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居場所をめぐる冒険|『ぐるんぱのようちえん』を読んで


レゴとダイヤブロックははまらない

 子供の頃レゴブロックで遊んでいるとたまにどうしてもハマらないパーツがありました。よく見るとそれは、レゴブロックとよく似たダイヤブロックだったのです。レゴブロックはデンマーク製なのに対してこちらは日本製。微妙にはめこむ凸凹の大きさが違うので、無理にグイグイおしてもくっつかない。なのでレゴブロックとダイヤブロックという、違う規格のものは一緒には遊べないんですよね。
 このように合わない場所でいくらがんばっても、合わないものは合わないというのは学校でも同じなのかなと思うのです。
 どうしても何らかの理由で学校に行けなくなる事はあると思います。それはいじめかもしれないし、パワハラかもしれないし、人間関係がうまくいかないのかもしれない。特に学校は同調圧力が強いから、それに合わせられない子どもだっているのです。合わない場所に無理に戻ろうとして、吐き気や頭痛などで体調が悪くなる方が心配。それより自分に合った違う居場所を探す方に考えを切り替える方がいいと思います。自分の子どもが不登校だった時は、この切り替えに時間がかかり、在籍校以外の場所に目を向けることがなかなかできませんでした。大人だって会社が合わなければあれば転職をしたり、結婚していてもひどい相手なら離婚します。そうやって、自分に合う場所を探すことが生きていくということでもあるのです。

ぐるんぱは不登校の背中を押してくれる

 先日「ぐるんぱのようちえん」という絵本を読んでいたら、実はこの本はそんな不登校の子供たちの背中を押してくれるような絵本だなと思いました。
 ぐるんぱは、一人で生きてきてどろんこでくさいから、仲間から外に出して働かせようと言われます。ひとり寂しく生きてきたのに、仲間に入れてあげないというのがそもそもひどい!そこからぐるんぱの苦労は始まります。ビスケット屋、お皿作り、靴屋、ピアノ工場、車屋、どこに行っても「もうけっこう」とクビになってしまう。これは本当に心が折れますよね。大人でもクビや転職が続いたら落ち込みます。(僕も何度も転職したのでよくわかります)だけどとうとうぐるんぱを必要としてくれる場所ができるのです。幼稚園では子ども達の人気者になりみんなから感謝されます。さらに今まで仕事で失敗して作ってきた、ビスケットも、お皿も、靴もピアノも車も、全部子ども達と遊ぶのに役にたったのです!
 ここで大事なのは、ぐるんぱはどうにかしぶとく外に外に向かったという事です。
 学校が不登校になるのはしょうがない。だけど僕が感じるのは一人でいる事が人を追い詰める。一つの場所にしかいないと、誰でも煮詰まってしまいます。不登校で親としか顔を合わせていないと、ただただストレスが溜まりぐるぐるとマイナスの考えが頭の中をめぐります。どんなにオンラインでゲームをやったりネット動画を見ても、直接人に会うことにはかないません。なぜなら人に会って話す方が、表情や声や身振り手振りなど多くの情報量をもらえるし、相手がいてはじめて自分の心を感じることができるから。自分が認められていると実感できるのはフォロワー数やいいねの数だけではないのです。お前っていいやつだよなとか、一緒にいて楽しい、そういう実際の一言の方が、よっぽど自分の存在を実感できるのです。なんならそんな言葉は無くても会った時の表情だけで人間は関係の深さを感じているものです。自分の居場所があるそれを実感するのが大事なんですよね。

昭和的な最後までやり抜くは、もう古い

 部活を辞める、学校を辞める、仕事を辞める。辞めることは日本人にとってネガティブな行動です。石の上にも3年や終身雇用だとか、一度入ったら苦しくても最後までやり切るというのが美徳としてあるから。
 僕も昭和の生まれなのでそういう最後までやり抜くという考えに囚われていました。でも合わない場所は勇気を持って辞めていいと考えが変わりました。ぐるんぱのように自分の居心地のいい場所を見つけて、どんどん場所を変えるのは悪いことではないのです。
 学校でみんなと合わなかったとしても学校での価値観は独特で、社会とはまた違った常識で動いています。だから不登校でもまったく自分を責める事はない。ぐるんぱのように失敗は無駄にならないし、必ずあなたを必要としてくれる人はいます。自分の次の居場所も勇気を持って探して欲しい。レゴとダイヤブロックを無理やり押し付けてもハマらないし、一緒には遊べないのです。ぐるんぱが最後には自分なりの居場所を見つけたように、きっと自分がハマる凸凹が見つかるはずです。

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