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自己実現に繋がるキャリアパスの見つけ方

はじめまして、モーションデザイナーの清水です。
突然ですが皆さんは真っ直ぐ目標に向かって進んでいますか?
自分の目標を定めて維持するのって、難しいですよね。
私はいくつかのまわり道と気付きを経てやっと軸が定まりつつあります。
そんな失敗談から得た気付き目標を得て幸せになった過程を共有させてください!

ーイケてると思い込んでた新卒アニメスタジオ時代

学校の卒業が迫っていた私は、とにかくかっこいいものを作る会社に入りたかった。ちょうど学校の廊下で見つけたアニメーションスタジオの求人が、すごく自分好みの会社だったので応募、入社。

小規模な会社なので、アニメーション制作のプロセスをひととおり教えてもらった。日本特有のリミテッドアニメーションの作法を駆使して、かっこいいタイミングや迫力を追求する方法をとにかく沢山たたき込まれた。とっても充実した楽しい日々だった。
4年ほど経った頃からチームのまとめ役を任されることがだんだん増えてきた。扱うタイトルも有名なものが多く、若かった当時の私は、華やかなタイトルや与えられたポジションの響きに酔い、自分のキャリア形成が順調に進んでいると思い込んでいた。

ところがふと立ち止まって自分の心の声を聴いたとき、「アニメーションディレクター」「OPムービー制作」「○○万回再生」などのフレーズから得る満足感は、強烈だが意外と長続きしないことに気づいた。
それよりも、担当カットのレイアウトがうまくいったとき、アニメーションが思い通りに仕上がったとき、それらによりキャラクターを生き生きと見せられた時の方が、深く長くつづく満足感に浸ることができた

一方、会社側の方針は世間からディレクター集団として一目置かれることだった。そして狙い通り、会社の知名度は順調に上がっていった。初対面の人に会社名や経歴を伝えると、相手の態度が即、敬意に満ちたものに変わることが増えた。
そのたびに心の中で「あれ…?」、と小さな違和感が生じた。
心のバランスがとれない
実態が伴わなず膨らみはじめた名声のようなものに自分の心が追い付かなくなってきていた
熟慮の末、私はお世話になったアニメスタジオを去ることにした。

ーぬるま湯に浸かっていたソシャゲ会社時代

恐らく私は、穏やかに、平和にアニメーションの仕事がしたかった。なので転職先は、環境と空気感を最重要視し、ソーシャルゲームの大手の会社を選んだ。望み通り最高に平和な職場にありつき、ほどなくして開発中のパズルゲームのチームに配属された。
開発中だったからか、モーションが自分しかいなかったからか、かなり自由にやらせていただき、割と何をやっても褒められた
ゲームの仕組みに合わせたアセット作り、限られた尺で効果を最大限にする演出手法感動の仕込み方など、貴重な勉強を沢山させてもらい、大変居心地の良い環境で、気づくと3年ほど経っていた。

そんな折、たまたま映画館でPIXARの「リメンバーミー」を観た
アニメーションもお話も素晴らしく、私は大号泣した。帰宅しても感動がおさまらず、一晩中泣いた。
その時、天からガツンと殴られたような感覚を味わった。
「お前はアニメーターになりたかったのではないのか?」という声がどこからともなく聞こえた。

ふと冷静に置かれた状況を省みると、人物のアニメーションから離れて久しいことに気づいた。恐る恐る自主制作で歩きのサイクルを作ってみると、自分の目を疑うほど下手くそになっていることに気が付いた。
それからの1年間は、ひたすら自主制作し、SNSへの投稿を繰り返した。お陰でAnim Challenge11 Second Clubのような、世界中のアニメーターが投稿して競い合う場所に出会った。そして、世界中の上手い人達の作品を見て、自分のレベルを思い知った

友人の誕生日にムービーを作ったりしていた。
Modelled by: Jonamar Palejo
Pose to poseすぎてオーバーラップが無いと言われた作品。
Rig: Animation Mentor

頑張ったところで太刀打ちできない現状に途方に暮れていた矢先、ふとCTNというイベントについて思い出した。LAで毎年開催される、アニメーターの情報交換・職探し・コネ作りのためのイベントである。しかもちょうどその年の開催は二ヶ月後に控えてるではないか。すぐさま休暇申請し、LAへ向かった。

会場では、アニメーターを目指す学生やキャリアアップを図る現役アニメーターにたくさん出会った。沢山のトークセッションを拝聴したが、特に、ILMのアニメーターが居心地良すぎてずっと一社に居座っているのをからかわれていたのが印象に残った。Job Hoppingが基本のアニメーター市場で、そんなことあるのか、と羨ましく思った。
そして沢山のプロ達に自分のポートフォリオを見てもらった。とりわけAnimSchoolの講師が丁寧にアドバイスをくれた

CTNの様子。有名アーティストやスタジオのメイキング・セミナーを一日中聴ける。
あとみんなずっと絵描いてる。

学校でしっかり学び直すべきという気持ちが強まり、帰国してすぐにAnim Schoolへの入学手続きを済ませ、早速仕事とスクールの二足の草鞋生活が始まった。
スクールではバウンスボールペンデュラム振り向き動作の足の運びと重心移動など、基礎中の基礎から教わり、初めて基礎の重要さを痛感した。

人格を持ったボールのアニメーション。設定を考えるのが非常に楽しかった。
Rig: Animschool
180度回転。重心移動がめちゃ勉強になった。
Rig: Animschool

そして、基礎が身につくと、目に見えて自分の上達がわかるようになり(それは業務にも現れた)、次第に課題にのめり込んでいった

絶対にうまくいく4足歩行の作り方を教えてもらった
Rig: Animschool

ふと会社を見渡すと、同じような境遇や視点の人に出会えず、寂しさを覚えた。そして、お世話になったソシャゲ会社を去ることにした。

ーAnimSchoolの良いところ

ここで少しスクールの良いところについて紹介したいと思う。決して回し者などではなく、純粋に感じた驚きと感動を共有したい。

まず、自分と同じ志を持った仲間に簡単に出会えること。課題が大変すぎて、周囲との協力無しにはこなせないので、自然にクラスメートと仲が深まる。彼らは、出身国、年齢、生い立ちこそ様々だが、一様に「上手いアニメーターになりたい!」という点で共通しているので、とても波長が合う。横のつながりが広がり、簡単に心理的安全性が得られた

そして言わずもがな、講師陣の審美眼がすごい。世界的知名度を誇る大手スタジオには日々世界中からポートフォリオが山のように届くので、自然と見る目が鍛えられ、最初の24フレーム(1秒)で合格か否かが判断できるようになるらしい。その的確さの恩恵は日々の講評会で授かることができる。アニメーションを2度ほどリアルタイムで再生しただけで、問題点をフレーム・体の部位・パラメーターすべて特定してきたりする。そして言われた通りの修正をすると本当に見違えるのである。

もう一つ、そして最も良かったと思うことは、優秀なアニメーター達の姿勢に日々触れられることだと思う。一流な人ほど、ベテランになっても基礎と初心を大事にしている。そして彼らのアニメーションへのアプローチ方法、カーブの制御方法、キャリア形成、得意分野は驚くほど多様である。アニメーターとしての生き方に決まりなどないのだと知り、それは自分の生き方への自信にも繋がった。

ー現在

2021年の8月から、縁あってangooで働かせていただいている。
決め手は採用プロセスでお会いした人達とすごく話が合ったことである。
その第五感に従って入社してみたところ、心理的マッチングの度合いは予想を超えていた。個性の強い人ばかりなので、厳密に言うと自分と似ている人なんて一人もいない。ただ、みんなの好きなことだけを追求して自己研磨に励むシンプルな生き方に深く共感しているのだ。遠回りしたが、ようやく自分の居場所を見つけられた気がする。

ー総括

まとめると、得られた気づきは大きく2点ある。
ひとつ目は、タイトルの大きさやジョブポジションに惑わされるな、ということ。何に携わったか、どんな役職だったかよりも、何をやったかどう成長したか、の方が大事だと思う。
ふたつ目は、目標はすぐ見失うものと心得よ、ということ。定期的に確認、リマインドしていかないと、簡単に道に迷ってしまう。軸を維持する習慣作りは大事だ。

以上、失敗と勘違いに満ちた私の半生だが、これが少しでも誰かの気づきに繋がるなら、そんな嬉しいことはない。
今後、デザイナー、アニメーターに限らずあらゆる職種のキャリアパスの多様性が増していくと思う。だけど、だからこそ、自分の向いている方向を確認し、信じて進むことがより大事になってくるのではないか。

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