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すべての信仰や徳性はたゞ誤解から生じたとさへ見え、しかも科学はいまだに暗く、われらに自殺と自棄のみをしか保証せぬ、(「宮沢賢治集全集2」〔断章八〕)

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    小市民たちの日記。交換日記と名乗ってはいるけれど、その実、ペン売り場の長いロール紙のような無法さである。

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家事・育児分担の不公平感【論文】

夫婦それぞれの家事に従事する時間にまつわる、最新の調査が発表されました。妻は平日には4時間、休日には5時間を超える家事に取り組んでいる一方で、夫は妻の1/5ほどの時間の家事に従事していると示されました。 男女平等と共同参画が謳われるなか、この結果はどう捉えられるでしょうか。それぞれの夫婦にはそれぞれの都合があります。2人で話し合ったことから、当然そうだと思っていること、あるいは渋々そうせざるを得ないこともあるでしょう。この統計はあくまでも実態であって、時間的な分配にまつわる

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    • 長い休み

      長い休みの日の抽象的な記録 ある日① 長い休みになる。休みにおいて「長い」というのは、どのくらいから言えるのだろうか。わたしは3週間の休みだった。転職をきっかけとする有給消化と、入社日までちょっと間がある3週間。フランスでは3週間よりももっと長くバカンスで休暇だと聞くけれど、3週間は長くないってことはないだろう。長い休みのはじまり。でかい教会で歌う。気持ちが良かった。 ある日② どんなに仕事にやり甲斐があろうが、わたしにとってそもそも労働というものは、やりたいものではない

      • 大人だから|もっとやれます

        『「大人だから」ってどんな気持ちで言っているの?』 友だちからLINEが届く。雑談にしては気軽な質問ではないけれど、相談にしては切迫感がないので、とりあえず返事を保留にしてお風呂に入る。 脱衣所で振り返る。 正直、こんな質問をされるまで誰かの印象に残るほど「大人だから」と発していることを自覚していなかったし、そんなんだからこんな質問をされてもその友だちの前で、具体的にどんな場面で「大人だから」と言っているのかがわからなかった。けれども、わたしが「大人だから」と言いそうだとい

        • 圧倒的な【家族時代】における反婚のふるまい

          わたしはひとと共に生きている。「わたしたちは決して独りで生きているのではない」的なメッセージではなく、わたしは人と共に生きている。家を借りて友達と住んでいる。 学生の頃ならまだしも、家族でも恋人でもない会社勤めの3人が集まって住んでいるのはどうやら少しばかり珍しいことらしく、一度明かしてしまうと皆いろいろと聞いてくる。どこが共用なの?食事はどうしてるの?正直もう聞かれすぎて面倒臭い。転校生がクラスにやってきたとき、こっちはその転校生の名前だけ覚えればいいけど、転校生にとって

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          他人に興味ないだろ|自分ごと

          他人への興味は割とあるほうだと思っているけれど、「他人に興味がない」としばしば言われる。んー、確かに? 興味はあるが、他人とのコミュニケーションは苦手なので積極的に他人の話を聞かないからかもしれない。でも興味はあるもん。内側に抱えている興味が質問として発散していないだけだ。無感情であることと無表情であることは別だし、あなたも口には出さずとも何かを怒ったことがあるだろう。 では、他人への興味はいかにして図られるのか。まず他人への質問によって図ってしまったが、これは必ずしも共有

          他人に興味ないだろ|自分ごと

          応接間

          ある日① 甥っ子が歩くようになった。ちいさい一歩を重ねて少しずつ進む姿は、もう言葉が出ないほど可愛い。家の近所の公園をお父さんに連れ立って歩く動画が送られてきて、わたしは自宅のデスクで可愛い可愛いと呟いている。さながら推しアイドルのSNSが更新されたファンだ。最近ではその動画のことを「配給」と呼ぶようにしている。 1年前には生まれてきた子はもう歩いている。既に数十年歩いているわたしは、この1年どんな進歩があっただろうか。年末特有の雰囲気に呑まれて、つい振り返ってしまう。

          応接間

          鈍感

          ある日① D2021×CLP「ガザで一体何が起きているか ーー民族浄化とは何か」を観る。 今、そもそも何が起きているのか、私たちが具体的に何ができるのか、をわかりやすく知ることができます。これは、名刺交換の方法やネクタイの結び方よりも、もっともっと知っておかなければいけない常識だと思います。 わたしたちがSNSで娯楽を得ているとき、同じ世界、同じ時間で、同じ手軽さで、無辜の市民の命が奪われている。圧された女性たちが、未来ある子どもが、殺されている。大きな暴力の前に自分が無

          自炊と許し

          わたしは料理がすきです。突き詰めると、美味しいものを食べるのがすきで、料理はその手段のひとつです。自宅のキッチンで自炊をすることも、美味しいと評判の料理をお金を払って食べることももちろんすきです。自炊はしばしばストレス解消として、外食はしばしばご褒美として、傷ついたわたしの人生を立て直してくれるものです。後者は共感されることが多いものの、前者は人によってはむしろストレスを与えるものだと、捉えられることも少なくないでしょう。 「自炊する?」という質問は、実にカジュアルに行われ

          自炊と許し

          ある日① 今日も消えてなくなりたい。本当は会議室Aで行われる会議に参加するのに、会議室Bに入ってしまったら、Aに行かなきゃな、と思う。本当はそれくらいの気軽なものだろうに、いや気軽だからか、何度も出てきて困る。なんにせよ、違う(正しい)場所に行きたい!と思うのは特別な感情とは言えない。よくある話だ。 今日も消えてなくなりたい。この気持ちは、消してやりたい、といつも背中合わせだ。 たとえば、すでに会議室Bにプロジェクターやら資料をセットし終えてしまった、しかも会議室Bは他のチ

          静止(生死)

          ある日①(10月7日) わたしの姉の誕生日。そして、昨年産まれた姉の子ども、わたしの甥の誕生日でもある。母子同じ誕生日なので、誕生日会は盛大になった。わたしたち家族(シックスポケット+わたし)は、彼らが産まれてきたお祝いをした。談笑し、ケーキを食べ、まだつかまり立ちまでしかできない甥(あるいは息子、あるいは孫)を見守った。彼が笑顔になると、周りもつられて笑顔になる。今日はいい日だった。 この日、報道によれば、イスラエル側で少なくとも40人、パレスチナ側で少なくとも161人が

          静止(生死)

          向かい続ける

          みました? 『こっち向いてよ向井くん』 面白いドラマや映画は数多くあるが、心にパンチを喰らうようなものは少ない。現実社会から受けた疲労とストレスを解消するためにエンタメをみている側面があるから、むしろ喰らいそうなものはタイミングを図らなければいけない。社会問題を捉えたもの、自分の古傷に触れそうなものは気力体力が満ちているときにみる必要がある。 心にパンチを喰らいながらも、欠かさずみてしまったこのドラマ。 前半はシンプルなラブストーリーとして進行する。恋愛に悩みを抱える主

          向かい続ける

          週間

          ある日① 論文を読み始めた。ぼーっと生きていると、知識を得る機会をあまりにも逃しまったり、そんな状況ですら入ってくる知識は大抵こちらの不安を煽ったり消費を促すようなものだったりするので、きちんと知識を得ることは大事だなと思ったから。 ひとまずは毎日1本読むことを続けている。「論文を読んでいる」というと、誤解を恐れずにいうと、めちゃくちゃ気持ち悪がられる。僕はこれがとても悲しい。世の中の誤解の一つに「論文は難しくて読めない」というものがある。僕はこれも悲しい。 こっちの方が速

          どっちつかずでいる体力

          夜風がこの部屋を通るたびに、窓にかかっている薄いブラインドが呼吸するみたいにふくらんだりへこんだりしている。わたしはそのゆったりした呼吸をじっと眺めている、憧れている。わたしはこの部屋で呼吸がしづらい。 社会にぶつかりながら進んだせいで自分の理想とはかけ離れた形をしている流れの跡を振り返ってみたとき、その不格好さを自分で笑えない。まっすぐ、ただ何かに向かってまっしぐらで進めたなら、きっと深く息が吸えるんだろう。 このセリフを言われて、わたしなら、なおも面と向かって話せるだ

          どっちつかずでいる体力

          観察と断面

          何かを言葉にするとき、わたしたちは物事のある面を否応なく切り取る。わたしはきっと、文字にせよ語りにせよ、言語化に取り憑かれている。何かを言葉にする、それ自体が極めて面白いことだと信じて疑っていない。そう、言語化、大きく言ってこれは「萌え断(サンドイッチなどの食べ物のカラフルで美しい断面を楽しむこと)」である。 サッカーは、手の使用を極端に制限された球技である。 この断面はどうだろうか。広いピッチを駆け巡るスポーツであるサッカーが、急に窮屈に感じる。通常では感じられない、金

          観察と断面

          ある帰り道

          ある日① 実家に帰る。少し遠いけれど電車で帰れる距離で、乗り換えも細かくないからぼうっとしていれば最寄り駅に到着する。読みたいけど読めていなかった本を読むのにちょうどよい距離だ。 細かくはない乗り換えは、実はとても大事な乗り換え。実家の最寄り駅は支線にあるので、電車を利用するときにはほとんど乗り換えが必要になる。乗り換えるべき駅をうっかり過ぎてしまうと、それが急行だったら(帰省するときは専らそうであるが)5駅ほどすっ飛ばしてしまうので、平気で数十分を無駄にしてしまう。乗り過ご

          ある帰り道

          労りの喜び

          例えば、満員電車。知らない人同士が肌が触れ合うような距離で運ばれている。この時期のそれは暑くてなおのこと不快だ。少しでも不快な現実から目を逸らすと、飛び込んでくるのは広告で、 まったく、嫌な短歌である。 社会で認められるには、環境に適応して生産的でいることが求められる。他人よりも価値を持っていなければいけない。だからこそ、このような社会からの強烈なメッセージは「わたしたちに欠陥を補うための行動」を迫る。そうやって、わたしたちの自尊心を、社会はいともたやすく傷つける。 そ

          労りの喜び