見出し画像

帰ってきた片えくぼ

5:30のアラーム、ワンコールで飛び起きるわたしだ。
遅くまで起きていた日も、二日酔いの朝も、たとえ不眠でゴロゴロ寝返りばかりだったとしても5:30ぴったりでわたしは朝を認識する。
あ、寝起き事情について詳しくまたお話しするとして…、今日は片えくぼについて話したいと思う。

いつも通り、開ききらない目で鏡に向かっていた今朝。
右頬に窪みが見えた。
寝ぼけたわたしは迷わずティッシュで鏡を拭いていたけれど、
その窪みは鏡の汚れではなく、えくぼだった。


わたしは幼い頃、右頬にえくぼのあるやんちゃでよく笑う女の子だった。
加えて八重歯も装備していたため、父に大変かわいがられた記憶がある。
矯正が当たり前の令和では考えられないけれど、八重歯は「愛敬がある」「かわいい」などチャームポイントとしてもてはやされていた時代だった。

しかしある夏休み、母と祖母の家に長期滞在していたわたしは唐突に八重歯を失うことになる。
行き先を知らされず車に乗せられ、ついたところは見知らぬ歯医者で…訳も分からぬまま歯を抜かれていた。
正確にいうと抜いたのは八重歯ではなく、八重歯の奥のまだ全く抜ける気配もない乳歯。その乳歯を早めに抜いてスペースを開け、重なりあい飛び出した犬歯を下に下ろす作戦だったらしい。
わたしもショックであったが、自宅で待つ父親のショックも相当なものであった。八重歯ファンの父のいないところで抜糸作戦を決行した母には驚くが、大人となった今ではとても感謝している。

そして八重歯を失い少し経った小学校高学年のわたしは順調に反抗期を迎えることになった。
比べることはできないけど、おそらく世の人よりキツめの反抗期だった何年間をわたしはほとんど笑顔なしで過ごしたように思う。
その頃からだろうか、わたしの右頬からえくぼが消えたのは…

今朝になって、突然帰ってきたえくぼはわたしに何を伝えてくれているのだろう。
用もないのに、ただのんびりしたいという理由で有給取得している今日。しかも朝に帰ってきたのには必ず理由があるはずなのだと、早速グーグルに問うてみる。
「えくぼ 理由」「えくぼ 突然」「えくぼ 片方」「えくぼ スピリチュアル」「えくぼ 言い伝え」…

えくぼとは顔面に生じる皮膚の窪みのことで、口角下制筋や笑筋などが収縮してできる。顔に脂肪がつきやすく皮膚が柔らかい方にえくぼができやすいためほとんどの赤ちゃんにある。成長の過程で消えてしまうか、そのまま残るものであり、大人になってからできるのは稀。
片えくぼは波乱に満ちた恋愛をしやすい。一方的に言い寄られることが多い。頬のえくぼはいわゆる「あざとい」タイプで異性にモテる…などなど。
聞いたことあるような、ないけれどふ〜んという程度の内容の中、とても興味のあるトピックを見つけたので紹介したい。それは、えくぼにまつわる中国の言い伝えである。

人は死んだあと、冥界という場所に行きます。
そこは彼岸花が咲き誇っている黄泉への道だそうです。
そこをさらに進むと「忘川河」という河に出ます。
その河を渡るには「奈河橋」という橋を渡らないといけません。
そこには「孟婆」という番人がいて、橋を渡ろうとする人にある特製のスープを振る舞います。
そのスープは「忘情水」と呼ばれるもので、これを飲むことによりその人の愛する人、親しい人、嫌いな人の事でさえも
全て忘れてしまい、安らかに来世に転生することができるのです。
ですが、中には愛する人の事を忘れたくないと思う人もいます。そんな人に孟婆がつけるマークこそが「えくぼ」であると言われています。

えくぼをつけられた人はその後、冷たい忘川河の中で1,000年もの間試練に耐え、1,000年耐え抜けた人のみが前世の記憶と印のえくぼをつけたまま来世に転生し、前世での大切な人を探すことができるのです。

出典元:えくぼの伝説。|香華殿

と、まあ何ともロマンチックに着地させていただくこととなった昼下がり。
今になってえくぼが帰ってきたのはきっと…。

前世での大切な人、待っててね。
わたしは、もう2度と笑顔もえくぼも失わないと心に誓った。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?