーに出ている人はまだまだ少数、本当にレスリングをやっている人はさらに少ないでしょう。やらない人の中には上記のような考えの人もいるかもしれません。本記事を読んでその考えが変わったら嬉しいです。

4.立ち技で最も大事なことは「テイクダウンすること」ではない

 これに関してはいろんな考えがありますが、立ち技で最も大事なことは「テイクダウンをとること」ではなく「テイクダウンされないこと」です。これはMMAでも柔術でも同様です。MMAは基本下になりたくないし、柔術では何よりも失点をしないことが大切です。

 →「だったらテイクダウンディフェンスだけでよくね?」

 やかましい!!!!ツイッターにはびこるイキった玄人ぶる格闘技オタクみたいなことを言うな!!!!正座ァ!!!!

 まず、テイクダウンに限らずディフェンスだけを学ぶのは非効率です。MMAでも「テイクダウンディフェンスと打撃さえあれば立ち技で勝てるので寝技はいらない」的な考えの人もいますが、実際にやってみるとそんなに甘くないです。柔術でも同様です。テイクダウンディフェンスだけを身に付けるのは難しいです。

 そして、立ち技勝負をせず引き込みしかしない人であってもテイクダウンの選択肢を持つことは有効です。相手に「コイツは引き込みしかない」と思われると相手は簡単に引き込みに合わせるテイクダウンを狙えます。テイクダウンのプレッシャーがあることで引き込みもしやすくなります。

5.レスリングはタックルだけではない

 柔術家やMMA選手がレスリングをやるのはタックルの技術を身に付けるため、そう思っていた時期が俺にもありました。

ボクシングには足技はあります。

 自身はレスリングプラットフォームの有元先生の教則をみてレスリングのテクニックを勉強しているのですが、実際に使っているのはタックルよりも組手争い、がぶり、タックル切りの技術です。これがとにかくめちゃくちゃ便利。
 テイクダウンディフェンスとガブリコントロール、ガブリからのバックテイク、ガブリ返しの技術は本当に使えます。フィジカルもそんなに必要ないです。体重を使えるので。

 レスラーはフィジカルモンスターでレスリングの動きは瞬発力とフィジカルありきのもの、というイメージがありましたがそんなことはありませんでした。むしろフィジカルで劣る人でも対抗できるような技術が数多くあります。(レスリングは力ではなくテクニックが大事という話ではありません。フィジカルもテクニックも両方大事)

 自身も、レスリングのテクニックを使って若いフィジカルの強い子のタックルやレッスルアップを切ってガブリコでントロールできました。

 「タックルガンガン入るレスリング的な動きは苦手だからオッサンの俺にはレスリングは要らないよ」という人でもレスリングはやってみてほしいです。

6.柔術も最後は足持って立つ

スイープは下からのテイクダウン

 レスリングはタックルだけじゃない、と前項で書きましたが、タックルもめちゃくちゃ有用です。
 「タックル的な動きはスタミナを消費するし得意じゃないからやらない」というタイプの柔術家も多いと思いますが、試合のラスト10秒でスイープしなければいけない場面では死ぬ気の「足持って立つ」が助けてくれます。そんなとき、レスリングのタックルの技術が助けてくれるかもしれません。

 これは多くの黒帯の先生が同じことをいっています。

「最後は足持って立つ」

 余談ですが、タックルのイメージとしてよくあるダブルレッグでズバッと入るカッコイイヤツよりも切られにくくて入りやすいシングルレッグの方が使う機会が多いと思います。打撃がない柔術だと構えが低いし打撃のカウンターで入ることもできないのでいきなりダブルレッグで取るのはかなり難しいと思います。もちろんダブルレッグもいい技でシングルレッグと組み合わせるとより有効です。

7.みんなやらない技術は価値が高い

 ブームがきたとはいえ、まだまだレスリング的な動きを得意としている柔術の人は少ないです。特にマスター世代やピュア柔術家(MMAをやらずに柔術だけやる人)は。

 でもだからこそレスリングです。初期のベリンボロが誰も対応を知らなかったのでバンバンかかったように、レスリングも同様に取り組み人が少ない内にやった方が他の人を出し抜けます。今後レスリングをやる柔術家が増えてきたら(望ましいことですが)、レスリングのテクニックの対応も普及してしまいます。早く取り組んだ方がお得です!

 みんなが(まだ)やってないからこそレスリングやりましょう!

8.まとめ

シンプルにレスリングは楽しい

 ここまで柔術家がレスリングをやる実利的なメリットを書いてきましたが、レスリングを学ぶ一番のいいところは楽しいことです。柔術にはない技術体型を知ることが単純に楽しいです。長い歴史の中で練られてきた組み技の技術は面白いです。食わず嫌いはもったいない。

 レスリングのルールや技術がわかるとレスリングの試合も楽しむことができます。柔術もレベルアップして楽しくなります。

 レスリングを全くやらない格闘技人生とやる格闘技人生なら後者を選んだ方が楽しいと思います。

 もしレスリングを学ぶ環境があれば一歩踏み出してみましょう。関西ならパラエストラ天満さんはレスリングクラスがありますし、有元先生のレスリングプラットフォームもあります。東京でもレスリングを学べる機会は増えてきていると思います。

 地方の人でもYouTubeや有元先生のレスリングプラットフォームやBJJ LABの教則動画でレスリングに触れることができます。偉そうに言ってる自分も実際にレスリングをやっているわけではなく、レスリングの教則や試合動画を見て打ち込みして柔術やグラップリングのスパーで試しているだけなのですがそれでも楽しいです。

やろうぜ、レスリング!

2024/3/20 アンディ

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