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高校生起業家を輩出した中高一貫校の校長に聞いた、生徒との向き合い方

こんにちは。株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております!

前回のnoteでは、高校在学中に起業した猪原美羽さんにインタビューしました。今回は、猪原さんの出身校、そして私の母校でもある岩田学園中学校・高等学校児玉 洋司校長にお話をお伺いしました!

高校在学中に起業した猪原美羽さんの記事はこちら▼

岩田学園は、大分にある中高一貫校で、1900年から120年以上の歴史ある学校です。私の恩師でもある児玉校長に、長年生徒を見てきた先生の視点で、生徒の挑戦や思考の変化に迫ります!

学校らしくない学校を作ろう

大林:私が6年間お世話になった愛する母校である岩田学園。学校理念や児玉校長をはじめとした先生方の教えは、30歳となった今でも大切にしているものばかりです。そんな児玉校長に、改めて、岩田学園が大切にしている生徒との向き合い方をお話いただきたいです。

児玉校長:創立当初から変わらない学校の魂は、多様性を重んじる、ダイバーシティの考え方です。

ダイバーシティという言葉は広義ですが、学校現場に限定して捉えると、進路やキャリアは「大学に行く」「良い成績を取る」という単純なことではなく多様である、と解釈しています。

正解のない人生を歩んでいくには、医療分野に行きたい人、芸術の道を究めたい人、法曹界を目指す人、まだ興味のある分野が見つかっていない人など、いろんな人がいて、いろんな話をして、お互い刺激し合いながら、自分の道を見つけていくことが必要です。

岩田中学校1年生へメッセージを送る児玉校長

年代は変わりますが、大林くんが推進する複業も同じことだと思っています。複業という形で、色々なバックグラウンドを持つ人と関わり、興味関心が増えたり、新しい環境に刺激を受けて、転職という形で新しい道を見つけたりすることでしょう。

様々な想いを持つ生徒が集まり、それぞれがそれぞれの道を目指す。私は、そんな「学校らしくない学校」を作りたいと考えています。

岩田学園の校内をまわっている様子

学校現場は日常がすべて

大林:ありがとうございます。児玉校長が、生徒の皆さんの多様な未来を後押しするために大切にしていることや実際の取り組みを教えてください!

児玉校長:まず、ステージ1として、経験者の話に肌で触れてもらうことを大切にしています。大林くんにも学年集会で講演してもらったように、卒業生や専門家を招いて、教員以外の大人の声を直接生徒に届ける時間を設けています。

岩田学園講演会の様子

教員は、学校教育のプロではあるものの、起業やビジネスを経験したことがない人がほとんどです。もちろん、経験していないことが悪いわけではありませんが、実際に経験した方からのお話いただくからこその説得力があるでしょう。そのため、様々な分野の経験者から、成功事例はもちろん、挫折経験や後悔していることなどリアルなお話を聞き、肌で感じてもらいたいです。

しかし、これはあくまでステージ1。本題はここからです。

私は、学校現場は日常がすべてだと考えています。

例えば、とある講演で、「中学3年生のころ〇〇先輩にXXの話を聞いて、刺激を受けた」という体験も生徒にとって一生ものになります。しかし、講演会は年に1度や2度。講演自体の回数(機会)はもちろん、1講演で刺激を受ける生徒の数も限られてきます。

より多くの生徒にメッセージを届けるにはどうすればいいか。それは、日常で生徒と接する教員がその思考や知識を身につけていくことです。例えば、講演で聞いた話をかみ砕いて生徒に説明したり、自由な発想で生徒の思考の幅を広げていったりすることが挙げられます。講演などで生まれた1つの機会を、打ち上げ花火のように終わらせず、岩田学園が大切にする精神として伝え続けていくことが必要です。

正解を求めない

大林:私が在学していた頃から変わらず、児玉校長や先生方が真摯に生徒の皆さんと向き合っていることが伝わってきました。逆に、生徒の皆さんに大切にしてほしい考え方を是非、教えてください!

児玉校長:生徒の皆さんに身につけてほしい能力は自主性や自己解決力です。私は学校教育において、教員が手取り足取りすべてを教えるのではなく、生徒自身が思考し、実行してみることが大切だと考えています。

ネット社会となり情報に溢れる現代では、疑問に思ったことをネット検索にかけると、親切に答えを返してくれます。この影響からか、アクションを起こす前に、全ての正解を聞こうしてしまう傾向が見られます。

この現象が続くと、結局、挫折に脆くなり、挫折する前に妥協する方向へ進んでしまうんですね。

また、情報を基に、過度に未来予想図を描きすぎて、自分の限界を決めつけ
てしまう傾向があります
。色々なものが数値化される今、「安定している仕事はこれ」だという論争や、AIの台頭による「この仕事はなくなりそう」という予測などが飛び交います。生徒がその情報に触れ、素直に100%で信じてしまうことで、夢があっても、無理かもしれないという思い込みに繋がっているのではないでしょうか。

さらに現代は、今の自分にない知識や関心に出会う場面が少なくなっています。レコメンド機能が発達し、自分のスマートフォンには自分に関心のあるトピックスばかりが表示されます。限られた情報のインプットも可能性を狭めることに繋がります。

よく先生が古典を読め、というのも触れたことのない文化に触れてみるという点で非常に有用です。興味のある動画がおすすめ欄に流れるyoutubeを見るだけでなく、たまたまついていたテレビを見て感動することも時には大切だということです。

将来に正解を求めず、「私はこれを目指す」「私は将来こうなりたい」という目標や夢をお互いに語り合ってみるといいですね。

個性と規律

大林:当時を振り返ると、私の在籍していた23回生は、個性を大事にしてくれていたと感じます。一方、今は当時と比べて、規律が重要視されている世の中に変化したと感じています。時代が急速に変化する中、規律と個性をどう切り分けながら、生徒と向き合っているのですか?

児玉校長:まさに今、私も直面している難しい問いですが、岩田学園では、個性の中に規律を生んでいるといえます。

岩田学園は校則がありません。その代わり、生徒自身にモラルとマナーを考えることを促しています

昔は、スカートの長さや制服の着崩しに対して随時注意をしていましたが、今はしていません。これは、生徒自身が社会を見ながら「この場ではきちんとしたほうがいいんだ」というドレスコードや「私にはこの着方があっているんだ」などの適正を学んでほしいという想いからです。たとえ学校内で一時的な失礼があったとしても、その場で学べばいいのです。

教員は、生徒の個性を尊重しながら、生徒にはモラルとマナーを徐々に学んでいってほしいです。

岩田学園講演会の校庭で1枚

失敗を恐れない

大林:新型コロナウイルスの台頭やキャリア・働き方の多様化により、学校現場が新たに対応しなければならない領域が急増、先生方にとって未経験の取り組みが多く発生していると思います。そんなとき、岩田学園では、どのように事象と向き合い、実践しているのでしょうか?

児玉校長:一番、大切なのは失敗を恐れないことです。

誰しも、未経験のものに対しては、失敗したくない、という精神が働きます。代表的な事例がオンライン授業です。新型コロナウイルスの台頭によって新たに始まった取り組みですが、通信が少し悪くて…音声が聞こえずらくて…画面が小さくて…など生徒によって違いが出てきます。

全員が足並みをそろえて授業を受けられる環境を作ってきた教員の中には、この事象を失敗と捉え、億劫になってしまうことがありました。これらの事象が不公平と表現することは嘘ではないのですが、実際、会社の会議でも500人いれば1人2人のトラブルは不可避ですよね。現在は「みんなが揃うまで待たない、みんなで揃って終わらない」という合言葉を作り、教員にも失敗を恐れず、まずはやってみようと伝えています。

また、直観的に動くことも大切です。

よく生徒にも紹介しているのが、メル・ロビンズの「The 5 Second Rule(5秒ルール)」です。人間の脳は、考え始めてから1、2、3、4、5秒経過すると本能的に危険信号を発し、「やらない理由」を探してしまうそうです。要は、思ったことは、5秒以内にやってしまおうよ、ということです。

直感的に動けないと、実は自分自身を苦しめていることもあります。日常的な例を挙げると、少し腰が重たい仕事を、金曜日にやらず残してしまい、土日に引きずり、月曜日が憂鬱になる、なんてことに心当たりありませんか。すぐにやらなかったことで、苦しむ時間が余計長くなっていますね。早起きもそうです。起きてしまえば楽になるのに二度寝をすると余計苦しくなります。

この「The 5 Second Rule(5秒ルール)」は、生徒にも度々動画で見せて伝えるようにしているのですが、先人たちの言葉に触れることはとても大切です。

バスケットボールプレイヤーのマイケルジョーダンが残したセリフにこんなものがあります。

9000回以上シュートを外し、300試合の勝負に敗れ、勝敗を決める最後のシュートを任されて26回も外した。人生で何度も失敗した。それが成功の理由だ。

Michael Jordan

このセリフは入学式で新入生の皆さんに向けてお話しました。失敗しても大丈夫、失敗が成功のもとになるという挑戦を後押しするようなメッセージをお届けできればと思い、選びました。まずはトライしてみて、失敗し、1歩成長することを繰り返していくことが大切です。

大人ができること

大林:私も実際、岩田学園の生徒の皆さんに向けて何度か講演をさせていただいたり、猪原美羽さんの起業支援をさせていただいたりするなど、生徒の皆さんと関わる機会をいただき、嬉しく思っています。

一方で、今後、経営者という立場で、岩田学園の卒業生という立場で、生徒の皆さんの挑戦をどう応援できるのか、考えている最中でもあります。児玉校長から見て、私をはじめとした大人ができることを教えてください!

児玉校長:やはり、生の声を生徒に直接届けてもらう機会は欠かせません。皆さんには、未来を発信いただきたいです。「未来を変えていくのは、君たちだよ」というメッセージですね。

大林くんにも中学生・高校生向けに全3回講演してもらいましたが、「現実を知ったとしても、未来を憂うことなく今を生きる」というメッセージが今でも脳裏に焼き付いています。生徒に感動や刺激を与えるには、人となりや葛藤、苦悩の上にある生の声をメッセージとして出す必要があります。日常では知り得ない、経験者だから話せる貴重なメッセージです。

岩田学園講演会の様子

どんどん移り行く社会の中で、まだ見ぬ未来を創っていくとき、失敗も成功の1つであるという考え方は非常に大切です。現実的な小さい範囲の「今これやっておかないと将来ダメになる」「1年後こうなっているから今から備えよう」という発想を飛び越え、「未来って楽しみだよね」「10年後こんな姿になっていたいな」というワクワク感を持ってもらいたいです。

大林:私も、岩田学園には通い続け、直接私の口からメッセージを届けていきます。また、noteをはじめとしたSNSやイベントなどで「未来」のメッセージを発信し続けたいと思いました。本日は本当にありがとうございました。

ここまで、私の愛する母校である岩田学園児玉校長の大切にしている信念や生徒との向き合い方についてご紹介してきました。今後も、働き方やキャリア、実際に体験した経営ノウハウを発信していきます!是非チェックお願いします!


大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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