0412_陽射し
その時、私の視界は開けていた。
夕方だと言うのに、明るい陽射しが燦々と私に降り注ぐように、全てが輝いて見えた。
足元を歩くアリが笑っている。
目の前をぶぅんと飛ぶハエも声を出して笑った。
それに続く蚊もケラケラと腹を抱えている。
皆、私を迎えてくれているようだった。
それを私はとてつもなく喜ぶのだった。
陽射しが私を暖め、つい、ほろりと涙した。
その瞬間、私の中の不明瞭だった全てが、はっきりと姿形を表すようにして私の頭の中に浮かんだ。
すべて分かっているから、何も問題などないのだと言うように。何も案ずることなど無いのだと言うように。
私は、はっきりと、もう大丈夫なのだと思えた。それは明確な何かがあったわけではない。例えば何かを改善して、何かを変えてそうなったと言うわけでもない。けれど確実に安心できた。
今までのその全てが必要な1つだったと言うように、きれいにくっきりと『大丈夫』に思えたのだ。
やがて、陽射しが止み、私の視界には時刻通りの暗がりが広がる。
それでも私は笑っている。
笑って、その暗がりを進む。
また次の陽射しに向かって。
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