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『星の王子さま』を読む

「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。 かんじんなことは、目に見えないんだよ。」

サン=テグジュペリ『星の王子さま』


『星の王子さま』をとても久しぶりに読んだ。
図書館でたまたま目に留まり、読み返したかったことを思い出した。

高校生のときに『星の王子さま』が読書感想文の課題図書になった。
そのとき初めて読んだけれど、王子さまや登場人物たちが何を言いたいのかよくわからなかった。当時は大人目線で、察しがいい子どもだなあと思った。

大学生になってからSNSを通じて、Kさんというギフテッドと知り合った。
Kさんは『星の王子さま』が最も好きな本であると言っていた。
Kさんは、当時私が書いていたブログにコメントをくれて、ワーカホリック気味だった私に「今を生きる」を教えてくれた。

(教えてくれたというのは、Kさんが丁寧に解説してくれたということではなくて
投げかけられたときは消化不良を起こし、その後、長い時間をかけて消化したということ。
困難であったからこそ、それは私の血肉となった。)


Kさんとは日常会話はしないけど、心の深いところを議論し合う不思議な関係になった。
でも、ギフテッド同士って衝突しやすいから
なんとなくブログを書きづらくなって、Kさんとは疎遠になってしまった。

あれから長い年月が経ち、昨夜久しぶりに読み返したら
もう、胸がいっぱいになって、涙が溢れた。

内容が「わかる」から。
20年前には理解できなかったこと。
その場面一つひとつに込められた想い。

Kさんがなぜこの本が好きだったか。
私に伝えたかったことは何か。

王子さまの気持ち、対峙する登場人物の気持ち、そうさせる世界のありよう、出会いの先に起きる変化。

私がこの物語に抱いた複雑な感情は
まさにKさんに抱いたものと同じ。

「本当のこと」だから、目を背けたくなる。
逃げているのが悲しくなる。


人は本当のことを言われると、反発したくなったり、言い訳したくなったりする。
でも、本当のことだから、反発すれば反発するほど惨めになる。自分が1番よくわかっている。自分で自分は騙せない。

たぶん、そういうものと
あれからずっとずっと戦って
ボロボロになって

勝ったとも負けたともいえないけど
「終わり」を迎えた。


以前、私はベンジャミンバトンのように、大人で生まれて、年を重ねるごとに子どもになっていると書いたけど

20年経って、やっと子どもに、私自身が王子さまみたいな心を取り戻せたんだなと

そんなことを思った。
涙はいつも、言葉になりきらない想いのかわりに流れる。

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