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山の上のホテル

「そうだ」と思いつきで宿を予約して、1人でこもるのが好きです。この時は、山の上のホテルに泊まりました。 ーーー ホテルに着いたのは、夕食会場を行き来するにぎわいが落ち着いた21時頃。 エントランスはごつごつの石が積まれたオブジェがある美術館みたいな雰囲気で、打ちっぱなしのコンクリートでできた壁が、アートな空間をつくっていた。 なんで山の上まで1人で…って心配されたくないから、堂々としてよう。 フロントで宿泊代を払って、大浴場があいている時間などを伝えてもらい、受付で

    • 津名港

      海沿いを走る路線バスに乗っていた。 灰色と水色が混ざった空と、砂漠みたいな海に、何か温かいものにすがりたい気持ちになって、大事な人のことを思い出した。 でも、すぐに莫大な静寂に包まれて、胸が潰れそうになった。 乗っているのは私と、通路を挟んだ隣にいるお爺さんだけで、車内には、エンジンの重低音だけが響いていた。 心配性が詰まったカバンを抱いて外を見つめた。 バスは「塩」とか「浜」とか、海にちなんだ漢字がついた駅名を、一つひとつ通過していった。 目的の駅に着いて、シワ

      • 車窓と駅弁

        新幹線に乗るときは、窓際に座るのが好きです。 ぼんやりと車窓を眺めて、窓の向こうに連続する、土地の空気や暮らしを想像してみたり。 畑のそばにポツンとある日本家屋が、すれ違いざまに、ふわっと心を擦ったりする。 夜はきっともう少ししんみりした雰囲気かな。家の中からは、魚を焼いた香ばしい匂いがするのかな..... そうやって想像を膨らませます。 あまり遠出をしない自分にとって、ちょっぴり非日常を味わえるのも新幹線の楽しみで、ワクワク感のお供に、駅弁があるとなお良しです。

        • プール

          1学期の期末テストがひと段落した頃、プールの授業を休みがちだった私には、朝からその補習があった。 プールを思うと鬱だ。一人ぼっちが浮き彫りになる時間。何も自分を纏うものがなくて、裸の一人でいないといけない時間。 でも今日は、休日で校舎がしっとりと静まっているおかげか、いつもの憂鬱は薄まっていた。 勢いよく走り回ったりする男の子もいないし、円になってヒソヒソ話をする女の子もいない。 代わりに、校舎の裏にある石段に座って、タバコを吸っている先生たちを目撃した。 「ね!日

        山の上のホテル