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0417_私といふもの

 ありのままの自分を愛しなさいと言うけれど、ありのままなのかどうかさえもう分からなければどうしたら良いのかしら。

 例えば、赤色が好きだけど、ちょっと変わった人間だと思われたいから(?)紫色を好きになろう。

 本当は漫画ばかりを読んでいるけれど、ちょっと変わった人間だと思われたいから(?)、哲学書を読もう。

 本当は可愛い女の子になりたいけれど、ちょっと変わった人間だと思われたいから(?)、髪の毛をベリーベリーショートにして、キリッと眉毛を整え、格好良い風貌を目指そう。格好いいのかと思いきや、真っ赤な赤いリップを塗ってキレイな感じも混ぜておく。かっこよくてキレイなだけじゃなくて、ちょっとした気味の悪さなんかもつけたいから耳には大きなヘビのピアスをつけよう。あの子が開けてくれてた軟骨ピアス。

 もう一体、ありのままの私がどれで何なのか分からなくなってしまって、果たしてどれくらいが経つかしら。

 ありのままがわからなくても少なくとも『今ここにいる私』は紛れもない『このまま』の私なので、これを愛でてあげよう。
 格好つけたい私も、変わって見られたい私も、全部ぜんぶ私だから。

 どんな理由であっても私がそうしたいと思うなら、それがきっと正しい。

 だから、私はヘビのピアスをつけて、真っ赤なリップを塗るし、短すぎる髪の毛をウェットなワックスでクシャクシャにする。小さな背丈を気にせずに、シャンと背筋を伸ばして前を向く。

 その実、何にもなくて立派な私。
 私にとって、全てが正しい。
 ありのままのこのまま。
 私といふもの。

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