研修医がロンドンに大学院留学して解脱するまで Ep.5 大学院オリエンテーション

BRP取得

BRP( Biometric Residence Permit: 滞在許可証となるカード型のビザ)はイギリス当局からスポンサーである大学に向けて配布されている。なので留学生は入国次第、大学で本人確認をしてBRPを受け取る必要がある。私は受け取りに予約が必要とメールで知らされていたので、出国前に予約を取っておいた。事前に入っていた学年のWattsAppグループで、時間外でも取りに行けるとの噂も流れてきたが、私は指定した時間に到着した。しかし、到着するとBRP受け取り会場は留学生でとても混雑しており、長蛇の列になっていた。UCLは学生の約55パーセントに当たる18000人が留学生なので、分散されているとはいえ、凄い数の学生が会場集まっていたのだろう。この日、私は大学のオペレーションが悪い方向に緩いことを察した。

オリエンテーション期間中のメインキャンパス

顔合わせ

オリエンテーションの前日に、有志の学生で非公式の顔合わせが行われた。私は時間を持て余していたので、待ち合わせ場所であるQueen Squareに10分ほど早く着いた。

Queen Square

ロンドン中心部にほど近い(最寄り:Russel Square)この Queen Squareというブロックは、公園を中心に、さまざまな研究棟、講義室、付属病院などが周りを囲うように並んでいた。ほとんどの講義と実習はこの建物のどれかで行われる。 

https://maps.app.goo.gl/jhb9Ngzx21a8QcAw9


私より先に到着していたのは1人だけで、クマのような印象の体格の大きい白人男性だった。緊張しながら近づくと、拍子抜けするほど柔らかな話し方の、おおらかそうな人物だった。ギリシャ出身で学部では心理学を勉強していたという。ロンドンの気温に慣れないのか、まだ時期的には少し早いのに大きい黄色いダウンジャケットを着ていて、寒さに頬を赤めていた。この知り合い1号(以後、熊くん)は実年齢も精神的にも、すごく若いのではないかと推測した。たぶん22歳とかだっただろう。のちのち知ったが、テイラースウィフトの熱心なファンというとてもかわいい一面がある。

そのうち次々と人が集まり、10人ほどの輪になった。順番に、出身国と、学部で勉強した内容を発表していった。途中で人が加わっていくので、そのたびにやり直し、自己紹介を5周くらいしたかもしれない。コースの名前が臨床神経科学だったため、神経科学と医学・医科学系出身の人が多いと予測していたが、ふたを開けてみると。10人のうち5人程度は学部では心理学を、2~3人が生物・生命科学であり、医学部出身者は私1人のみだった。またBRP会場では大学全体の留学生が集まっており、中国韓国系とインド系の見た目学生が多い印象があったが、この10人のサンプルだと、イギリスのほか、ドイツ、スペイン、ポルトガルなどヨーロッパ圏からの留学生が多い印象だった。日本で初対面者が集まった時と同じくらいの気まずい空気があり、イギリスは日本と大きく文化が違わないような気がして、むしろ安心した。

オリエンテーション

会場はメインの大講義室であった。私のコースには大体100人前後の学生が在籍しているようだったが、学部内の他のMResコース(講義なしの修士コース)の人などを合わせておそらく150人程度が来ていた。
学部長のSelai先生が全体に挨拶し、学部や附属病院の概要やコースの歴史などを説明をしたのちに、皆が全体像を把握できるように学生のバックグラウンドの集計を取った。イギリスの学生が3割、ヨーロッパからの学生が3割程度、インドを含むアジアが3割、その他1割という印象だった。
ちなみにこのSelai先生は心理学出身の学者であり、このコースの心理学出身者の多さと何か関連があるかもしれない。
https://www.ucl.ac.uk/ion/study/education-team-contacts/dr-caroline-selai

メインの講義室は国立神経病院に併設されている

日本人はもちろん同じコースにはいなかったので、私は一人で一番前の列に座って聞いていた。白人グループにいきなり入っていくのも気が引けるが、国籍ごとに固まっているアジア人(中国、韓国等)グループに、見た目が似ているからと言ってお情けで入れてもらう気が起きないのは、日本人留学生あるあるだろう。

UCLのグローバル感、コースの学生の多様性

UCLの雰囲気はイギリスの大学というよりグローバル大学だった。学内の随所に”London's Global University"というロゴが掲げてあるように、大学も留学生の多さを誇りにしているのだろう。そのおかげか、留学生だからと言って特別に疎外感を感じることはなく、そのままの自分で過ごせるという居心地の良さを感じた。しかし早くイギリスでの生活に順応しようと思うと、標準にするべき”普通”が見えずらい環境ではあったかもしれない。
コースで私のような医学出身者は全体で5人程度だった。インドネシアから30代の医師が2人、日本からは私1人、インドから1人、ベトナムから1人、アフリカの国(失念した)から一人と、思った以上に少なかった。心理学出身者がとても多く、印象としては全体の4割くらいいたと思う。神経科学、生命科学、生物学出身者などもいた。これほど多様なバックグラウンドの人たちが、同じ授業を受けて一緒に進んでいけるのだろうかと疑問に思った。

次回 オリエンテーション期間に行った観光、出会った人々 (予定)


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