NHKSP「”学校”のみらい~不登校30万人から考える」(その2)

1月27日(土)放送のNHKSP「”学校”のみらい~不登校30万人から考える」(詳しい番組の内容は下記を参照ください)

不登校の現状についての内容は概ね違和感なく、NHKで取り上げられるということはある程度コンセンサスが得られていると捉えてよいでしょう。

前の記事に引き続き、その内容について振り返ってみたいと思います。

海外の事例として、韓国の「代案学校」、フランスの「エデュケーター」について紹介されました。いずれも初めて知る内容で、もちろん教育事情は各国でまったく異なりますし、それぞれの国でも問題を抱えているはずですので、そのまま取り入れれば解決するというものではありませんが、ヒントになる要素は多くあるかと思います。


番組後半では、経験者・当事者・関係者を交えての座談形式で次の2つのテーマに沿って進行します。

①「子供主体の学び」とは?
②学校に行かない子供の学びは?

国内での取り組みとして、①について山形県天童市の小学校(カリキュラムの約2割を子供自らが学ぶ形にする)、石川県加賀市の教育委員会(教育委員会主導で教育改革を進める)、②について熊本県熊本市の教育委員会(不登校の児童を対象としたオンライン授業)、千葉県のフリースクール(30年にわたり不登校児童に向き合ってきた取り組み)等が紹介されました。

①は「学校での学び」はどうあるべきか、②は現実に「学校での学び」から離脱してしまった場合どうすればよいか、ということです。

承知の通り、現在では不登校の解決方法の方針は「学校に戻ること」ではなく、(「学校に戻ること」も含めた)「学びの機会を確保すること」とされています。つまり、以前であれば②はそもそも議論されなかった、「不登校の子を出さないために」①が議論されていた、ということでしょう。②のような議論がようやく公にできるようになってきたことは歓迎されるべきことだと思います。但し②について、現状では特効的な事例や考え方の紹介はありませんでした(例えばホームスクールについての言及は無し)。


文部科学省からも立場のある人(初等中等教育局長)が出演。現在の国の取り組みについてその考え方と現状を話されました。「(自身はこの場では)嫌われる側の立場」と語りながら、現在の問題点と限界について率直に述べられたのは個人的には好感を持てました。

私もそれなりに大きな企業に勤めていますので(現在は休職中ですが)、今の日本において「組織が変われないこと」については嫌となるほど痛感しています。まして国の仕組み、しかも教育という誰もが関係することはわかっているけれども意外と当事者を持てない課題について、解決に向けて動こうとすることがいかに無理難題かよくわかります。

教育は「国の根幹にかかわる基本」と多くの人が言いますが、一方で例えば国が主導して「このように教育改革を実施しなさい」と言えば(うまく進むかどうかは置いておいて)どうでしょうか。おそらく「国が子供を都合のいいように作ろうとする」「戦前に戻る気か」「軍国主義の再来」と反対の大合唱になるでしょう。現状では、紹介されたような各自治体の取り組みに任せて、方針を示したり、バックアップをしたり、水平展開をしたりといった取り組みが限界なのだと思います。

教育を含めた子供の育児の課題は、当事者にとっては今すぐ解決しなければ意味がないという問題があります。なぜなら子供はどんどん育っていくのですから。「たまたま」「運よく」問題にぶち当たらなかった(例えば子供が不登校にならなかった)多数派(ここでの表現は語弊があることを承知のうえで敢えて使っています)だけでなく、そこから漏れて少数派になる人も含めた全体にとっての解決を考える必要があります。(そもそも子供を持つ当事者が社会全体で少数派ということが問題なのかもしれませんが。)

なお、文部科学省の取り組みで紹介された「不登校特例校」についてリンク先を貼っておきます。



学校に行かないわが子は今日も成長しています。誰かになんとかしてもらおう、ではなく、自分たち自身がわが子のために(大きな視点で言えば今の子供たちのために)寄り添ってなにをすればよいのかを一人ひとりが考えることが答えなのでしょう。



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