見出し画像

"Arsenal"(US Band)の事。

1981年にSteve Albiniが彼のベッドルームにて、自身の演奏と、日本が世界に誇るRolandのドラムマシーンTR-606によって始めた宅録ユニットBig Blackが、Naked RaygunのヴォーカリストのJeff PezzatiとギタリストのSantiago Durangoが加入することによってドラムレスの変則トリオ編成になります。多くはないものの、数々の名曲を残して1987年に解散、SteveはScratch Acidのメンバーなどとバンド編成の ”Rapeman”での短い活動を経て、NirvanaやPixies、Wedding Presentなどを手掛ける敏腕プロデュサーになったのはご周知の通り。Jeffは在籍していたNaked Raygunに戻って活動を再開しました。

もう一人のメンバーだったSantiagoがベーシストのMalachi Ritscherと結成したのが”Arsenal”でした。彼らは、Rough Trade~MUTEが米国のノイズ~オルタナティヴ系のバンド -Sonic YouthやDinisaur Jr.など - をUKに輸入すべく立ち上げたレーベルBlast Firstから、USではTouch & Goから1988年に1st SINGLEである”Manipulator”をリリースしています。ややメロディアスでキーボードなども織り交ぜたノイズ・ロックを志向していましたが、2人組のドラムレスで、Big Blackと同様にドラム・マシーンを使用したサウンドには、SantiagoのBig Blackへの未練を感じると言っては言いすぎでしょうか。


結局のところ、Asenalはたった2枚のシングルを残したのみで消滅してしまいます。Malachiはシカゴの実験的ジャズのバンドなどに参加し、ミュージシャンとして音楽活動をする傍ら、社会運動家となります。そして2006年、悲劇は起こりました。反戦運動家となった彼は、イラク戦争への抗議としてハイウェイで焼身自殺を図って亡くなってしまいます。彼の遺書には「戦争のある世の中で生きるよりも、違う世界を選ぶ」と言うような事が書かれていたそうです。今思えば、社会的メッセージが色濃く、死生観などもテーマにしており、こういった志向は彼の考えによるものだったのかも知れませんね。一方のSantiagoは、音楽の演奏は引退しますが、音楽の肖像権や権利を扱う弁護士として、古巣のTouch & Goなどの案件を担当していたとか。彼は、2006年のTouch & Goレーベル25周年記念のLIVEにはBig Blackのメンバーとして参加しました。余談ですが、Santiagoの元妻は、かのCath Carrollでした。この名前を聞いて、Unrestを思い出してしまったあなたはお里が知れてしまいますね...私も同じです。


今回は、彼らが残したごくごく数少ない作品からこの曲を

“Little Hitlers” / Arsenal

#忘れられちゃったっぽい名曲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?