【彼と彼女のものがたり】side Y
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり
現実の光と闇を行き来しながらも
お互いの存在を意識しながら
共に生きていく。
プロローグ〜side Y〜
「またまだやれるはずだ!」
「もっとやらなきゃダメなんだ!!」
頭の中で誰かが俺に言ってくる。
いつも何かに追われていた。
あの頃の自分には
死んでも戻りたくない。
「まぁ、戻りたくても
戻れない、か。」
颯太はフッと
自分を鼻で笑った。
★
「颯太さん!!!
ほんっとさすがですよねぇ。。
なんでこんなフレーズが出てくるんすか??」
隣のブースでRec.し終えた
後輩が顔を出した。
「颯太さんと一緒に出来るのいつぶりだろー?
いっつもこっちにいないんだもん。
ほんっと次は
呑み連れてってくださいね〜
相談いっぱいあるんすから!」
「うーん。。そのうち、かなぁ。
お前も引っ張りだこだし。
こっちが合わせなきゃだろ?」
「えー!?
じゃ、仮押さえでお願いしまーす!」
「あぁ、わかったよ」
★
食うか食われるか、だ。
変わりなんて腐る程いる世界だ。
もう、
ベテランと言われる域に
気づいたら入っていた。
ただ好きなことをしてきた、と
周りには言うけれど
この手で食っていくなんて
そう甘いもんじゃない。
かといって
コビを売るのも上手くないし、
だから
誰にも負けるわけにはいかないんだ。
当たり障りない表面上の
付き合いの方が気楽でいい。
面倒なのは懲り懲りだ。
俺は必要以上干渉されたくないし、
干渉もしない。
優しさなんて別に求めてもいなかった。
ひとは簡単に裏切る生き物だ。
信頼する分だけムダだと思って
生きてきたし、
これからも
それは変わらないと思っていた。
「あの人」を知るまでは。。。
★
予定したより
早く切り上げられた颯太は
いつもの場所に向かっていた。
「早めに着けそうです」
信号待ちでLINEした。
「了解です〜😊」
薫の返信を確認した途端、
ふっとチカラが抜けるのを感じていた。
この1か月
「あの人」に会いたくて
頑張ってきたんだ。。。!!
「やっと会える...!!!!!」
コインパーキングに車を止めて
バックミラーを見ながら
ヘッドホンで潰れた髪を
手櫛で整えた。
「どうせ、シャンプーするかぁ。。」
カッコつけようとした
自分が可笑しくなった。
ドアを開けると
すぐに薫と目が合った。
「おつかれさまです!!」
あぁぁ〜
この声が聴きたかったのだ。
ライブ終わりのビールのようだ、と
薫の声を聴くたびに
思うのだ。
細胞ひとつひとつに染み渡るような
そんな声色
彼女の声は不思議と安心するのだ。
いつもと変わらず
薫は柔かな笑顔で迎えてくれた。
薫の「おつかれさま」が
まるで、
「おかえりなさい」を言ってくれてるように
感じるのは疲れているからだろうか……?
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