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アフリカ密猟危機と日本

今回は日本国内のペット産業から離れ、世界中で起きている密猟の中でもアフリカに、象牙にクローズアップしてお話していこうと思います。

今日世界の野生哺乳類数は全体の哺乳類数のわずか4%、このままでは2026年には野生哺乳類は絶滅してしまうと言われています。生息地の減少や今回のテーマ「密猟」も大きな要因とされています。

密猟者に狙われるアフリカゾウ

アフリカゾウは世界で最も密猟されている哺乳類の一種です。歴史的に見ても象牙には継続的な需要があり、その需要こそがゾウの密猟の主要因となっています。

アフリカゾウはサハラ砂漠より南のアフリカ37カ国に生息していますが、1970年代から80年代、そして2006年以降に横行した密猟によって1979年には推定134万頭と言われていた個体数は、37年間で約31%も減少。過去100年で見ると1000万頭から今の頭数へ減少していると推定されています。
そして現在では年間2万頭ものアフリカゾウが密猟の犠牲になっているというのです。

1977年から1992年に起きたアフリカ モザンビークの内戦では、両陣営の兵士が戦費を集めるために象牙を求めアフリカゾウを大量に虐殺しました。現ゴロンゴーザ国立公園ではこの内戦で9割のアフリカゾウが殺されたと言われています。
そして2006年以降に急増した密猟の要因については、中国をはじめとするアジア諸国の経済成長、富裕層の増加があげられます。アクセサリーや置き物といった象牙細工をステータスとして求めるようになり需要が急増したのです。

密猟の方法は、銃を使って仕留める場合や「くくり罠」と呼ばれるワイヤーで出来た罠を使う方法もあります。このくくり罠は自転車の部品などでも簡単に作ることができるというので驚きです。アフリカではこの罠のせいで本来狙われていた動物のみでなくさまざまな野生動物が犠牲となっています。
一度罠に引っかかってしまった場合、後退すればいいのですが動物はパニックに陥り前へ前へ逃れようとします。そうするとこのワイヤーはどんどんキツく絞まっていき、動物の肉をえぐってしまうほどになります。
ここでは、その傷口などの写真を載せるのは控えますが、すごく痛々しく目を伏せたくなるものです。この様な仕打ちを同じ人間が行なっているのです。

先ほど、密猟を引き起こす需要について中国をはじめとするアジア諸国の経済成長が関係していると言いました。しかしもし、この残虐な密猟の責任の多くが私たち日本人にあるとしたら、皆さんはどう思いますか?

日本と密猟

ワシントンD.C.にある環境調査エージェンシーEIAによると、日本は1970年以降に少なくとも26万2500頭分の象牙を消費してきたと言います。日本の象牙ブームは1970、80年代と壊滅的な密猟を煽ってきました。

そうです。冒頭でお話したモザンビークの内戦でのゾウの大量虐殺にも繋がってくるのです。
戦費を求めた両陣営は日本を含むアジアの象牙市場に目をつけていました。私たち日本人が生み出した需要はゾウの大量虐殺だけでなく、象牙によって資金を得た組織の戦闘にも加担していたことになります。目を逸らしたくなる事実でしょう。

日本と同じく象牙消費国トップだった中国は、2018年1月に国内の象牙市場の閉鎖を行い世界から大きな評価を得ています。閉鎖前には中国国内に約170ヶ所の象牙販売店があったそうですが、日本には現在8200もの販売店、300の製造業者、500の卸業者が存在していると言われています。

1990年代からワシントン条約で象牙の「国際取引」は禁止されていますが、日本各地の観光名所では外国人への販売もされています。実際、2011年〜2016年の5年間で日本から海外へ持ち出そうとし没収された象牙は2.4トンにのぼります。
どんなに世界的に厳しい規制を行ったとしても、日本のような合法的な取引市場が無くならない限りそこは違法な取引の隠れ蓑とされてしまうのは容易に想像できます。

日本では様々な用途で象牙が利用されてきました。着物を着る際に身につける根付や、タバコのパイプ、そしていま一番身近にあるのが印鑑ではないでしょうか?しかしこれら全て、「象牙でなければならない理由」を説明できる人はいるのでしょうか。

1992年 ワシントン条約が締結され、その後象牙は闇で取引されています。もしこれから私たちが新しく象牙細工を購入するとなった時、私たちの手元にくるそのものは残虐に殺されてしまった命かもしれません。
そしてその命を手に入れるために支払ったお金は、遠い国で暮らす誰かの家や命を奪う兵器へと姿を変えているかもしれないのです。

保護活動団体 Down to the Wire

今回このお話をシェアするにあたり、アフリカで密猟の危機に瀕している野生動物の保護に尽力している団体とやりとりをしていました。
Down to the Wire という、回収したくくり罠からアクセサリーを製作、販売しその売り上げを保護 治療費として当てている団体です。
何年か前にもやりとりをしていて、私も個人的に購入しようとしたのですが日本が購入可能エリアになっていませんでした。
密猟の責任の多くがある日本でこそ、このアクセサリーを、密猟の実態を知ってもらいたい。そう思い、近日日本で代理販売を行うことになりました。

この大きな意味を持つアクセサリーが多くの人の目につき、たくさんの人が世界の裏側で起きている遠いように思える問題と自分の繋がりに気づくことができますように。

知る人が増えることでまた一歩。明るい世界へと近づくのだと思います。

Down to the Wire インスタグラムより

Down to the Wire Instagram

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