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コヨーテタイムはどこから生まれたのか?

今やアクションゲームを作る多くの人が知っているであろう【コヨーテタイム】という仕様。

ヒットゲーム『Celeste』に搭載された「地面から離れても少しの間はジャンプ入力を受け付ける」という仕様です。

操作性についても細かな工夫をしていて、キャラクターが進んでいて地面がなくなった直後にジャンプボタンを押しても、ジャンプできるようにしてあります。
そうすることで、プレイヤーに「思い通りに操作できた」と感じてもらえるんですよ。この「本当は落ちてるんだけどジャンプできる少しの間」のことは「コヨーテタイム」と呼ばれています。

「Hello! インディー」第4回 開発者が語る『Celeste』の秘密。ゲーム設計のこだわりと、「コヨーテタイム」!? | トピックス | Nintendo

ゲームシステムの多くは「過去のゲームの模倣とアレンジ」から生まれてきます。【コヨーテタイム】についても、きっと元ネタとでも呼べる仕組みがあったはずです。それはいったいどのゲームの、どの仕組みなのか?
※『Celeste』の開発者を批判する意図はまったくありません

【コヨーテタイム】の元ネタはマリオ!?

実は2021年発売の『スーパーマリオ3Dワールド + フューリーワールド』にも【コヨーテタイム】と同じ仕様が実装されています。

2021年なので『Celeste』が先…と思いきや本タイトルはWiiUからの移植作。『スーパーマリオ3Dワールド』自体は2013年に発売されています。

WiiUでは2013年に発売されていました

『Celeste』の発売は2018年。元となったPICO8のゲームも2015年製なので、やはりマリオのほうが早い。さすがマリオ…いや任天堂ですね。こっそりユーザー体験向上のテクニックを仕込んできます。

『Celeste』のPICO8版はこちらからプレイ可能です。【コヨーテタイム】の威力をご賞味あれ。
Celeste (lexaloffle.com)

さらなる元ネタを求めて

前述した通りゲームシステムには元となるネタがあるはずです。『スーパーマリオ3Dワールド』にしても先人がいるに違いない…ですが、任天堂がゲームを作るときは「任天堂自体」から学びます。過去を見つめ直し、改善と変革を実行する。

そこで「元ネタはマリオの中にあるのではないか?」という仮説を立てました。いわゆるマリオ64から始まる3Dマリオは今回の趣旨とはちょっと異なる気がしたので、2Dマリオ的で実験的でもある作品を探しました。

そうして浮上したのが『スーパーマリオ3Dランド』です。
※手元にあるのですぐ確認できる、という理由もありますが

こちらの発売は2011年。2024年の13年前…果たして【コヨーテタイム】は実装されているのか?

ほんの少し!
ほんの少しですが実装されていました!

ジャンプすると「土煙のエフェクトがジャンプ地点に生成される」仕様なのですが、崖から少し進んだところでジャンプボタンを押すと、確かに空中でエフェクトが再生されています。ソフトを持っている人は是非手元で確認して頂きたいです。

ただ『スーパーマリオ3Dワールド』に比べると受付フレーム数が少ないのでややシビアです。【コヨーテタイム】と同等なのは『スーパーマリオ3Dワールド』からだと言えるでしょう。

『Celeste』の偉大さ

ここまで散々「元ネタ」の話をしてきましたが【コヨーテタイム】という名称を考え、精密なジャンプを数千回繰り返すゲームに搭載したことから『Celeste』は偉大だと思います。任天堂だけが知っている秘伝のレシピだった…かもしれない仕組みが、誰もが知る共通知識となったのですから。

さらにさらに元ネタが…?

ここからは妄想なのですが『スーパーマリオ3Dランド』の仕様は理屈から生まれたのではなく「開発者が過去に遊んだゲームの感覚」から生まれたのでないでしょうか。「もっとジャンプを気持ちよく、ユーザーに寄り添った実装にしたいな…」と考えて「そういえば、過去に遊んだアクションゲームで気持ちよくジャンプできたやつがあった気がする…それはなんだろう」と指の記憶を思い起こし…

その記憶の源泉は『スーパードンキーコング』だったのではないでしょうか。

『スーパードンキーコング』には「ローリングアタック中は空中でも1度だけジャンプできる」という仕様があります。

【RTA】スーパードンキーコング 101% 45:52【解説】 (youtube.com)
※14:45付近がわかりやすいです

本来落下するはずがジャンプする猶予がある。しかし2段ジャンプではない。ジャンプのテクニックではなく「移動のテクニック」である。この感覚が【コヨーテタイム】の思想、感覚に近いのではないか…と妄想しました。

まとめ

『Celeste』によって有名になった【コヨーテタイム】、その先人にはマリオがいました。
ゲームシステムには(無意識だったとしても)いつだって参考となる元ネタがあり、積み重ねから新しい発想が生まれてくる。
さておき、【コヨーテタイム】という名前を付けた『Celeste』の開発者は偉い。

※もしかしたら、マリオよりも先の元ネタがあるかもしれませんが、ファミコン時代まで遡るのと、あらゆるアクションゲームを調査することは厳しい…ということでご容赦ください

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