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対人スキルは、スルースキル

2012年。人生で最高にどす黒い、社畜暗黒帝国を築いていた頃。
きゃりーぱみゅぱみゅをナナメに見てる頃。
毎日終電orタクシーで帰らされる電ツー、博報ドーの短納期案件ばっかの制作会社を辞めて、イベントをメインでやってる楽しそうな広告代理店の面接を受けまして。
やたらと「ガッツはあるか」「誰とでもうまくやれるか?」を確認されて、「むしろガッツしかないです!私が最後の砦です!」ぐらいのテンションで受けたその会社の三次面接で、超絶ドSな営業マンに出会ったわけ。

コムサのマネキンか、矢沢あいの漫画かくらいの、長身&ガリガリ。高そうなスーツにゴキブリみたいな黒光りした靴、メガネは銀縁。オーラがエグい。
で、そのメガネは早口でこう言ってきた。

「うち、キツいっすよ?女性だとだいたい半年もてば良い方っすよ。笑」

マウントうっせーーーーー、社畜ナメんな!!!って思いながらも「んじゃ私、その記録更新する初めての人になりますね」って超笑顔で返した。
一歩も譲らない、針千本の私。
バチバチの空気の中、隣にいた優しそうな部長が「んじゃいつから来れるかな?」ってニコニコしながら話を進めてくれて、無事内定をもらった。

入社して1週間後、そのメガネが仕切る案件にディレクターとして入ることになった。会議室で資料並べながらライターと談笑してたら、メガネ入場。明らかにご機嫌ナナメ。
んで開口一番「おい、こんな資料で何話せっつんだよ、ったく、どいつもこいつもアホばっかりだな。この腐れディレクターが!!!」って言われた。え?何この人。更年期?って思ってたら、資料投げられた。
え、メガネすごーい!2mくらい離れてるのに私の顔面テクニカルヒット〜!と思ったと同時に、「すみません、作り直したいのですが、どこがどういう風に足りないでしょうか?」っつってた。私大人だった!!ふふふんっ!
でもまぁ大人オブ大人の私に「んなこともわかんねぇのかよ。おいライター、コイツどうにかしろよ」って言って会議室出てった。
ライターが慣れっこな雰囲気で「Hさんいつもああで。特に新人には厳しいんですよね。大丈夫ですか?顔当たりましたよね?」っ言ってくれたんだけど、怒りはおさまらず「野生のライオンでももう少し優しいと思うけど!死ねばいいのに!」っつって、その日朝方までかかって資料作り直したわけ。たまにメガネの椅子蹴ったりして。

その案件の撮影当日。モデル使ってシチュエーション別に何カットも撮らなきゃいけなくて、早めにスタジオ入って香盤表を脳内にぶち込んでスタジオの移動経路も確認して。もうね、メガネに何言われるかわかったもんじゃないから、事前準備の鬼よ。んでモデルさんが来てメイクしてるときに、メガネ登場。
「おい、お前香盤表アタマ入ってんだろうな?」って言われて、笑顔で「はい、もちろんです」っつった。いちいちうっせーーーーーーー!

撮影中、モデルさんの笑顔が硬くて、メガネも冗談とか言ってたんだけどすんげースベってて。日頃の恨みここぞとばかりに「ここまでスベると逆におもしろくないですか?笑」っつったらモデルさん笑ってくれて。くらえ、針千本。
その後からはもう「どうにでもなれ精神」がむくむくと芽生え、メガネに小言いわれる度に「はいはい」言った。2回。地味にムカつくやつ。
撮影後に何か言ってたと思うんだけど、こいつ別にすげー仕事できるわけじゃないのね、小言は自分を守るための鎧かぁ〜って思ったら、なんか笑けてきて。現場の片付けしてメガネ置いて帰った。

入社して半年後、なんだかんだ私も無理がたたったみたいで、帯状疱疹出ちゃって。痒くて痛いやつ。あ、身体は嘘つかないんだなーとしみじみ思った。でも帯状疱疹治りかけの頃には第三形態のあおが誕生。メガネの小言もスルーするようになった。

入社1年経ったとき、メガネがニヤニヤしながら「そういえばあおさん入社して1年だっけ?耐えたねーーー、社畜さすがだわ」っつってきたんだけど。そのとき経費精算の申請あげてて、集中してたら軽く無視してて。「あれ?聞こえてない?おーい」とか言ってたんだけど、無視。ガン無視。

入社2年経ったときはもう「メガネ、今いーい?」言うてた。メガネ呼ばわり。メガネも「うん、どしたー?」っつって。受け入れてた。あのとき面接してくれた優しい部長が目ぱちくりしてた。え、メガネ?みたいな。

入社3年目で、メガネと仲良くなっちゃって。え、ちょ、メガネ2ちゃんとか見るやつだったの?早く言ってよー!って盛り上がっちゃって。ふたりでコンペの資料作りながらDQNスレの話で爆笑、みたいな。
クライアント同行のとき、メガネの恋愛相談のっちゃったりして。
メガネの短所を注意したりして。

入社4年目の冬。私の送別会で、号泣しながら花束渡してきたメガネ。
周りがザワつく中、メガネが最後に「はなむけの言葉」を言ってくれたんだけど。

「僕は女性が嫌いです。さほど能力も高くないのに権利だけは主張するし、力の弱さを盾にするくせに男が前に出れば平等平等言いたがる。でもあおさんは面接の段階で全く女を感じませんでした。この人なら他の女性よりは長く続けてくれそうだな、と思って即採用しましたが、僕が間違ってました。この人は女性ではありません。オスです。」

・・・その後なんか良いこと言ってたっぽいんだけど、覚えてません。

メガネはその後、某有名ベンチャーに転職して1000万プランナーになったとか。もちろん独身。いつでも紹介できます。