見出し画像

それは、誰に向けての言葉なんだろう?

 仲の良い後輩とランチをした。 
 彼とはもう5年位の付きあいで、たまに一緒に食事をして、近況報告をし合っている。
 出身地や環境も全く違うのに、なんとなく人生の価値観が似ていて、話していてとても楽しい。

 そんな彼が、一つ決断をした。
 具体的なことは書かないけれど、どうにも今までの彼の考えからは出てこないような決断だった。
 詳しく話を聞いても、やっぱりピンとこない。

「ほんとに、それでいいの?」と僕は尋ねた。
 
 彼はあれこれ理由を言っていたけど、掘り下げてみたら、結局「よくわからない」と言った。

 よくわからないのが人生だと思う。彼の本心からの決断なら応援したいと思う。
 ただ、僕からみると、その決断はあまり良いものには思えなかったし、納得できる理由もなかった。
 他人の人生にあれこれ言うのもどうかと思うけど、大切な後輩には、やっぱり言いたくなってしまう。

「なんでも出来るとしたら、何がしたいの?」
「それがしたいなら、何をするべきなんだろう?」
「それは、細かく分けるとどうなるんだろう?」
「いつまでに、それをやらなくちゃいけないんだろう?」
「じゃあ、今、何をすべきなんだろう?」

 喫茶店に入って、3時間くらい話した。
 その間に、彼はいろいろ移ろいでいた。
 彼の言葉を、言葉の裏にあるものまで見逃さないように、一生懸命捉えた。
 その捉えたものを彼自身が気づけるように、用心深く話した。
 
「わかりました。ちょっと、動いてみます」と彼は言った。

 お節介な気がしたけど、良かったと思った。


 
 後輩と別れて、ひとり駅へと向かう途中、頭の中で声が聞こえた。

「それで、お前は本当は何がしたいの?」

 僕が後輩に向けて言った言葉は、誰に向けての言葉だったんだろう。



 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?