『コケカキイキイ』:メモ〜小鳥はどこに?

水木サンの名作短編「コケカキイキイ」(角川文庫『異悦記いえつろく』収録版)には「謎」がある。すなわち、コケカや太吉少年などによって開かれた集会「ユートピアえの序曲」の場面がそれだ。語り手によると、出席者は、①植木鉢、②小鳥、③もやし、④コケカ、⑤太吉少年、⑥植木鉢を保護する老人の計6人なのだが、もやしを含めた5人はちゃんと描かれているのに、小鳥の姿がどこにもないのだ。

謎を解く手がかりになりそうなものは二つ。
一つ目は、語り手の表記が、

出席者は
植木鉢と_小鳥と
もやしとコケカと
少年と植木鉢を
保護する老人の
六人だった

となっていて、何故か「小鳥」の前にだけ1文字分の空白があること。

二つ目の手がかりは、会合の様子を描いた場面で、植木鉢が単独で2コマも描かれていること。つまり、「小鳥」の文字と、2コマ目の植木鉢は、ナニカが差し替えられた結果のように見えて仕方がないのだ。で、さっき、後ろ前に着ていた服を着直していてひらめいた。「コジキ?」と。昔の漫画の表現(セリフや画)が差し替えられる一番のものは、所謂「差別用語・差別表現」で、「コジキ」とか「ドカタ」とか「キチガイ」というのは、真っ先に「抹殺」されてきたわけだけど(今はまた、そんな表面的なことに細かくヒステリックに反応するのも、逆に精神的後進性を自白しているみたいだよね、という空気にもなってきているけど)、「コジキ」なら、この「ユートピア」集会の出席者にふさわしいし、2文字の「小鳥」の前に一文字分の空白があるのも、そこに元々3文字の「コジキ」が書かれていたためだと考えたら、オサマリがいい。

まあ、「コジキ」はともかく、元々はナニカベツノモノが、書かれ、描かれていたのはマチガイないような気がする。もしかしたら、京極夏彦が「作り上げた」水木しげる全集にはあっさり「正解」が出ているのかもしれない。

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