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静謐な残響

無言の貴方から音を聴こうとする

沈黙が妙な緊張感を醸しだしては
呼吸音だけが敏感に響く
その吐息にずっと耳を澄ませている

閑散としたビルの一室
エアコンの音だけが聞こえてくる
風量は少なく控えめ
押しつけがましい雰囲気はない
貴方は溜め息混じりの長い脚で
足音をこつこつと鳴らす

貴方は雪の上を歩く白鶴のよう

凛とした透明感のある美しさには
おのずと純粋さが宿る
清廉かつ堂々とした振る舞い
その裏には人見知りゆえの
恥ずかしさがあるのかもしれない
その距離感には不可解がまとわりつく

時間が止まったかのような静謐が漂う

灰色の空が私たちを
白黒写真のように寡黙にさせる
色を失くした私たちは
音を頼りに研ぎ澄まされていく

静かに心を察して欲しいのだと思う
たとえ空が青く塗られたとしても
モノクロの中で色を感じて欲しい
淡いトーンで暮らしていたいのだと思う

微かな音が色を揺らし続けている

音が見えないというのは思い込み
共鳴したときに音は見えるだろう
目を閉じたら暗闇が訪れた
しかし私は裸の心を感じとった
そこは鮮やかな色のある世界だった

光を浴びて潤う白い肌
姿勢よく背すじを伸ばし
綺麗な目で遠くを見ている
貴方はあまりにも透き通っていた

今にも消えてしまいそうだった

だから耳を澄ませて残響を聴く
それだけのコミュニケーション
目に見えない貴方が見えてくる
それで上手くいっているなら
もうこれでいいね

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