映画スターの影響で

tiancunの年代だと、「スラムダンク」や「テニスの王子様」に影響されて、それぞれバスケ部やテニス部にはいった人がいました。以前海外の研究者と話をしているときに、「スラムダンク」に感動してバスケを始めたと言われたことがありました。三井(※1)が好きだそうです。

われわれの意思決定はそんなふうにしてメディアの影響を受けることがあるのですが、今日は「どんな犬を飼うか」の選択に、映画が影響したことを示す研究を紹介します(※2)。

犬と映画のデータベース

使用したデータは、アメリカ最大の愛犬家団体(The American Kennel Club)に、1926年から2005年にかけて登録された犬の品種データで、ここには6500万個体以上の犬が登録されています。

使用したのは、登場する犬種が特定でき、かつ犬がメインキャラクター(※3)であるなどの基準に従って選んだ映画29本です。この中には「101匹わんちゃん」とか「名犬ラッシー」が含まれています。犬に関する映画を調べるためには、犬が登場する映画がリストアップされている、いくつかのインターネットのサイトを使用しました。いくつかの映画には複数の品種が登場するので、データセットに含まれる犬種の数は36でした。映画の人気は、推定の入場者数で測っています(※4)。

映画に登場した犬は人気が上がる

Ghirlanda博士らの研究チームは、(1) 映画が公開されることで、そこに登場する犬種の人気(※5)が上がったか、(2) 映画の人気が犬種の人気の変化に影響しているのか、(3) 公開された年によって人気への影響は変わるのか、を解析しました。

その結果、(1) 映画が公開されることで、その映画でとりあげている犬種の人気は上昇する傾向にありました。上昇する度合いは映画によって異なりますが、多いものでは、20%から40%も上昇しました。

さらに、(2) 犬種の人気の上昇の度合いは、映画の最初の週末の入場者数と相関していました。つまり、最初の週末の入場者数が多いほど、犬種の人気が大きく上がる傾向がありました。

その一方で、(3) 犬種の人気の上昇の度合いは、映画の公開年と負の相関がありました。つまり、昔の映画ほど取り上げている犬種の人気が大きく上がり、最近の映画では上がったとしても昔ほどではない、という傾向があったのです。著者らは、これは最近の映画は、他の娯楽や過去の「犬映画」との競争にさらされているため、相対的に影響力が下がっているのではないかと推測しています。

おわりに

どんな犬種を飼うか、というわれわれの行動に、映画が影響している(ことがある)ようです。「まあそうだろうな」とも思いますが、しかし実際に調べるのはなかなか大変です。

また、映画のメインキャラクターになるような犬種は、映画の公開前からすでに人気が上昇傾向にあることから、著者らは、犬種のもともとの人気と映画の相互作用がある可能性を指摘しています。つまり、もともと人気が上がりつつある犬を「時流に乗って」映画で取り上げることで、さらにその犬の人気が上がるという効果です。こんなふうにして、人気(つまりどのくらい沢山の人がその選択肢を選ぶか)には、さまざまな要因が影響しているようです。

今回の犬の研究が他の事例にどの程度当てはまるかは、さらなる研究が必要ですが、面白い着眼点から、人間の意思決定に迫ろうとした研究だと思います。

(執筆者:tiancun)

※1 主人公のチームメイトで、一度挫折し主人公たちに迷惑をかけるのですが、復帰してチームに加わります。

※2  Ghirlanda, S., Acerbi, A., Herzog, H. 2014. Dog Movie Stars and Dog Breed Popularity: A Case Study in Media Influence on Choice. PLoS ONE, 9, e106565.

※3 メインキャラクターかどうかは、タイトルか映画の概要に名前が登場するかどうかで決めています。

※4 実際には、収益を当時のチケット価格で割って推定しています。

※5 より正確には、単なる人気ではなく、ある期間での人気のトレンドを解析しています。というのは、映画の公開前からすでに人気(その犬種の登録件数)は上昇しているかもしれないため、(たとえば)映画の公開によって、上昇傾向の度合いが変わるかを分析しています。どの期間のトレンドをみるかについては、1年、2年、5年、10年と複数の期間を試しています。  

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