「オリンピックなんて田舎くさいモノはくだらないからやめればいい派」だけど、競技自体はとても素晴らしく、アスリートは尊敬している。東京で今やる理由がないってだけだ。

外国の人が東京に来ても、現状では十分にもてなすことはできないと感じている。俺は自分が世界のいろいろな都市にお邪魔しているし、そのどこでも人の親切を感じている。

だから、渋谷にいるときにはできるだけ外国の観光客に居心地良くいて欲しい。オリンピックであろうとなかろうと「日本に行ったとき、日本人に優しくされた」と思って欲しいのだ。

うちの仕事場の隣に、外国人観光客がほとんどのホテルがあるんだけど、ちょっと大通りからわかりにくい場所が入り口なので、大きなスーツケースを転がしながらそのあたりで迷っている人は、もれなく声をかけてホテルの前まで案内することにしている。

54歳にして2歳児並みの英語を使うことだって恥ずかしくない。シェイクスピアの詩的なニュアンスについて語るのは無理だけど、実務的なことが通じればいいのだ。

自分はホテルの場所を知っているのに、外国の客が迷っていることを知らぬふりして通り過ぎることの方が、よほど人として恥ずかしい行いだと思う。

さっき新しいカメラを買いに行った。4Kハンディカムを買っていたアメリカ人女性が、店員に英語で「もっと安くしてくれない？あの人みたいにBlackMagicを買えない貧乏なんだから」とこちらに向かって笑顔で言った。

店の外で彼女とまた会ったので「いい買い物はできたか、あなたはプロのカメラマンか」と聞くと、恥ずかしそうに「ニュージャージーでドキュメンタリー映画の勉強をしている」と言った。BMDを知ってるってことで素人ではないのはわかっていた。アドレスを教えたからメールが来るかもしれない。

お母さんの具合が悪いので明日アメリカに帰るそうだ。「ママ、よくなるといいね」と言っておいた。

人はそこにいる。そこに誰もいないように、自分とは無関係だと振る舞うことの恐ろしさをいつも感じる。

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