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"YEAH JAZZ"の事。

結成されたバンドが、まず一番最初に悩むのはなんだろう。どんな曲を書くのか?どんな歌詞を書くのか?演奏力を上げるためには?見た目は大丈夫か?とまあ、色々と悩むことは多いんだろうけど、やっぱバンドを名付けるのって重要だと思うんですよね。まあ、何となく思い付きで付けた人たちあり、相当に気合の入った理由がある人もありと、色々あるんでしょうが、失礼ながら、何でこの名前にしたんだろう?と疑問になるバンドも。一時期だけ改名したけども、また元に戻しているので、拘りがあるバンド名なのでしょうとは思いますが、それが理由の全てでは無いにしろ、セールスがイマイチでかなり苦労したバンドがいた。それが、このYeah Jazzでした。

[This Is Not Love] (1986)

Yeah Jazzは、ヴォーカリストのKevin Hand、ギタリストのMark "Chats" Chatfield、ベーシストのStu Ballantyne、ドラマーのIan Hitchensからなる4人組バンドとして、英国イングランドはスタッフォードシャー州の小さな町アトックシターで1983年に結成されています。バンド名の由来はイマイチ分かりません。ロック・バンドが都会を目指すのとは異なり、田舎町の普通の暮らしに基づいた日々の生活や喜怒哀楽を歌に乗せた素朴な青年たちでした。1984年に”Julie And The Sealions”を自主カセットでリリース、粗削りながらもメロディとコーラス・ワークとギター・サウンドが魅力的な作品です。小さなクラブでのギグを重ね、1986年にUpright Recordsから本格的なデビュー・シングル”This Is Not Love”をリリースしています。本当に純朴で、アコースティック・ギターを中心に、青臭いことこの上ないヴォーカルと、これまたシンプルなメロディと精一杯のコーラスが微笑ましい、垢ぬけないからこその純粋な魅力を感じる作品です。Creation Recordsを中心に多数の作品を世に送り出した名プロデューサー、Slaughter JoeことJoe Fosterがプロデュースしています。次のシングル"She Said"は、クラリネットやピアノをフィーチャーし、ジャングリーなギターとメロディが堪らなく魅力的な表題曲を含むかなりの良作で、リリース後に、間もなくCherry Red Recordsとの契約に至ります。

[Six Lane Ends} (1987)

1987年に早くもCherry Redから初となるシングル”Sharon”をリリース、この作品には、Upright Records時代のレーベル・メイトだったThe HigsonsのTerry Edwardsがプロデュースとホーン、キーボードなどでバック・アップしており、良質なメロディとヴォーカルとコーラス、ちょっと厚くなったサウンドが魅力的でした。同じ年にデビュー・アルバム"Six Lane Ends"をリリースしています。アコースティックでジャングリー、青臭いヴォーカルとギター、一生懸命なコーラス、ドコドコしたベースやドラムスという、正統派インディ・ギター・ポップが詰まった良いアルバムです。しかし、バンドのありのままのサウンドにはリスクがあるとCherry Redが判断したか、唐突にアップ・テンポになったり、ノイズを入れてみたりと、中々に捻ったサウンドとなっています。良曲が多いアルバムだってことは確かですが、洗練されたサウンドには無理があったのか、バンド名でJazz系と勘違いされてしまったのかセールスは惨敗で、翌年のシングル"Morning O'Grady"を最後にCherry Redとの契約は解除されました。

[Short Storys] (1996)

1992年には、バンドの2作目のフル・アルバム"Short Storys"を自主カセットのみでリリースしています。このアルバムに収録されていた一部の楽曲はシングル・カットされ、"April"としてTubecroft Recordsからリリースされています。この頃から、地元アトックシターの司教であり、The Zydeco BrothersやThe Zydeco Hot Rodsなどのバンドで活動し、Debbie HarryやVan Morrisonなどのサポートの経験もあるベテラン・ミュージシャンのFred HopwoodとDave Blantがサポ-ト参加しています。アコースティック・ギターのサウンドや青臭く垢ぬけないヴォーカルやシンプルなバンド・サウンドが中心ですが、サポートのふたりによるアコーディオンやホイッスル、強靭なドラムが非常に効果的で、英国やアイルランドの伝統的なフォークを思わせる活き活きとしたサウンドは、Cherry Red時代とは明らかに異なるものでした。この"Short Storys"は、レーベルからバンド名にJAZZが付くので紛らわしいという指摘を受けたのか、バンド名をBig Red Kiteに変更して1996年にドイツのScout ReleasesからCDとして再リリースされています。

[Songs From Biscuit Town] (2000)

バンドの最後のアルバム”Songs From Biscuit Town”は、再びYeah Jazz名義に戻って2000年にリリースされています。アルバム名は、彼らが愛し続ける地元のアトックシターにある大きなビスケット工場「Elkes Biscuits」から名付けられています。この作品は、レコーディングしたもののCDとして正式に発表されていなかった音源に加え、1994年にスペインのElefant RecordsからリリースされたFeltのトリビュート・アルバム"A Tribute to Felt"収録の"Rain Of Crystal Spires"のカヴァーや、BBCセッションでのレコーディングを含む全9曲を収録しています。この作品は、サポート・メンバーのFred HopwoodとDave Blant自身のレーベル"Small Town Records"から、CD-Rで通販のみの販売になっています。2016年には、バンドの初期の曲や、未発表曲を収録したコンピレーション・アルバム”30 Years”が、ドイツのFirestation Recordsからリリースされています。

[30 Years] (2016)

バンドは終焉したみたいに思えますが、まだ地元で活動してるみたいです。Fred HopwoodとDave BlantのレーベルSmall Town Recrdsからリリースされた作品にYeah Jazzのメンバーの名前を確認できます。Elkes Biscuitsの責任者でもメンバーと同じ名前が確認出来るので、仕事をしながらかも知れませんが、色んなバンドを組んだり、教会で歌いながら、Yeah Jazzとしても時折メンバーが結集して小さなクラブでライヴを行っている様です。都落ちなんかでは無く、常に地元を愛した彼らのあるべき姿になったという気がして、ちょっと嬉しくなりました。

[She Said] (1986)

今回は、彼らの2作目のシングル曲で、流れるようなメロディと、小気味良くジャングリーながら哀愁味もあるサウンドが素晴らしいこの名曲を。

"She Said" / Yeah Jazz

#忘れられちゃったっぽい名曲


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