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惰性の人生を反省。

20代の頃、広告を仕事にするとしたらどこで働きたいかを考えて、仲畑広告制作所の試験を受けることにした。結果はダメだった。

仲畑さんの作る広告が「人情があってポップ」であるなら、その対極にあるのがコピーライター秋山晶さんの「エレガントで日本人離れ」した世界。そして俺はライトパブリシティにお世話になることになった。

会社に入って1年もしないうち、何かのパーティで仲畑さんにご挨拶する機会があった。今思えば若いヤツが言う典型的に最悪のアピールなんだけど「入社試験を受けて落ちました」と伝えた。

すると仲畑さんは「じゃあ、ライトで仕事をおぼえたらウチに来ればいいよ」と言い、隣にいたライトの社長である細谷さんが「落としておいて、図々しいことを言うなよ」と答えた。

ちなみにライトのデザイナー採用の試験であったにも関わらず、デザインはまるでダメ。その時に出した作文だけ秋山さんに「お前はコピーライターで受ければよかったのに」と、お褒めの言葉をいただいた。完全にインチキ入社だった。

なぜそんな昔話をするのかと言えば、たまにその頃の夢を見るからだ。

俺はそういった人々のおかげで多くのことを学び、怠惰によって多くのことを学び損ね、今では感謝と反省しかない。現在自分ができている仕事にはエンジンがない。若い頃に連れて行ってもらった国内最高の標高から、グライダーのように惰性で滑空しているだけなのだ。

もし俺にエンジンがついていたらそこよりさらに高く飛べたかもしれないけど、そんな能力も才能も持っていなかった。年齢を重ねるにつれてどんどん地表が迫っている。ギリのところでおケツを浮かせながら擦りむかないように生きている。

何者でもなかった自分がそうやって50歳を過ぎるまで飯(おもに鰻)が食えて来たことに感謝している、というお話です。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。