【創作小説】悪魔付きの少女【序章】


「さぁ、治療を始めよう。」


 低く落ち着いた声で幼い少女に優しく声をかける。
 患者をじっと見つめ、首を触りながら質問をする。脈拍を感じ、震えを確認し体調を確認する。そばにいる助手に処置を任せ、助手の治療を傍で見守る。

「では、こちらの薬を毎日食後にきちんと飲んでください。体調が悪くなったらいつでもまた来てください。」


 まだ女性と言うよりは、少女という呼び方のほうが相応しそうな助手が治療を引き継ぎ処置をする。処置をすませ別れの挨拶を済ませた後家を出る。

「先生。今日の私の治療はどうでしたか?」

 帰路に向かう途中、すこし気分の良さそうな声で確認をする。

「・・・、別に問題はない。」

 淡々とした口調には怒りや不満などと言うそっけない感情は無かった。ただ問題がないという事実をそのまま答えたに過ぎない。
 この奇妙な関係が始まったのは少し前に遡る・・・・・



100年ほど前に世界の破壊を目的とした宗教法人が暴走し、悪魔召喚をした事によって世界は悪魔によって破壊され支配された。
世界は変革を迎え、日常に悪魔が住まう世界へとなっていった。悪魔の中にも多様な考え方を持ち、人間との共存を唱えるものも居た。人間の感情を食事としている者も、人間を支配することで食事が困難になると言う意見なども交わされた。そうして人間の虐殺と支配を緩和させていった。

そうして世界が落ち着きを取り戻していくが、未だ悪魔と人間との関係性は各地でまだまだ格差がある。
人間との共存をしている地域もあれば、人間を家畜のように扱う地域などもある。
これはとある田舎での、悪魔と少女が出会った物語・・・


周りには山々と畑があり、家が点々としている田舎に、ひときわ大きい人物が住んでいる。
身長は180cm身体付きは筋肉がしっかりと付いているガタイがよく、おおよそ一般的な人と比べるとあまりにも異常であった。

その者は長いコート、手袋、深く帽子をかぶり、顔には手ぬぐいを巻いていた。見た目が大きく、風貌も見るからに怪しく人との交流も少ない如何にも怪しい者であった。町から少し離れた家で一人ひっそりと住んでいた。
時折町に赴き必要なものを買いに行くとき以外はほぼ家に引きこもっていた。

そのような街で見かけるのが稀有な者と少女が出会ったことは、奇跡というほかないだろう。

彼が久方ぶりに街に向かうと道中で少女が勢いよくぶつかってきた。

「すみません。あの!助けてください!!」

ぶつかるや否や突然の助けに事情をきく。すると母親が急に倒れてしまい、薬草を探しに来たのだという。その時の状況を確認し、まずは母親の様子を見に行くことにした。

母親の様子を確認すると、栄養不足と軽い中毒のようであった。それを伝え立ち去ろうとするが、お金がなく治療する手立てがない。

「お願いします。母親を助けてください。私ができる事なら何でもしますから。」

少女は強く叫び、深く頭を下げた。彼はそれを聞きしばし思案する。
人との関りがあまりできていない現状に対し、いつまでもこのままではいけないのではないかと考えていた。腕を組み、軽く顔を撫でてから条件を告げる。

「母親を助ける代わりに、君は私の助手になって貰おう。」

お互いに一瞬の沈黙が流れる。少女は断ると言う選択肢はなかった。何をすればいいのか、具体的な内容を聞くことはできない。それでもやはり母親を助けたい。その気持ちが先走ってしまう。

「わかりました。母親をよろしくお願いします。」

そうして彼は買い物をし、彼女の母親の為の食事の用意と休ませるために身の回りの片づけをする。そしてしばらく母親の看病をし数日が立ち母親の体調は元のように回復していった。そして、回復をしたところで改めて少女に告げる。

「君に私の助手としていろいろと手伝って貰う。こちらの約束は果たした。今度は君が約束を果たす番だ。」

「わかりました。母親を助けて頂きありがとうございました。私もあなたの助手としてきちんと恩を返したいと思います。」

こうして彼と少女の契約が結ばれた。


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