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片隅のドラマ

駅のトイレには、ドラマが眠っていることがある。と思う。
乱雑に丸められた一見ゴミのかたまりのようなものは、たぶん誰かが残したジンセイの痕跡だ。

銀座線からの乗り換えで立ち寄った新橋でトイレに立ち寄る。
しばらく並んで入った個室の片隅を見て、ぎょっとする。
赤いサンダルとよれよれになったチュールスカートが丸まっていたからだ。
下半身の服だけ残して、連れ去られてしまった脱け殻みたいだった。
まさか動いたりしないよねぇ…なんて考えながら用を足す。

手洗い場には、乱雑に置かれたカラーコンタクトのパッケージ。
白粉の粉も点々と散らばっている。
あぁ、きっと今日も誰かがキレイになるためにここで鏡に向かったんだろう。

さっきのお洋服の主は、眠たいからテキトーな服で会社に来たけど今日が大事な合コンだったことに気がついて、あそこで着替えたのかもしれないな。
靴擦れしてばっかりのサンダルもついでに捨てちゃえってポイと放り出したのかもしれない。
そして最後に手早くお化粧を直して、夜のコリドー街に繰り出したのだ。
合コン、うまくいったかな…。

あるのかないのかわからないことをふわふわと考えながら、私は床に散らばった物語を置き去りにして帰った。

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