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第3回 IPランドスケープは新しいのか?|IPランドスケープ、パテントマップ、知財情報分析・・・

本記事のオリジナルは2017年10月25日にブログ「e-Patent Blog | 知財情報コンサルタント・野崎篤志のブログ」に投稿したものになります。

今まで2回にわたってIPランドスケープについてこのブログで取り上げてきました。

先日、レクシスネクシスのIP Business Journal 2017/2018(2022年7月時点でオンライン上で閲覧不可)がインターネット上で公開され、その中でIPランドスケープに関する言及および投稿がありましたので紹介したいと思います。


まず、「事業転換期において 知財部が果たすべき役割」というインタビュー記事で執行役員・知的財産本部長の富士フイルム株式会社 今井 正栄氏が述べているのは

最近では知財部からの積極的な情報等の発信業務を求められています。事業の失敗を防ぐことを目的に、自社の製品やサービスが他社特許に抵触しないかどうかを調べることを主眼にしていた活動から、自社の戦略や事業を成功に導くことを目的とした知財重視の経営戦略、いわゆるIPランドスケープを作れるような知財部となるよう取り組んでいます。

IPランドスケープという概念は決して新しいものではなく、当社でも以前から取り組んでいることですし、大手企業と呼ばれるところはどこも既に着手しています。今後はこの取組みをさらに加速していく考えです。

ということで、これまでのブログ記事でも書いてきた通り、IPランドスケープが包含している活動自体は既に実施してきているという点です。

知財情報調査・分析で、これまで様々なお客様とお付き合いさせていただいた経験を通じて、組織的にオーガナイズされているかは企業ごとによって差異はありますが、既に知財情報を始めとして各種情報収集・分析を通じて事業へ貢献する取り組み自体はされています。改めて富士フイルムという大手企業の知財トップがこのような発言をされたことで、自分自身の認識に大きな誤りはなかったことが確認できました。

もう1つは前々職の日本技術貿易・IP総研の中根氏の記事「知財情報分析への取組み~いま話題のIPランドスケープを踏まえて~」です。

以前から知財分野で使われている言葉として“パテントマップ”がある。パテントマップとは、特許情報を可視化した図表そのものを意味するものであり、知財情報分析・解析のアウトプットの一部として用いられている。4〜5年前はパテントマップという言葉や、そのアウトプットを嫌うクライアントが多いと感じることがあった(特にパテントマップの代表格的なバブルチャート)。

とあり、バブルチャートってそんなに嫌われているのかなという疑問はありますが(苦笑)、

当社では、以前からIPランドスケープに相当する知財情報分析・解析業務をクライアントよりご依頼いただいており、日本企業の取組みの一端を垣間見てきた。パテントマップに対して技術情報や市場情報といった非知財情報を統合すること自体は、以前から知財情報分析・解析においては当然に求められてきたことであり、特段新しいことではない。近年感じる変化としては、分析・解析に求められるアウトプットがより経営層を意識するものになってきたことである。分析・解析結果を経営者に活用してもらえる情報として提案することがIPランドスケープでは明確に意識されており、最も重要な点であると考える。

取り組み自体は従前のものであって、より経営や事業を意識する方向性にある、というのはまったくもって同意です。

再来週11月8日~10日には北の丸公園・科学技術館で特許情報フェア&コンファレンスが開催されます。

企業プレゼンテーションの演題を見ると、特許ランドスケープやIPランドスケープを使っている企業は予想外にあまりいなかったのですが、1つのホットトピックとしていろいろなブースで使われるのだろうなと思います。

個人的には上述のような考え方自体、また活動としては既に過去から行われてきたものであり、無理やり「IPランドスケープやってます」的に煽るベンダーがいないことを祈っています。

それにしても、今年も人工知能は人気のようですね。

こちらもあまり過剰な期待をするのは禁物だと思っています。

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