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春はアゲポヨ(修羅と別れと)


春である。


紛れもなく春が来た。


ムーミン谷では、

きっとレモネードでお祝いをしているだろう。


春です。

春が来ました。

なんとなく気がついていたが

今朝の出社時に確信した。


「春と修羅を読むなら今日だ」

と思いながら会社のビルへ入って行った。




私は宮沢賢治が好きだ。

宮沢賢治の詩の中では

「春と修羅」「永訣の朝」が大好きだ。

読んでいて心が苦しくなる。

それでも大好きだ。



数年前に、

「ああ、今、これこそが
春と修羅のような日だ」

と思った事がある。


私は春生まれで、花が好きで

基本的に春が大好きなのだが

春は何故かどうしようもなく苦しくて

寂しくも思ってしまう。


そんな日が突然訪れた。


「これこそが修羅なのか」


と、賢治の詩を思い出しながら

「また今年も読もう」と

インターネットで春と修羅の文を探すと


なんと、まさに100年前のその日に

宮沢賢治が春と修羅を書いていたと知った。



「この日の私こそが一つの修羅で、きっと間違いないのだ」


と嬉しく思ったのを覚えている。



宮沢賢治は、生きるのが苦しかったのではないかと

ここ数年で思うようになった。


きっと彼は苦しかった

あんなに細やかな心を持って

世界を知り過ぎて

苦しかったと思う。



でもそれでいて、

世界の美しさを誰より知っていたと思う。


石や、自然、天体

世界の全てを宮沢賢治は愛していた。


太田光が、好きな本に銀河鉄道の夜を挙げていて


「これを読むと、全ての生き物が生きている事を肯定されている気持ちになる」

というような事を言っていた。


賢治は本当にそのように思っていたと思う。




今年も春が来た。


嬉しくて暖かくて、寂しい。




どうしようもない苦しさは、今年はないけれど


春にしかない寂しさを

また今年も噛み締めている。




やっと見つけたと思っていた

歯医者の担当が変わる。


退職して独立するらしい。


かなり経験と技術がありそうなのに

どうして開業しないのかな?

と思っていたから

それ自体は不思議ではないのだけれど


思っていたより早かった。



教えられた時には驚いて

「えー、どうすればいいの?!」と思い


「えー、どうすればいいの?!」と言った。


私の治療は、
まだこの歯医者で続ける必要がある

それは分かっているし

どうしようもないのだが


24時間が経過して

かなり憂鬱を抱え始めた。



自分は意外と変化に弱いのかもしれない、

と思いながら

今までの過去を振り返ってみると

確かに昔からこんな風であったと思い出した


私は完全に「人に着いていく」タイプで

昔から職場で上司が変わる事も苦手だった。

新しく私の上司になる人は

「あの子、俺で大丈夫なのか」

と心配していたと後から聞いた。


それでもその新しい上司とは

結果的に大親友のようになり

年齢も離れているのに

お互いの考え方が似過ぎていて

いつも驚いた。

職場で何かがあると

200人以上いるオフィスで

なんの役職もない私に真っ先に言いに来た

私の意見を聞いて

「やっぱそうだよな?!」

と言って去って行った。


彼は私と話しているようで

私の中の彼と会話をしていたのだと思う。


衝突する時もまるで鏡のようだった。

お互いに「お前は何様なんだ」と

「誰に向かって言っているんだ」言い合った。

性格が本当によく似ていた。



彼との思い出は宝物のように思っているが


「またその時みたいになるよ♪」


と、簡単に楽観的になれない。


やはり担当医が変わるの事に抵抗がある。



私は私生活では

誰から見てもお喋りな人間と思われているが


1人で街にいると、

外国人に間違われるくらい何も話さない。


よっぽどコミュニケーションが円滑でないのか

声が小さいからか

積極的に会話をしようとしないからか


年に何度か、外国人に間違われている。


そうなると、間違われたまま

英語で会話をしてその場をやり過ごす。


そんな私は、次の担当医と

殆ど会話をせずに通い続ける事になるのだろう



とても憂鬱である。


「もっと説明してほしい」と

たぶん私は言えないし

「嫌だな」と思っても

言わないだろうと思う。


ただずっと、

「嫌だな〜」と思いながら


通院する事になりそうなのだ。



なんというか、我ながら気難し過ぎる。


他の患者ってこんなに面倒くさくないと思う


勘違いされそうだが

基本的に今の歯医者は気に入っている。


まず院内がかなり清潔であるし

何より受付の女性陣の対応が良い。

こんなに受付の対応が良い歯医者は初めて見た。


というか、病院全般。


今まで行ってきたどの医療系の受付と比較しても

今の歯医者はダントツで対応が良い。


何が良いのか上手く言えないが


「少しもこちらが嫌な気持ちにならない」

受け答えをしてくれる。



あれはマインドの問題だと思う。

働く上でのマインドが素晴らしいのだと思う。


少しでも面倒くさがったり

雑に思う思考があると

患者側には伝わるものである。


だから

「この歯医者ずっと通おう〜」


と思い始めていたのだが


まさかの担当医、退職。



そうなると全てが翻る。



歯医者選びの基準って、人それぞれなんだろうか。


私は「頭」と「心」が何より大事なので

クレーム対応が素晴らしくて
説明をちゃんとしてくれる

今の担当医が良かったのだ。


素人には歯医者の技術なんて判断出来ないのだから

「納得感」とか
「不安を拭ってくれる」に

結局は行き着くんじゃないだろうか。

患者のニーズって。

と言うわけで、


「私のニーズを満たす歯医者」

だったはずの場所が


次から行く時は


「ニーズを満たさない歯医者」


になってしまうことになる。


たった1日で
まさかこんなに状況が変わるとは。

こんな不安、

まるで学生時代の新学期のようである。


うまくやっていけるだろうか。


というより

次の担当医の方が私に怯えている可能性がある


何故なら私が過去にクレーマーとして

院内で認知されてしまったからだ。

院内どころか、系列院全てで。


次の担当医は、今の担当になる前

少し治療してもらっていたが

当時ほとんど会話した記憶はなく

信頼関係はゼロである。


今年1年くらいは今の歯医者に

通う必要がありそうなのに

どうなってしまうのか。


嗚呼、上手くやっていけるだろうか。



こんな憂い、あまりにも、春。

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