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「似たもの夫婦」の◯◯◯も似ている?

「似たもの夫婦」という言葉がありますね。実際に、人類学者をはじめとする沢山の研究者の努力の結果、年齢、身長、学歴など、さまざまな特徴が夫婦で似ていることが明らかになっています。今日は、「え、こんなところまで」と驚くようなところも夫婦で似ているを報告した論文を紹介しましょう(※1)。

米が増える箱

参加者は、セネガルの男性156人、女性172人です。実験は、男性4人もしくは女性4人のグループで行われます。まず、各参加者は、200グラムの米を渡されます。4人の参加者は、他の人から見えないように、持っている米のうち任意の量を不透明な箱の中にいれます。この量を今後「寄与量」とよびましょう。4人全員が米を箱に入れ終わると、研究者たちは箱の中に入っている米の量を伝え、それを2倍した量を4人に均等に分配します。たとえば、箱に入っていた米の量が400グラムなら、400×2/4=200で、各人が受け取る米の量は200グラムです。実験の参加者は、これを5回繰り返します。参加者の中には、51組の夫婦が含まれていました。そのことを利用して、研究者たちは、夫が箱に入れた米の総量(5回の合計)と、妻が箱に入れた米の総量が似ているかどうかを調べました。

この実験で重要なポイントを説明します。最後に受け取る米が、寄与量の相対的な多寡とは関係なく、均等に分配されるということです。他の人よりも寄与量が多いからといって、他の人より沢山返ってくるわけではありません。自分の儲けのことだけ考えるのであれば、他の人だけ米を箱にいれてくれて自分は米を箱に入れないのが一番です。しかし、誰も箱に米を入れなければ、米の量がそれ以上増えることもありません。このようなある種のジレンマがある状況で、米を箱に入れるという、自分が損するかもしれないが全員に利益のある行動をとる度合いのことを、ここでは「協力性」とよぶことにしましょう。つまり、寄与量が多いほど協力性があると考えましょう、ということです。

夫婦の「協力性」は似ている

さて、結果の説明にうつりましょう。夫と妻が箱に入れた米の量には、「正の相関」とよばれる関係がありました。つまり、夫の寄与量が多いほど、その妻の寄与量も多い傾向がありました。逆もまたしかり、です。つまり、夫婦の「協力性」は似ていました。

さらに、研究者たちは、夫婦間の寄与量の違いと、結婚年数の関係を調べました。結婚年数が長いほど寄与量が似ているのなら、結婚後だんだん夫婦の寄与量が似てきたことを示すのではないかと考えたのです。しかし、これには何の関係も見られませんでした。ここから、研究者たちは、夫婦の協力性が似ているのは、結婚後に似てきたというよりは、最初から似た相手を選んでいるからではないか、と考察しています。

おわりに

今回の研究では、「協力性」という目に見えない性質が、夫婦の間で似ていることを示唆しています。しかも、結婚した後だんだん似てきたのではなく、最初から似た相手が夫婦となっている可能性を示唆しています。しかし考えてみると、なぜ似ている人を結婚相手に選ぶのか、不思議ではないですか?逆の場合、つまり、似ていない相手を選ぶ場合もあるのではないか、と思われた方もいますよね。実は、どのような場合に、似ている人を結婚相手として選びやすくなるのかを調べた研究もあるのです。その話は、でもまた時間があるときに……

(執筆者:tiancun)


※1 Tognetti, A., Berticat, C., Raymond, M., Faurie, C. 2014. Assortative mating based on cooperativeness and generosity. J. Evol. Biol. 27, 975-981. 

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