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断片から蘇る言葉―古代の外来語と少数資料言語の比較分析について―

近縁言語と外来語の分析

 言語の研究には言語資料が必要である。
 古代語は現代語と違って制約が大きく、出土した碑文や写本などの形で伝えられてきた古典文学といった文章語が中心になる。

 それでも古代ギリシャ語のように極めて古い時代(前15世紀頃)から記録を持ち、豊富な文学や碑文で知られ、子孫に当たる現代語が続いており、ラテン語やサンスクリット語といった多くの同系言語とも系統比較分析ができる言語は極めて恵まれたほうである。

 使われた言葉全体のうち文献記録として残ったものは割合的に見れば少なく、直接資料が少数の碑文程度しかない言語は少なくない。
 印欧語族の中だけを見てもそうした言語は多数に上る。

 今回はそんな断片的な記録しか持たない言語をどのように分析するのかについて、ラテン語と近縁なファリスク語、オスク語、ウンブリア語、そしてアイルランド語やウェールズ語と近縁な古代ケルト語(ガリア語)をテーマに導入解説をしていきたい。

 きっと良き発見があることだろう。

前6世紀頃のイタリア周辺の言語地図 (Author: Dbachmann)
ラテン語(Latin)の分布域に注目。
南イタリアではギリシャ人の植民都市が栄えていた。

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