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医学部受験の差別問題

今日で最後のセンター試験が終了した。受験生たちは必死の想いで二日間頑張ったと思う。その頑張りは、男子生徒だろうと、女子生徒だろうと、浪人生だろうと、変わらない努力の塊だ。
しかし、去年の東京医科大等の受験では女性の受験者と浪人生に対して減点を行なっていたことが明らかになった。
以前から、女の子は医学部に入りにくいと予備校等では言われていたが、数字の上でそれが明確になったのは衝撃だった。
そして昨日、聖マリアンナ医大でも、同様に差別的な減点制度が設けられていたことが発覚した。
Huffpost; 聖マリアンナ医大、女性と浪人生への差別「可能性あった」と認める

時は令和2年。こんなくだらないことがまだ横行している日本に、私は女性として、一国民として、怒りを通り超して呆れかえっている。

医学部受験で女性を差別するということ

医学部受験で女性が差別されるというのは、彼女たちの人生設計をぶち壊す以外に、どういった影響があるのか。主にこの3つについて考えてみたい。

① 医師の質の低下
② 男性の労働環境の無変化
③ 医療現場の画一性

1. 医師の質の低下

今回のような受験時の減点が行われるということは、点数が高かった女性受験者の代わりに、点数が低かった男性受験者が合格していることになる。
聖マリアンナ医科大では、女性であることで180点中80点も減点された状態で受験がスタートする。つまり、男性受験者よりも80点高い点数をとってやっとトントンなのだ。100点を取った女性受験者よりも、21点を取った男子受験者が合格するということになる。

これにより、80点の下駄を履いた男性たちが医者になっていき、彼らよりも出来が良かった女性たちは別のキャリアを歩んでいくことになる。

そもそも少子化の影響により、大学受験そのものの難易度はどんどん下がっている。そんななかこのような下駄履かせを行うことによって、本来ならば受からなかった男性たちがどんどんと医者になっていく。これでは、医師の質の低下は免れない。

そもそも、なぜ女性受験者に対して減点するのか。よく言われるのが体の問題である。女性は体力が男性よりも弱く、女性であるから、産休や育休を取られてしまったら人手不足になってしまう、という言い分である。果たしてそうだろうか。

2. 男性の労働環境の無変化

医師の仕事はハードである。36時間勤務後、数時間後にまた呼び出される、と言うことも多々あるそうだ。「だから女性にはハードで、できませんよ。」という方がいるが、これは男性にとってもハードなのではないか。

女性受験者の減点制度を肯定する一つの理由としてあげられるこの体力問題。しかし、36時間少しの仮眠でぶっ続けに緊急患者に対応するなんて、性別が関係なくめちゃくちゃ大変ではないか。それに、一般論として男性の方が体力があると言えるかもしれないが、やはり個体差はある。男性でも、これをこなせない人は一定数いるはずだ。
これは、他の医療問題にも密接に関係していることなので(医師不足、給料が上がらない等)、深くは言及しないが、「ハードな労働だから男性がやるべき」というのは時代遅れであり、間違っている。

もう一つ言われるのが女性の産休・育休・退職問題である。これは、医療現場に限らず、どの分野でも女性よりも男性が(未だに)好まれて採用されている理由の一つである。これも全くもって無意味な理由である。

まず、当たり前だが、女性だから妊娠する、とは限らない。妊娠を望まない女性や、望んでいてもそれが叶わない女性だっている。それなのに、彼女たちが女性であるという理由だけで、キャリアの行く末を勝手に決めるのは何様だろう。

そして、育休に関しては、なぜ男性が取らない前提なのだろうか。日本では、育休を望む男性と実際に取得できる男性の割合に大きな差がある。これは、女性だけではなく男性のQOLも下げている。男性であっても、父親として育児休暇を取得し、子供と絆を深め合う時間が必要だ。彼らが望むのであれば、社会的なスティグマがなく取得できるような雰囲気を現場で作っていかなければならない。

退職問題においては、なぜ、優秀な女性が現場を去らなければならないのか。これは病院側に問題がある。せっかくの人材が、育児のために他の医師と同じような勤務対応ができないから退職すると言うのはあまりにももったいない。

これらの問題が未解決なままなのは、実際に女性医師が少ないことに関係する。現在、女性医師は全体の2割しかおらず、例えば脳外科には5%ほどしかいない(厚生労働省調べ)。
そしてその2割のうち、中にはキャリアのために子供を諦めた方もいると思う(いわゆる、女性の男性化)。今後、医師の中の女性の割合が増えれば、産休・育休制度が整い、男性も育休を取得しやすくなったり、現場がフレキシブルな勤務形態を取ることで、男性もオーバーワークから少し解放される可能性が出てくるのではないか。
女性を多く雇うことは、男性にとっても救済につながるのだ。

3. 医療現場の画一性

2の点とも通ずるが、男性の労働環境が変化しないのは、職場に多様性がないからではないか。

多様性は様々な利点をもたらす。

「医師」と一言にいっても、その仕事の内容は様々だろう。その一つ一つに向き不向きがあり、やはり向いている仕事をする方が、本人にとっても、患者にとっても、病院にとってもメリットがあると思う。

しかし、同じような人材ばかりがいては、多様性がなくなり、やりたい(向いている)仕事にも傾きが出てきてしまう。女性や、浪人生など、様々な人生体験を経た人材がいることにより、各々適材適所で働くことができ、ストレスも軽減されるのではないか。

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怒りに任せてここまで書いてきたが、ネットでは盛んに語られているフェミニズム問題が、どうやらメインメディアになかなか降りてこない。私は社会学者でもないし、医者でもない。しかし、こういった問題を解決していくためには、一般市民である私のような人間が関心を持ち、語っていかなければならない。
「女性だから」「男性だから」というレトリックはもう古い。自分の性別ではなく、スキルや個性で人を判断する社会に早くなってほしい。

聖マリアンナ医大は今回の調査報告について、「本学といたしましては、一律機械的に評価を行ったとは認識しておりませんが、かかる報告を踏まえ、意図的ではないにせよ、属性による評価の差異が生じ、一部受験者の入試結果に影響を及ぼした可能性があったとの認識に至りました。」と、発表しており、この問題についてあくまでも意図的ではない、というスタンスのようだ。しっかりと反省してほしいという気持ちでいっぱいである。受験者に対して入学検定料相当額を返還するだけではとても許されない。
聖マリアンナ医科大学; 本学医学部入学試験に関する「第三者委員会」の調査報告書について

本件調査結果の公表にも問題がある。以下、@yymmdd さんのツイートを拝借する。

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聖マリアンナ医大には、今後より適切な対応を見せてほしい。
「人の命を救いたい」と思った女性たちの夢を潰した責任は重い。

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