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"SOMETHING PRETTY BEAUTIFUL"の事。

UKインディ/ギターポップ好きならば必ず通る道と言えなくもないUKの重要レーベル「CREATION RECORDS」。1983年のレーベル発足から現在に至るまで、数えきれないほどの名バンドを送り出した、誰もが認める重要な存在で、個人的にも大好きなレーベルであることは疑いようがありません。しかし、ビジネス、ことさら音楽ビジネスに於いては、常に安定した運営を続けるインディ・レーベルなんて中々無くて、中小企業、あるいはベンチャー企業の様なものなのかも知れません。「CREATION RECORDS」だってそう。主要なバンドに多額な資金をつぎ込み、そのブレイクの影で、不遇な運命を辿ってしまったミュージシャン達がいたのを忘れないで...。今回はそんなバンドのひとつを。

1989年と言えば、「CREATION RECORDS」としては勝負の年だった。思えば”The House Of Love”が人気を博すも大変な放蕩息子になってしまったり、”My Bloody Valentine”とは契約でも大変だったろうに、完璧主義者ゆえの膨大なレコーディング費用が掛かり、Alan McGeeとは旧知の仲である”Primal Scream”が勝負のセカンド・アルバムを制作した時期。ギャンブルよりもリスキーな、会社が一気に傾くくらいの多額の資金が右から左へと流れて消えていき、その煽りを喰って消えてしまったバンドってのは数知れず、”Pacific”、”Tangerine”、”Counterfeit”など...そして彼らも。

”Something Pretty Beautiful”、このあまりにもダサくて(失礼)真っすぐな名称を冠したこのバンドは、Julian Copeの実の弟であるJoss Copeと、 "Crash (USの方)", "King Of Culture"などのアメリカのローカル・バンドを渡り歩いてきたBill Careyの2人が結成したバンド。Bill CareyがUKに渡った理由は...何だったんでしょう?伸びやかなギターが印象的な青春ギター・ポップは、初期”Trash Can Sinatras”に劣らない純度を持ったキラキラ加減で、バンド名を地で行く素晴らしい内容でしたが、12インチ「Freefall」1枚を出しただけで継続困難に陥り、その後は、未発表曲を加えたミニ・アルバム「Something Pretty Beautiful」のみのリリースで消滅しています。バンドの力量不足か、レーベルの資金の問題かは知りようもありませんが、全くもって惜しい才能が失われてしまったものです。Alan McGeeもよく理解しているのか、後の「CREATION RECORDS」の資金源となったであろうコンピレーション・アルバム””A Palace In The Sun”や”Do You Believe In Love?”には彼らの楽曲が収録されていますし、”The Weather Prophets”や"Biff Bang Pow! ”の作品には参加させています。解散後、Jossは兄であるJulian Copeなどの作品へ参加、ソロ名義での作品も残しています。Bill Careyは、アメリカに戻って"Gone Walkers"や"Agent13"などで活動しています。実際、彼らが残した楽曲は、たった6曲でありながら、粒揃いの良い曲ばかりでした。正に、”忘れられたくない名バンドな訳です。

今回は、数少ない音源から、彼らの身上である、伸びやかなギター・サウンドと珠玉のメロディが素晴らしいこの曲を。

“I Want To Watch” / Something Pretty Beautiful

#忘れられちゃったっぽい名曲

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