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シリーズ「新型コロナ」その7:感染可能期間の延長

韓国で、新型コロナウィルス感染者が、いったんは回復し、検査で陰性になりながらも、その後再び陽性に転じてしまう例が相次いでいるという。

ロイター通信は、13日に次のような記事を発表した。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-southkorea-idJPKCN21V0QT

「韓国当局は13日、新型コロナウイルスでいったん陰性となった患者のうち、少なくとも116人が再び陽性反応を示したと発表した。同日に発表された新規感染者は25人にとどまったものの、「再活性化」患者の増加に懸念が強まっている。

当局は再陽性の原因を調査中。ただ、韓国疾病予防管理局(KCDC)の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)局長はこれまで、患者が再感染したというよりもウイルスが再活性化した可能性があるとの見方を示している。

ほかの専門家らは、検査の欠陥が関係している可能性や、残存したウイルスが患者の体内にとどまっているものの、患者に危険を及ぼしたり、他者に感染したりすることはない可能性があると指摘している。

前週はこうした再陽性患者の数が51人だった。」

また、TBSニュースは14日、次のように報道している。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3956114.html

「韓国で、新型コロナウイルスの感染から回復したとされたあとに再び陽性と診断されるケースが相次いでいる問題で、韓国政府はウイルス変異も含め、原因を調べています。

 韓国の中央防疫対策本部は14日、新型コロナウイルスに感染後、陰性となって隔離が解除されたあとに再び陽性と診断された人が8人増え、124人になったと発表しました。このうち、20代が28人と最も多く、およそ5分の1を占めています。

 中央防疫対策本部は、隔離後、短い間に再び陽性となるケースが多いことから、陰性と診断されたあとも体内に残っていたウイルスが活性化した可能性が高いと見ていますが、14日の会見で、ウイルスの変異が起きた可能性も含めて分析を進めていると明らかにしました。「特異な点が見つかれば、当然、公開する」としています。

 韓国政府は近く、回復して隔離が解除された人に一定期間の自宅待機を勧告することなどを盛り込んだ対応策を発表する方針です。」


これは何を意味するのか?
韓国疾病予防管理局(KCDC)の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)局長の言うように、いったん回復した患者が、再び誰かから感染したという可能性は、その例が100を超えているところから、まず考えにくいだろう。
そもそも、回復したということは、そのウィルスに対して抗体が出来上がった(ウィルスの増殖を抑えられている)ということだから、検査で陽性が出るほど、体内で再びウィルスが活性化することは、通常は考えにくいはずだが・・・。
いくつかの可能性が考えられる。

1.検査の不具合(124例も?)
2.このウィルスは再活性化する稀な特徴を持っている
3.ウィルスが変異した(新しい抗体が出来上がる必要がある)

1はまず考えにくい。
もし2だとすると、この新型コロナウィルスは、いわば「第二の潜伏期間」あるいは「見せかけの不活化」という極めてやっかいな特徴を持っていることになる。免疫力が強いはずの20代の若者にさえ、この「再活性化」が多く見られたとなると、なおさら看過できない。もしかしたら、第三、第四の再活性化も覚悟しなければならないのかもしれない。
もし3だとすると、私たちは異なる感染症に連続して二度かかる可能性を考慮しなければならないことになる。(ただし、二度目は軽症ですむかもしれないが)

2でも3でも、いずれにしろ、私たちの認識と対処法に更新を迫る事態である。
おそらく私たちは、新種の感染症に向き合ったとき、最悪の事態を想定して対処すべきなのだろう。その想定が結果として「杞憂」なら、それに越したことはない。しかし甘い想定のめに、想定を超えるほど事態を悪化させてしまうことは、何としても回避しなければならない。
今回、最悪の事態を想定するなら、感染者の「感染可能期間」とも呼ぶべきものを更新する必要がありそうだ。

昨日のその後の報道で、新たに出た再陽性化患者の経緯として、最初の陽性判明から回復に至るまでが約二週間、二度のPCR検査で陰性が確認されたものの、その五日後に再び陽性となったという。

このケースからすると、二度目の潜伏期間(ないし、ウィルスの変異期間)として5日間ぐらいは想定しておいた方がいいことを物語っている。

前回のシリーズ「新型コロナ」その6の記事で、軽症感染者の平均治癒日数を計算すべきだということを申し上げた。つまりこれは「潜伏期間+治療(回復)期間」ということで、この間は、人に感染させる危険性がある期間と見るべきだろう、と指摘した。
最悪の事態を想定するなら、どうやらこれをさらに最低でも五日ほど延長する必要がありそうだ。
潜伏期間が約二週間、治療(回復)期間も約二週間だとすると、感染者は合計五週間ぐらいは人に感染させる危険性があると考えておいた方がよさそうだ。
もしウィルスが変異しているなら、一人の感染者が型の違うウィルスを二度人に感染させる危険性もあることになる。

この新型コロナウィルスの潜伏期間が約二週間であると発表されて以来、すべての対策の時間軸を決めるのに、この二週間という目盛りが使われてきた感があるが、これからは五週間ぐらいは想定しておく必要がありそうだ。

ウィルスの感染力の強さを表す指標のひとつに「基本再生産数」というのがあるという。これは、一人の感染者が免疫を獲得するまで(陽性から陰性に転じるまで)、あるいは死亡によって感染力を失うまで、平均して何人に感染させるかを表す。
WHOによると、新型コロナウィルスの基本再生産数は1.4~2.5だという。通常の季節性インフルエンザが2~3なので、それに近いと認識できるが(初期の認識はそうだった)、もし新型コロナウィルスの感染力を計る指標として、「感染可能期間」とも呼ぶべきものを持ってくるなら、とてもインフルエンザウィルスと同レベルで扱うわけにはいかないはずだ。

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