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【彼と彼女のものがたり】side Y

「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり

現実の光と闇を行き来しながらも

お互いの存在を意識しながら

共に生きていく。

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プロローグ〜side  Y〜


「またまだやれるはずだ!」
「もっとやらなきゃダメなんだ!!」


頭の中で誰かが俺に言ってくる。

いつも何かに追われていた。


あの頃の自分には
死んでも戻りたくない。


「まぁ、戻りたくても
戻れない、か。」

颯太はフッと
自分を鼻で笑った。



「颯太さん!!!
ほんっとさすがですよねぇ。。
なんでこんなフレーズが出てくるんすか??」


隣のブースでRec.し終えた
後輩が顔を出した。


「颯太さんと一緒に出来るのいつぶりだろー?
いっつもこっちにいないんだもん。
ほんっと次は
呑み連れてってくださいね〜
相談いっぱいあるんすから!」


「うーん。。そのうち、かなぁ。
お前も引っ張りだこだし。
こっちが合わせなきゃだろ?」

「えー!?
じゃ、仮押さえでお願いしまーす!」

「あぁ、わかったよ」



食うか食われるか、だ。


変わりなんて腐る程いる世界だ。

もう、
ベテランと言われる域に
気づいたら入っていた。


ただ好きなことをしてきた、と
周りには言うけれど
この手で食っていくなんて
そう甘いもんじゃない。

かといって
コビを売るのも上手くないし、
だから
誰にも負けるわけにはいかないんだ。


当たり障りない表面上の
付き合いの方が気楽でいい。

面倒なのは懲り懲りだ。

俺は必要以上干渉されたくないし、
干渉もしない。

優しさなんて別に求めてもいなかった。

ひとは簡単に裏切る生き物だ。

信頼する分だけムダだと思って
生きてきたし、
これからも
それは変わらないと思っていた。

「あの人」を知るまでは。。。


予定したより
早く切り上げられた颯太は
いつもの場所に向かっていた。


「早めに着けそうです」

信号待ちでLINEした。

「了解です〜😊」

薫の返信を確認した途端、
ふっとチカラが抜けるのを感じていた。


この1か月
「あの人」に会いたくて
頑張ってきたんだ。。。!!


「やっと会える...!!!!!」

コインパーキングに車を止めて

バックミラーを見ながら

ヘッドホンで潰れた髪を
手櫛で整えた。


「どうせ、シャンプーするかぁ。。」


カッコつけようとした
自分が可笑しくなった。

ドアを開けると
すぐに薫と目が合った。


「おつかれさまです!!」


あぁぁ〜
この声が聴きたかったのだ。

ライブ終わりのビールのようだ、と
薫の声を聴くたびに
思うのだ。

細胞ひとつひとつに染み渡るような
そんな声色

彼女の声は不思議と安心するのだ。

いつもと変わらず
薫は柔かな笑顔で迎えてくれた。


薫の「おつかれさま」が
まるで、
「おかえりなさい」を言ってくれてるように
感じるのは疲れているからだろうか……?


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