DAWボイチェンを完全無線化するためのメモ
ここで実施したこと
DAWボイチェン(=オーディオインターフェイス入出力)を無線化する
遅延の少ないループバックを聞きつつ完全に無線化
出力音質はそれなり
これをした動機
わたしは現在Valve Indexとソフトウェア型のボイスチェンジャー(Voicemod)を使用してVRChatを遊んでいます。しかし、Indexは販売からすでに5年が経過しようとしており、もう新品の供給どころか修理も難しい状況です。そのため、いつIndexが壊れてもいいように移行の準備を進める必要がありました。
また、ボイスチェンジャーも代替案を考えておく必要がありました。Voicemodはオーディオインターフェイスなどのハードウェアを準備することなく手軽にボイチェンを使える便利なソフトウェアです。また、Indexとの組みあわせだとループバックの遅延がとても少なく、ストレスなく使うことができました。しかし、予告のない仕様変更で声質やピッチが変更されることがあったりと、「声の同一性」を重視したいわたしがVRChatで使いつづけるには致命的な欠陥がありました(ちなみにどう解決したかというと、出す声のほうを筋肉で変えていく方法でやっています💪)。
ボイチェンの代替案としてはDAWを用いたボイチェンですが、通常のHMDの移行のように、Quest3付属のマイクとスピーカーでやろうとするとループバック遅延がひどく(0.5sec程度か)、とてもではないが使用に耐えられませんでした。遅延のないループバックを構築するにはASIOと呼ばれるドライバ規格に沿った構築をする必要があります。
そこで今回はHMDとボイスチェンジャーの両方について、
遅延の少ないループバック環境を構築しつつ
Quest3の無線PCVRの利点を損なわない無線入出力環境の構築
をしてみました。
ハードウェア側環境構築
配線は次の通りです。
使用機材は次の通り。
オーディオインターフェイス: Focusrite Scarlett 2i2
無線マイク: SHURE BLX14 (無線親子機), SHURE SM31 (無線用マイク)
Bluetoothトランスミッタ: SENNHEISER BT T100
Bluetoothイヤホン: SENNHEISER IE100 PRO Wireless
このうち、ループバック出力の遅延で問題になるのは出力側です。ASIOドライバで入出力をする制約から、出力はオーディオインターフェイス側から出すことになります。ここから無線出力に変換すればいいわけですが、ライン入力に対応しているワイヤレスヘッドホン/イヤホンはそう多くありません。一方、Bluetoothトランスミッタでライン入力に対応しているものはそこそこありますが、一般にBluetoothは遅延があると言われるため、そのまま使うわけにはいきません。
しかし、Bluetoothと一口に言ってもいろいろな処理方式があり、その中でも遅延の軽減に注目したものがあります。今回使用した機材では、Bluetoothの送信・受信側のどちらも、低遅延を売りにしたaptX LLコーデックを使用することができ、遅延は40ms程度と許容できる範囲にまで抑えることができます。送受信のいずれも対応した機材を使用しなければならないことがネックで、イヤホンだとほとんど選択肢がありません。今回のはどちらもゼンハイザー製なので、相性などを気にすることなく使うことができていい感じです。
導入については、オーディオインターフェイスのみソフトウェアをインストールしただけで、あとは差したりペアリングしたりしただけで使っていますので割愛します。
他のソリューションとしては、ヤマハYH-WL500などのBluetooth以外のワイヤレスヘッドホンを使用するという手もあります。トランスミッタつきのやつですね(未検証)。
ソフトウェア側環境構築
ソフトウェア側の遅延対策は特に施していないので、ほとんどの人と変わらない構成かと思いますが、いちおう示しておきます。
Elementを使用してVSTプラグインを使用しています。入力→RX 8 Denoise(雑音軽減)→Little AlterBoy(ボイスチェンジャー)→ループバック出力とSyncroom(VRChat用出力)という流れです。
おわりに
テストをしていろいろな人に聞いてもらいましたが、特に遜色なく聞いてもらえているようで安心しました。マイク位置がIndexのものと全く異なるので、音量調整だけは今後の課題です。
今回は出力無線化に焦点を当てていたので、入力の質についてはあまり気にしていませんでした(SHUREだしいいでしょうと思っていた)が、何人かから「発声時に息の音が少し入って色っぽく聞こえる」という副産物も得たので活用していきたいところですね(何に?)。多言語交流者的観点から言えば、有気音と無気音を区別してもらいやすくなった、というわけでこれはありがたいことです。
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