あにぃ@掌編小説家もどき

小説家を目指して言葉を紡ぐ。 2024.1 毎日18時に1000文字程度の掌編純文学…

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小説家を目指して言葉を紡ぐ。 2024.1 毎日18時に1000文字程度の掌編純文学更新。「18時からの純文学」 過去作品...... ★『365日の記念日小説』(2020.10~2021.9) ★短編少々... 一人で何人もの毎日を生きていきたい。

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超掌編小説始めます@あにぃ

はじめまして、もしくはお久しぶりです。 「あにぃ」と申します。 イイ歳をした小説家志望です。 ★2024年1月1日より、超掌編小説の毎日18時投稿を開始致します。 どうぞ末永くよろしくお願い致します。 ------------------------------------------------------------ 以下、私の略歴と自己紹介です。 中学生で小説家に憧れ 高校生でがっつり反抗期に入り 短大生で不器用に遊び 社会人になって大人になることを知り

    • 0426_不意な愛

       私の胸の中に、小さな赤子がいる。母親に聞けば生後3ヶ月らしい。 「ぃぎゃあぃぎゃあぃぎゃあ」  生後3ヶ月の彼は力強く、顔を真っ赤にして泣き叫んでいる。何を、そんなに、怒っているのだろうか。私は思わず頬が緩む。 「本当にすみません」  母親はこっちを見ては手元の書類を見て、ペンを持つ手を動かしたり止めたりしている。 「気にしないでください。ゆっくりどうぞ」  私は言い、それは本心であった。胸にいる小さな小さな赤子はとても熱い個体である。熱い塊を私は抱き、発する熱

      • 0425_骨を折る

         ポキリ、と小気味良い音を立てたのは私の右足だった。  なんということはない、細い、けれどそれなりに固い木の枝を踏んだだけである。骨ではない。それだけ、ただそれだけなのに、私の目が覚めた。  私、本当は何がしたかったんだっけ。  視線の行き先は変えず、私はまっすぐにそう思う。ああ、そうだ。小学校の先生になりたかったのだ。子供が好きで、例えば保育園や幼稚園でも良い。時には厳しいことも言うけれど、それぞれの親と同じように、私もその子どもたちを愛してみたかった。  今の私の

        • 0424_私の五月

           雨だった。  桜の木も、すでに花びらよりも緑の葉の方が多い。昨日今日のこの長雨で花びらは散り、緑の葉はより濃く艷やかになるのだろう。 「五月になったらね」  彼はうっすらと笑う。それは確かに春の暖かな微笑みではなく、どこか時々の冷たさがある。私は彼に詰め寄った。 「そんなの、全然待てないよ」  大きな声を密やかに、彼に言う。彼は私の耳元にそのキレイな唇を寄せて答える。 「今、こうして君のために時間をとっているじゃない」  熱い吐息が私の耳たぶを揺らし、それは首筋

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          0423_冨貴寄

           お菓子のような夢だった。  金平糖とクッキー、時々キャンディも入っている。でも、その一つひとつが私にとっての1番だった。絵本作家、先生、カウンセラー、その全て、子供の頃に夢見た夢だった。私は全部のお菓子を手に入れたのだ。 「冨貴寄みたいやね」  一恵が言った。 「なんやの、それ」 「よう売ってるやないの、デパートやなんかで」  スマホをすいすいっと操作して、検索した画像を見せてくれた。私の言うそのまま、金平糖とクッキー、キャンディがキレイな『かんかん』の中に入って

          0422_普通のこと

          「もっとこう凄い感じだと思ってた」  私が言うと、向井川さんは笑った。あの頃の私と全く一緒じゃないかとも言った。 「夢が叶ったら、もっとこう、ぶわぁぁぁって凄い高揚感に包まれて、最終ステージに辿り着いたのだ、勇者よ、的な感覚があるもんだと思ってたんですけど」  私は身振り手振りでこの気持ちを伝えるが、向井川さんは笑ったまま。散々、ヒィヒィ笑ったあとで、良かったねと言った。  私は念願だったケーキ屋を開店した。小さな頃から思い描いた······わけではない。親の店をいず

          0421_折って破って

           15cm四方の緑色のそれを1枚取り出した。長方形になるよう半分に折り、また開く。向きを変えて折り、また開く。十字の折り跡ができ、私は安心する。  折った場所に、きちんと跡ができることに安心したのだ。  つけた折り目をもう一度爪先で押してスライドさせる。それを広げ、折り目を中心にして左右に均等に力を入れ、ゆっくりと折り目の最初を破り始める。びりビリリ、小気味よい紙の破れる音がする。私は少し嬉しくなる。  破ると、長方形が2枚になった。それをまた半分にして、同じように折り目を強

          0420_春が散り、花が咲く

           彼女はショートカットで黒色、艶があり、くしゃっと癖付けているのか妙に似合っている。150㎝と少しくらいだろうか、身長は高くなく、小さな顔をしている。大きくない目と、小さくて高くはない鼻、薄目の唇には赤いリップが塗られていた。そして耳には大きめのヤモリのピアスが2つ。両耳にではなく、片耳、左側だけ2匹いる。一度だけそのヤモリの柄が見える距離にまで近づくことができ、見ると濃紺にオーロラのような輝きがあり、とてもきれいなものだった。  仮に彼女を『ヤモリの人』とする。  私はヤ

          0420_春が散り、花が咲く

          0419_空が咲く

          「こう、パアッと目の前がね、広く大きくなったんだよ。急に、急にだよ。まるで夜から朝にころっと変わったみたいにして、視界が、世界が、空が」  昔馴染みの友人Rに、珍しく朝も早くから呼び出されたのでいったいなんだと思ったら、こんなことだった。彼は確かに、テンションが高いこともあれば急に暗くなったりして、落ち着かないことがよくある。それは昔からのことでことさら驚きはしない。けれど、ここ数年、3年くらいだろうか、塞ぎ混むことが多いように見ていた。それは仕事なのかプライベートなのか分

          0418_美しい蜘蛛と石

           庭で、足元にキラリと光るなにかを見つけたので手を伸ばしたら、指に蜘蛛の糸が絡まった。やや粘度のあるそれは一瞬触れただけなのに、ぺとりと私の人差し指に絡み付いた。  どこから?  私の足元で糸が絡むと言うことは、地面からわずか10㎝や15㎝の位置であり、その付近に木や例えば枝のような糸の掛かるものも見当たらない。砂利があるだけだ。  ではなぜ?  糸を辿ってみることにした。私の指についた糸をそのままに、この糸の行き先とどこから来たものなのかをまずは目で追う。行き先は簡

          0417_私といふもの

           ありのままの自分を愛しなさいと言うけれど、ありのままなのかどうかさえもう分からなければどうしたら良いのかしら。  例えば、赤色が好きだけど、ちょっと変わった人間だと思われたいから(?)紫色を好きになろう。  本当は漫画ばかりを読んでいるけれど、ちょっと変わった人間だと思われたいから(?)、哲学書を読もう。  本当は可愛い女の子になりたいけれど、ちょっと変わった人間だと思われたいから(?)、髪の毛をベリーベリーショートにして、キリッと眉毛を整え、格好良い風貌を目指そう。

          0416_愛おしい日々

           観葉植物と言う名の私のベッドに大きな指が近づいてくる。それは『親指』と言うのか『人差し指』と言うのかそんな名前だった。ベッドに付いた私の排泄物を白い紙を巻いたそれらの指で拭き取り、そのついでに背中を撫でられたりする。ざらり、と感じる。 「お、起きてるね。おはよう。それと、ただいま」  私の飼い主のセイジはいつも声をかけてくれる。朝は静かに、夜は明るく、夜行性の私に配慮してくれているのだ。優しいと思う。けれど、背中をふいに撫でられるものだから、私は驚いていつも逃げてしまう

          0415_生きる実感

           21時を過ぎていた。  日中には見ることができない、21階のオフィスから見るライトアップされた夜景は悲しいかな、とても綺麗。オフィスには21人が残っていた(多分、数えていないけど、そんな感じ)。 「なんだろう、なんだろう定時ってなんだろう」  向かいの席の近藤さんがぽつりとつぶやいた。 「仕事をするのに定められた時間ね。本来、今は仕事をしない時間なはずだな」  近藤さんの席のとなりの山口さんが言う。お返しとばかりにそのまま続けた。 「なんだろう、なんだろう、残業っ

          0414_目標達成

          「仕事の目標?将来について?」  私をよく知る(と、私は思っているけれどその実わからない)少し年上の同僚、佐江に私は将来を相談している。まもなく40歳を迎える私。ほぼ同じタイミングで注文したカフェオレとアイスティーが運ばれた。 「じゃあ佐江さんはもう明確にキャリアビジョン決めてるってこと?」 「どうなるかはわからないけど、こうなりたいくらいは考えているし、なれなくてもまあそれに近しいところで仕事したいと思っているよ」 「そっかぁ、すごいね」  私が言うと、じっと目を合わ

          0413_自然に

           朝に入れたカフェオレは冷たくなっている。当たり前だけれど、それを入れた朝ではないから、時間が経って冷たくなったのだ。私はそれをそのまま、一口飲んでみた。冷たいなぁと思いながら、いつもの癖なのか、カップに手を添える。手を、暖めようとしている。暖まらないことにすぐに気づいて、添えた手を外した。  私は、私のなかにいくつかの決まりきった私がいることに気づき、なんだか妙に気持ちが悪く感じた。  カップの中のカフェオレを捨て、新たに淹れ直すことにする。カプセルをセットして淹れるのだ

          0412_陽射し

           その時、私の視界は開けていた。  夕方だと言うのに、明るい陽射しが燦々と私に降り注ぐように、全てが輝いて見えた。  足元を歩くアリが笑っている。  目の前をぶぅんと飛ぶハエも声を出して笑った。  それに続く蚊もケラケラと腹を抱えている。  皆、私を迎えてくれているようだった。  それを私はとてつもなく喜ぶのだった。  陽射しが私を暖め、つい、ほろりと涙した。  その瞬間、私の中の不明瞭だった全てが、はっきりと姿形を表すようにして私の頭の中に浮かんだ。  すべて分かっ