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抜けないF1は何を観ればいいのか (その1)

F1初心者に向けた記事です。なるべく専門用語や固有名詞を使用しないで頑張って解説する記事です。
F1はゴールした時のトラックポジション(コース上での順番)でリザルトが決定します。(対してラリーは走破にかかった時間で順位が決定します)
なので、マシンが速くてもライバルの前に出ればければ意味がないんです。
この記事は「どうやってライバルより前に出るか?」という点を説明したいと思います。

「コース上で直接追い抜けばええんちゃうん?」と思うでしょうけど、様々な理由でコース上ではなかなか抜けないんです。何故か?というのはまた別の機会に記事にしましょうか。


今回のメインディッシュは「コースの外でライバルの前に出る」という方法について解説しましょう。テーマが地味!
ちなみに、全て同じマシンとドライバーとタイヤ、走り方も同じ(意図的に遅く走る、速く走るというのは無し)という極めてシンプルな状態という前提で読んでもらうと、理解が進むと思います。

F1マシンは毎周同じラップタイムで走れない

コレ、知ってました?
同じ走り方してても毎周ラップタイムが勝手に変動していくんです
例えば1周走るのに1分30秒かかるマシン、ファイナルラップでは1分27秒ぐらいのタイムになっちゃいます。何故かというと、ガソリンが減って軽くなるからなんです。

2024年サウジアラビアGPの決勝のラップライム推移。右下がりなのがわかる?

こんな感じでF1マシンは色々な要因が重なって、ラップタイムが変動しちゃうんです。ラップタイムに影響を与える要因を以下の4つに分類してみました。
①ガソリンの搭載量が減る
先の例ですね。「軽くなったら速く走れるよね」という割と想像しやすいモノだと思います。
②サーキットのコンディションが変わる
いっぱいあるんですが、簡単な例では天気ですかね。例えば雨が降ったら速く走れませんよね。これも直感的に理解できると思います。
③マシンが履いてるタイヤの状態が変わる
乗用車と違いF1のタイヤは超ド短命です。もう、消しゴム並みにどんどん摩耗していきます。観戦してると路面の端の方に黒い粒々が見えるでしょ?アレはタイヤの摩耗したカスの塊なんです。(マーブルって呼ばれます)
④その他
マシンが破損したりトラブルを抱えている、目の前に遅いマシンがいる、とか局所的な要因。

ライバルと差をつけるためには

上のラップタイムを変動させる要因のうち、局所的な要因である④は除外しましょう。
①と②ですが、コレって全てのマシン(チーム)に等しく作用しますよね?同じ距離走るならガソリンが減る量は同じでしょうし、天気が雨になったら全員レインタイヤ履くじゃん?ライバルに対して差がつきませんよね。
じゃぁ、③はどうでしょう?履いてるタイヤが同じならスタート後のタイヤの摩耗具合はみーんな同じです。マシン性能で摩耗状況は変わるかも知れませんが、ライバルと特大の差が出るようには思えませんね。
でも、③だけで差をつけて追い抜くことができるんです。
「ハァ?どういうこと???」
ポイントはタイヤが摩耗するってこと。

タイヤが摩耗するとどうなるのか?

タイヤが摩耗すると速く走れなくなります。摩耗の進行は走行距離に比例するので、周回を重ねるごとにだんだん遅くなります
「何となくわかるけど、摩耗状況はみんな同じでしょ?それでどうやって?」
同時にピットインしなければ、差が出ます。
「チンプンカンプンなんだけど???」

アンダーカットという戦術

ついにF1の専門用語を出しちゃいました。もちろん今回の記事のキモです
さて、この横文字から内容が想像できないと思いますが、構えないでください。起こっている現象は本当に単純な事なんです。
大事なことは以下の点だけです。特に①。
①タイヤが摩耗するとタイムが遅くなるのは先述の通りなんですが、裏を返せば、新しいタイヤだとラップタイムが速くなります
②タイヤ交換には時間がかかり、「ピット通過タイム + 交換作業時間」のタイムを失います。ピットレーンは制限速度があるので、通過するだけでも20秒ぐらいのタイムを失います(このロスタイムはサーキットごとに違います)。また、タイヤ交換の作業にかかる時間は平均2.5秒ぐらいです。
ここからは紙芝居で説明します。仮定する条件は以下の通りです。
・新しいタイヤだと0.5秒速く走れる(①)
・ピットインロスタイムが20秒(②)
・4周後にピットインする

①1秒差で走行中
②後方のマシンがピットイン
③新品タイヤは速く走れるので、差が少し詰まる
③交換後2周目
④交換後3周目
⑤4周目、前方のマシンがピットイン。アンダーカット成功!

ね?簡単でしょ?
イコールコンディションでもピットインのタイミングをずらすだけで、追い抜きが成立しました!

アンダーカット、無敵やん…!

アンダーカットには絶大な威力があります。まずアンダーカットの追い抜き行為にリスクがありません。コース上で直接抜く場合、接触などでリタイヤの危険性が付きまとうのですが、アンダーカットにはそれがありません。
また、新品タイヤのタイムの上げ幅が大きければ、後方のマシンが遅いチームでも理論上は追い抜きすることができます。
でも、アンダーカットは万能ではないんですね。それについては、次の記事で説明しましょう。

ほな~!



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