一人。整理。

最初は目の前の情報が信じられなくて。
でもどうしても受け入れられない事実なんだっていうのが段々頭に入ってきて、今度はその現実が入ってこないようにするのに必死になった。
必死になって締め出しても、一回知ってしまったことをなかったことにできなくて、自分の中でいろんなことが少しずつ心に侵食してきて。
それが初めは許せなくて、怒りとか、そんな気持ちだった。悲しいとか寂しいとかそういうことじゃなくて、ひたすらどうしてって。
一瞬前まで幸せだったものは、思い出しても何かが心に刺さって涙が出るだけだから全部記憶から締め出して。とりあえず箱にしまって。指輪は奥にしまって。
顔を見れば、どうしてっていう気持ちと、少しだけ隣にいた時の記憶とかが戻ってきて、それが自分の中でぶつかって怒鳴るしかできなくて。だけど別に怒鳴るって楽しくないし、怒るって疲れる。エネルギーを消費し続けることにしかならない。会えば会うほど、どんどん許せなくなって、今の私を理解してもらえないことにも悲しくなって、でも悲しいのだって怒鳴るのに乗せてぶつけることしかできなくて。
段々、自分の中でも整理ができてくる。もしも、もしもこの先があり得るなら、それは多分私の中で全部整理がついて、それからなんだろうって考えることができるくらいになって。
同時に、今許せないのも、どうしてもこの先を捨てきれないのも好きだからだっていうのに気づいて、今度はそれが許せない。
でもそれは簡単に切り替わるものじゃない。だって時間をかけてなくなったものじゃないし、無理やり締め出してるだけのものだから。
会えば、顔を見れば流されて話すかもしれない。一緒にいるかもしれない。だけど許せないから私はどんどん怒って怒鳴って、最後には嫌われていくだけかもしれない。だから会えない。会いたくない。何が何でも話してはいけない。
そんな風に考えて、でも、もうどうしたらいいか正直わからなかった。

正直、もうこのまま離れるのが正解だっていうのはものすごくよくわかってた。実際、そうなるように頑張ってみたりもした。でもその結果少し自分の中が落ち着いて見れば、怒鳴らないでいられる様になって見れば、結局前みたいになるだけって自分の中でわかってしまって、どうしてもその自分は許せなくて、相手のことも信じられなくて、拒絶の姿勢をとり続けた。

手を振り払えなかったのも、話を断れなかったのも、結局整理して残ったのが昔と少し変わってもなくせなかった気持ちのせいだっていうのにどこまで気づかれていたのか知らないけど、とにかくどうしたらいいかわからないけど背中を向けて駅に行けなかった。
正直、怖かった。信じられない相手ってこんなに怖いのかって。あんなに一緒にいた人でもこんなに怖いんだ。でも全力で逃げるのは、もうついてきてしまうだけ気持ちが残ってる時点でできないってわかってるし。とか色々混乱しながら思ったのは、「今は無理」っていうだけだった。
こんなにまだ置いて行けない。こんなにどうにかしてあげようと思う。でもどうしても、まだ信じられないから前みたいに隣にいられない。きっと今隣にいたら、その先はないから。私が、ちゃんと幸せだと思って隣にいるためには、もっと自分の中で考えて整理する時間が必要だったから。絶対に許せないものが、やっと今はまだ、に変わったところだったから。
もう大丈夫かもしれないって思った瞬間なんて、たくさんあった。もう次に行けるかもしれないって。でもそれを聞いた顔を見て、反応を見て、声を聞いて、他は楽しく時間を埋めてくれるだけだって気付かされたから。でもまだまっすぐ目を見られないし、こんな急に自分の中で変わり続けてるままじゃどうやって一緒にいればこの先があるのかわからないから。まだ少し何かがあれば多分怒鳴ってしまうから。だから一緒になんていられないと思った。何があっても、今一緒にいたら私はダメになるから。ダメになったらこの先一緒にいられないし、恨み続けるかもしれないから。そんなことをずっと頭の中に抱えながら、でも少し隣にいた頃みたいだって思いながら一緒にいたから。

何がどうなったのかよくわからないけど、そんなものを頭に抱えながら帰ってきて、ずっと考えていたのに、本当に面白いくらい一瞬で切り替えってつくことらしい。どうしても受け入れられないことって本当に人それぞれらしい。あんなに怖かったのに、もうどうでもいいらしい。思い出した様に謝られたけど、多分違うことに対してだって気づいていない。何ヶ月もかけてどうにかしようとしていた私が、どうやら一人で踊っていただけらしい。何回も何回も、この先のためを考えるなら今は放って置いてくれなんて説明までしたことは、もう全部要らないことだったらしい。ただ「嫌だ」って、それだけで修正がきく様なことじゃないっていうのは理解してもらえなかったらしい。いいけど。もういいけど。もういいでしょって。そこまでどうでもいい人間だったなんて知らなかった。もういいでしょって。私の一番大変な時期に拒絶し続けなきゃいけなくして、もう頑張るものを見失ってどうしたらいいかわからない時に、必死で考えようとしたらそれはもう要らないらしい。最初から最後まで、そういうことだったらしい。どうやら。私は、そういうことらしい。どうやら、どうやら。涙も、怒りもないから、私は震える手でLINEをブロックした時よりもどうしたらいいか、わからない。

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