あんそろぽろじすと

人類学の再興を目指してゆるく展開中。人類学に携わる研究者などが、研究成果や現場の様子を紹介していきます。Twitter: https://twitter.com/anthro_pologist

教えるってこうやるんです?

就活の選考が解禁されましたね。最近、社会の中では「即戦力」が求められているそうです。難易度の低い課題からスタートして、フィードバックを与えつつ、だんだん難易度をアップさせる……そんなふうにして「教える」ことは過去のものとなりつつあるようです。実は、人類学でも、「教える」ことは重要なテーマです。ヒトの社会でも、「教える」ことは規範や、知識を伝達するために重要な役割を果たしています。では、ヒト以外の動

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チベットのデニソワ人

シベリアのアルタイ山脈にあるデニソワ洞窟から、これまで知られていなかった未知の人類の骨が発見されたという研究結果が2010年に報告され*1、大きな話題になりました。デニソワ人と名付けられたこの人類に関しては、その形態よりも遺伝情報のほうがよくわかっており、ネアンデルタール人に近縁であることが明らかにされています。デニソワ人については、これまでに指の骨や歯などの小さな部位しか報告されておらず、遺伝情

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わからなくってもできるんです?

今までに何度か、人類の文化の「蓄積性」に関する研究を紹介してきました(たとえば「大は小を兼ねない?」「ハイリスク・ハイリターンでいこう」)。われわれのまわりには、車や、飛行機や、コンピューターといった、ひとりではどうあがいても発明できないようなものが溢れています。しかし考えてみると、ちょっとひっかかるところがあるかもしれません。わたしたちは車や飛行機やコンピューターを使うことができていますが、しか

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チンパンジーに「閉経」はあるか?

考えてみると不思議なことなのですが、ヒトは何歳まで繁殖できるのかという年齢的な上限には、男女差があります。ヒトの女性は閉経して中年以降に繁殖力を失い、それ以降は新たな子供を妊娠できなくなりますが、男性は中年以降も繁殖力を維持し、受精可能な精子を生産しつづけます。

この繁殖年齢の上限の男女差には、「おばあちゃん仮説」(「祖母仮説」と呼ばれることもあります) という進化的な説明がなされています*1。

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大は小を兼ねない?

人類学ではこの10年ほど、集団の大きさと文化の「複雑さ」に関する議論が続いています。数学を使った理論研究からは、大きな集団ほど「複雑」な文化が維持できると予測されています。大勢の人がいるほうが、習得の難しい文化であっても誰かが習得することができたり、有効な改良を行えたりするからです。

この理論的な予測を支持する実験研究もありますが、別の実験研究者からは、人間の限界を考慮した反論もなされています。

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キンシコウのもらい乳

もらい乳は、実はヒト集団のなかで広く見られる行動だったのかもしれないという研究を以前紹介しました (もらい乳の民族学)。霊長類全体のなかで見ても、日常的にもらい乳をするのが観察されている種は多くありません。南米に暮らすサル、アフリカのマダガスカル島に棲むサル、そしてヒトなどで見られる程度です*1。

今回紹介する研究は、実は中国に暮らすキンシコウでも日常的なもらい乳が行なわれていたという事実を明ら

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