柔術は柔術として学べ
今日も今日とて柔術が楽しい。柔術をして心地よい疲労がたまった状態でゆっくり湯船につかると幸福感でいっぱいになります。夏でも風呂大事。
今日の投稿は、「他競技をやるときはその競技としてちゃんとやるべき」って話です。MMA選手が他競技をやる時のことをまとめてみました。
もちろん柔術家がレスリングや柔道をやるときの参考にもなると思います
1.他競技をやる目的 まず最初にすることは?
練習の目的や意味を考えることが大切です。では他競技をやる目的とはなんでしょうか?それは
その競技の技術を身に付ける
さらに言えば
その競技で”自分に足りない技術(強化したい部分)”を身に付ける
となります。なので「今の自分に足りない要素(強化したい部分)を把握すること」が他競技をやるときに一番最初にやるべきことです。
✖テイクダウンディフェンスを身に付けたいのに柔術をやる
△他の人がいいと言ってるから自分もレスリングやってみる
〇パスの技術を身に付けたいので柔術をやる
〇テイクダウンの攻防を身に付けたいのでレスリングをやる
若くて資源(時間と体力)が有り余っていれば、片っ端からいろんな競技に取り組んでもいいです。どんな競技からも学べることはあるはずなので。でも競技生活は短く、おっさんは先が短く体力もないし、社会人は時間がなく、資源は限られています。自分に必要なものを選びましょう
とはいえ、初めからMMAをやるつもりでスタートした人の場合、足りない部分しかありません。なので実際はジムの柔術クラスやキッククラスなどにとりあえず参加する形がほとんどだと思います。
2.いいとこどりはできない その競技はその競技としてやる
他競技をやるときに起きる問題があります。それが「いいとこどり問題」です。我ながらいいネーミング。競技(武術)の技には背景があるので、単品でいいとこどりして身に付けることはできないのです。以下、例を挙げながら説明します。
柔術
下からの三角絞めを例に考えます。MMAで使う柔術技のイメージといえばコレ。しかし「柔術で使う三角絞めは”柔術の三角絞め”」であり、「柔術のルールの中で、柔術の攻防の中で生まれた三角絞め」なのです。MMAで使いたい三角絞めだけを身に付けようとしてもうまくいかないのです。
三角絞めの入り方は無数にありますが、それらは柔術の攻防をする中で生まれます。柔術全体の技術のつながりの中に三角絞めがあるので、単独では身に付きません。柔術のルールを理解して柔術の崩しや組手を学んで柔術の攻防をする中でしか身につかないのです。
柔術の技術を身に付けたければしっかりと「柔術」をしましょう
面白い経験があります。自分がMMAの試合に出た時、柔術の先生(MMA経験ほとんどなし)が見に来てくれました。下になった時「三角いける!」と言ってくれて三角に入れました(一本ならず)。後で聞くと「MMAは分からんけど体勢的に三角取れると思った」とのことでした。
三角絞めを理解するとはこういうことなのだと思います。
また、柔術のルールはかなりMMAに適応した格闘技として完成度が高いものなので、柔術ルールに順応することはMMAにも活きると思います
・スイープの2点→上になって殴れる
・パスの3点→足を越えて相手をコントロールして殴れるし極めれる
・マウント、バックの4点→ポジションのゴール。殴れるし極めれるかなり有利な形
mmaを想定して作られた柔術のルールなので、mmaの人が柔術のルールを無視してスパーするのはナンセンスだと思います
レスリング
トップ選手で指導者の有元先生のこちらの記事を参考にしました。
レスリングクラスで柔術やグラップリングの真似事する奴いねえよなぁ!?のお話|有元伸悟 (note.com)
「ほんとうにそれ!」って感じの分かりやすい記事です。レスリングの技術はレスリングのルールの中で生まれたものです。そのルールを無視したらレスリングの技術が身につくはずがないのです。
レスリングのタックルも柔術の三角締めと同様に、タックルだけを覚えようとしても不可能です。ちゃんとレスリングしましょう
その他
・ボクシングで「この構えだとローを蹴られる」「ダッキングしたら膝が入る」とかいう
・相撲で膝つきタックルする
・極真空手で顔面パンチ
どんな競技でもルールを守らないとその競技の技術は身に付きません
その競技はその競技としてやる
柔術のルールを理解し、テクニックを学び、攻防をしないと、柔術の技術は身につかないのです。いいとこどりはできません。本職の競技に使えそうな部分だけを身に付けることはできません。むしろ遠回り。柔術クラスに出たら、しっかりと柔術をやったほうがクラスの内容が身に付きます。
これはレスリングなど他の競技でも同様。競技へのリスペクトを持って学びましょう。柔術やレスリングはMMAの補助種目ではないのです。
また、競技とはルールです。ルールがその競技を作っています。ルールを理解することがその競技の理解や技術の習得につながります。ルールを学びましょう。
賛否あると思いますが個人的には「MMAで使えるか」のフィルターをかけると吸収が悪いと思います。他競技をやっているときは一度そのフィルターを取っ払った方が素直に技術が身に付くと思います。
とはいえ「MMAで使えるかどうかを常に考えている」というタイプの人もいるのでどっちが正解かは分かりません。ただ、これはある程度技術体系が完成された人の話。アマチュアや白帯が柔術クラスで先生のテクニックを見て「これはMMAでは使えない」とか言ってたら、なめんなよって話です。先生や練習相手に失礼だからちゃんとやれよって話です。
3.本職の競技へのアジャスト
①②はここまで書いた通り。強い選手は③のアジャストが上手にできているイメージです。他競技から転向して癖が抜けなかったり、他競技で身に付けたせっかくの技術を本職に活かせないということは多々あります。大事なのは考えること、工夫することです。
いくつか例を
・柔道
→首投げはバックとられる。脇を差して払い腰を使う
・レスリング
→全く同じ形でタックルは使えない。打撃の攻防の中で「レスリングで習ったいい立ち位置」を取ってタックルに入る
・柔術
→三角絞めに入るには相手の頭を下げなくてはいけない。襟を引く代わりに相手のパウンドの勢いを利用して三角に入る
→しがみつく形のハーフだと殴られてしまう。ニーシールドを使う。パウンドで空いた脇を差してスイープをする
少し話がそれますが、MMAはいろんな競技や武道の技術を取り入れてアジャストして組み合わせていくところに奥深さと面白さがあると思います。また、柔術も組技の中では自由度が高いルールなので組み合わせや工夫の面白さがあります。
4.まとめ
まとめると、「②他競技にてその技術を身に付ける」「③本職の競技で使えるようにアジャストする」がごっちゃになるとダメってことです。他競技をやるときはちゃんと他競技をやって技術を身に付ける。その上で本職の競技で使えるようにアジャストする。それを端折って同時にやろうとすると結果的に遠回りになります。いいとこどりはできんのです。
2023/9/21 アンディ
追伸 こういう攻防はやめたほうがいいかも
本文中に入れるとボリュームが増えるので、追伸に。
レスリング
先に書いた有元先生の記事から
✖バック取られてキムラで切り返そうとする
→バックを取られないための攻防をしましょう。バックを取られない技術が身に付きます。
✖打撃の構えする
→お前はバカか。
✖倒されてクローズド
→これをやったらレスリングの技術は身に付きません。レスリングの技術は「両肩がマットに付くと負け」というルールの中で発展したものなので、そのルールを守らないでレスリングの技術は身に付きません。
柔術
✖トップから座って上下入れ替わる
→いや、スイープで2点取られてるのよ。。。でもこれけっこうあります。下からの攻めをやりたいのか。反則ではないですがちゃんと攻防した方がいいです。間違いない。これやってて強い人を見たことがありません。ちゃんと柔術をやる。トップになったらちゃんとパスの攻防をやったほうがいいです。そして相手に失礼です。これやられると相手の練習になりません。下の練習がしたいなら頑張って引き込みましょう。
△パスの攻防をしないで、上から足関ばかり狙う。失敗したらそのまま下になる
→足関の技術も大事ですが、こればっかりやってると成長が止まると思います。柔術でMMAに一番使えるといっても過言ではないパスガードの技術をちゃんとやらない意味が分かりません。
△パスの攻防を妥協してすぐパスされて、サイドとられてからブリッジで返す
→MMA的にはありなのか?というところですが、まあ3点取られてます。レベル高い人にパスされたらコントロールされて殴られ極められます。というかこれをやるなら柔術をやる意味があまりないです。柔術は「パスされたら3点取られる」というルールの中で「足を効かせて相手をパスさせない技術」が発展してます。その技術が身に付きません。「サイドを取らせてブリッジで返す技術」を柔術で身に付けるのは非効率です。
〇ボトムはハーフ、クローズド、フックガード中心
〇パスはグリップしないもの中心に組み立てる
〇スパーの中でも殴られるようなポジションは避ける、逆に殴れるポジションに重きを置く
→ちゃんと柔術ルールに沿った上でMMAに適応しやすいスタイルを取っているパターン。これは柔術の技術を習得できるし、MMAにも活きるのでいいと思います
? ラペラやベリンボロなどMMAで使えなさそうな技はあまりやらない
→これは分からないです。難しいところ。やってみたら意外とMMAに使えたり、そのままは使えないけど体の使い方や崩しのエッセンスはMMAにも使える、ということもあるので個人的にはやったほうがいい気がします。でも資源(体力と時間)は有限。やらないのもアリです
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?