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覚醒剤を使ってた時の話

僕が覚醒剤に依存していた時の話を載せておきます
覚醒剤に依存してなかったら、たぶんいま僕は生きてません

※薬物依存や希死念慮、精神疾患を持っている方には適さない表現があります
※自己責任でお願いします

覚醒剤依存者の日常をハームリダクション目的の創作物としてお楽しみください


陰鬱とした空が、自分の心の中にもじわじわと入り込んでいくようだった。
覚醒剤をたった今、売人から引いてきたところだ。
行きに路上で吐く。パチンコ店で吐く。帰りに駐車場で吐く。路上で吐く。胃袋にはとっくに何も残っていない。ベストコンディションだ
買おうと思った瞬間、心が湧き上がって吐き気が込み上げる。使ってもなくても使うと決めれば吐いてしまう。
とっくに依存者。

帰宅し、ベッドの上で手に入れた「ネタ」を確認する。引いた量は0.25グラム。透明で縦割れのガンコロで透き通るような結晶だった。
光にかざすと、その結晶はベッドライトの光を受けて、その透明感が一層際立った。これは上ネタだ。
ネタとともに付属していたインスリンポンプはオレンジ色のキャップがついていた、道具はたまにキャップの色が微妙に異なることがある。それによって針の長さやメモリが異なる。最初から針がついていないものは扱いにくかったりする。だが、このオレンジ色のキャップの道具は、何となく使いやすい。

ネタと道具の確認が済んだ後、私はbicのライターを取り、手元のパケの上からガンコロを潰し始めた。その瞬間、パリパリという感覚が指先に伝わってきた。この感触だけでネタの質が分かるのだ。綺麗な結晶でなければパリパリと割れず、固いものは質が良くない。今回のものは容易に割れた。
「いい感じだ」
そして、細かくしたネタを注射器へ入れる作業へと移行する。そっと押し棒を抜くと、押し棒がほんの少し濡れているのに気付く。その理由に対して毎回思いを馳せるのだが、すぐに興味はネタを慎重に道具に詰める作業へと移った。
注射器の中でギュギュと詰められた結晶は、ショーケースに納められた宝石のようにキラキラと輝きを放っているように見えた。きっとそれを見る自分の目もギラギラと輝いて見えるのだろう。道具に詰めたネタの美しさに目を奪われつつ、私は次の準備に取り掛かった。

私のネタの溶かし方は独特で、一回で使い切るために工夫をしている。余ったネタをパケの中でそのまま水で溶かし、その水溶液を吸い取り、注射器の中の結晶を溶かしていくやり方だった。
コンビニで買った天然水の緑色のキャップを開ける。その水をパケの中にそっと注ぎ込み、パケの中で余った細かい結晶が水に溶けていく様子を見つめた。その中にタバコのフィルターを入る。この一連の作業が一つの儀式のようだ。 
オレンジのキャップが針から外れる瞬間、その軽い抵抗感が腕に伝わる。何度も繰り返している作業だけど、その一つ一つがいつも新鮮に感じられる。
パケの中に直接針を入れてパケの袋に刺さらないように気をつけながら慎重にタバコのフィルターに針を刺した。
押し棒をゆっくりと引いていく。水溶液が毛細管現象でゆっくりとフィルターを経由して注射器に吸い上げられてくる。
何度か押し棒を戻して吸い切ると、注射器に入った水溶液に溶けていく結晶の美しさに、感動を覚える。容器の中で踊り出すように振る舞い、モヤモヤと溶けていくその姿は、呼び名の通り氷のようだった。

そして
私は注射する決意を固めた。


私の心臓が高鳴る音が部屋中に響くかのようだった。慣れてきた左手首への注射、注射痕を時計で隠すために打つのは左手首だ。
注射器の空気をゆっくり抜いてから、いつもの血管を指でなぞる。冷たい針と、皮膚の下に隠れた血管の脈動。二つの対比は針の異物感を強めるものだった。
穿刺する血管を決めて、緊張で震える右手の裏を左手首に少し当てて抑える、穿刺する角度と向きを決めたら、ゆっくりと刺す。針が肌に触れ、微かな痛みが感じられる。それは、爪先で皮膚を抑える程度の痛みだ。
少し奥まで刺してから押し棒を引いてみる。重い、逆血が来ない。静脈に刺さっていない証拠だ。ちょっと手の震えを抑えねば。この行為、何度経験しても慣れない。少し引いて、もう少し血管を探ろう。やがて、ぷつっとした感触と共に、引いていた押し棒がふと軽くなった。注射器に少量の血液がモヤモヤと流れ込んできた。
静脈に刺さった!!!
この瞬間の喜び高揚感は、他の何ものにも代えがたい。

気持ちを必死に落ち着けて、注射器を傾ける。ほんの少しだけ奥に差し込む。もう一度押し棒を引いて逆血を確認する。さっきよりも多くの血が注射器に流れ込んで来る。注射器の底に溜まった血液は煙のように水溶液と混ざっていく。その現象はこの世のありとあらゆる現象よりも芸術的だと感じる。
ここまでは戻れるのだ。すぐに針を抜いて捨てることも可能だ。そんなことが一瞬頭によぎって、そして一気に押し棒を押し込んだ。

冷たさが、注入した箇所から広がり、その刺激が私の全身を貫いた。
キタ…キタキタキタキタキタキタキタ!!!!!
と心の中で叫ぶ、それはこれから始まるラッシュの合図だった。
フー、フー、フー、と荒い呼吸が部屋にこだまする。目を強く瞑り、緊張と込み上げる吐き気、それと同時に湧き上がる期待感を抑えつつ、注射器をゆっくりと抜く。キャップもつけず、ただ放り出す。
うずくまるような姿勢で、穿刺した箇所を右手で強く抑える。手のひらを開いたり閉じたりしながら、凍りつくような刺激が全身に広がる感覚を味わう。それは始まれば一瞬の事だが、腕から肩、そして脳へと続く、一つのリズム、一つの流れをじっくりと味わう。
全身に伝わる冷感。全身の毛が逆立つ、毛の一本一本が誰かに引っ張られて浮かんでいるかのような感覚で、体が一気に軽くなる。

「脳汁が出る」という表現はあるが、これはそれどころではない。決して誇張した表現ではなく足りないくらいだ。脳が重力に逆らえず、形を保てなくなり溶け出す。頭蓋骨から溢れ出し、あらゆる毛穴からその液体が吹き出して止まらない感覚。それは私の思考や自我そのものが変容する瞬間だ。
気持ち良すぎて止まらない吐き気。溢れる快感に釣られて分泌された唾液が、口からただれ落ちる。しかし、それさえも幸せな吐き気だと気づく。

やがて吐き気が落ち着くと
その頃には、私は完全に覚醒していた。全てがクリアに感じられて目の前が明るくなっていた
頭の曇天が一気に晴れ上がり、海が割れるような衝撃。
覚醒剤との再会の瞬間である

お前にまた会えてやっと俺は目を覚ますことができた!今まで俺は何していたんだ?
きっと自分は今まで眠っていたんだ!今が素面で今までは夢だったんだ!
本当にまた会えて嬉しい、もう離さないからな笑
やっぱ一緒に時間を過ごしてお前より楽しいやつは居ねえよ笑
お前との付き合いはやめることができない、いや!一生一緒に居てやるよ笑笑笑笑
一生離さない、一生お前のことを忘れない、ずっと俺を支えてくれ!!!!!!
最高!!!!!!!!!愛してる!!!!!!!!!!!!!!!!

やっぱりお前と居るのは楽しいな!!!!!!



もう覚醒剤からは足を洗いましたが、手を染めた事実は変わりなく、一度でも使えば再使用の腰は軽くなります
覚醒剤の影がいつまでも纏わりついて自分の首を絞め続けます

絶対に真似しないように

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